第17巻第1号              2003/10/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



『DOHC MONTHLY』は17年目に入りました。恒例の「昨年1年間に私が読んだ本のリスト」です。数年続いた書評の仕事がなくなったことと研究に少し力を入れだしたことから、例年より読書冊数が1割程度減りました。いつもながら独断ですが、本選びの参考になるよう、書名の後にabc3段階の評価を付けました。一番面白かったのは、

渡辺正・林敏郎『ダイオキシン 神話の終焉』日本評論社\1,600

です。『信濃毎日新聞』の書評(2003.3.9)に取り上げたのでDOHCでは紹介しないままでした。改めて「絶対面白い本」として推薦します。「ダイオキシンが猛毒だ」というのは真っ赤なウソだったのです。ぜひお読み下さい。(守 一雄)

【2002年10月1日から2003年9月30日までの読書リスト】

(a:おススメ、b:良書、c:はずれ)


一橋文哉『ドナービジネスa』森千里『胎児の複合汚染b』S.コールマン『検証・なぜ日本の科学者は報われないのかb』村越真『子どもたちには危険がいっぱいa』丹野義彦『エビデンス臨床心理学b』竹内靖雄『法と正義の経済学b』白井利明『<希望>の心理学b』総領冬美『ES(1)(2)b』木下清一郎『心の起源b』梶井厚志『戦略的思考の技術b』野口悠紀雄『「超」文章法b』E.シュローサー『ファストフードと狂牛病b』榊原洋一『アスペルガー症候群と学習障害b』橳島次郎『先端医療のルールc』酒井邦嘉『言語の脳科学b』中田力『天才は冬に生まれるb』長谷川真里子『生き物をめぐる4つの「なぜ」b』森昭雄『ゲーム脳の恐怖c』米山公啓『学閥支配の医学c』日経産業新聞『大学知の工場c』館すすむ『バーチャルリアリティ入門a』館すすむ『ロボット入門b』北岡明佳『トリックアイズa』最相葉月『絶対音感a』インタービジョン21『図解「儲け」のカラクリc』ビジネスリサーチジャパン『図解業界地図が一目でわかる本c』永江朗『インタビュー術!b』保江邦夫『数の論理b』安藤香織・田所真生子『実践!アカデミック・ディベートb』上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会b』藤沢晃治『「分かりやすい説明」の技術b』渡辺正・林敏郎『ダイオキシン神話の終焉a』林敏郎『ダイオキシン情報の虚構b』中田力『脳の方程式プラスアルファa』東京新聞取材班『破綻国家の内幕b』小塩隆士『教育を経済学で考えるa』小塩隆士『高校生のための経済学入門b』田沼靖一『ヒトはどうして老いるのかb』箭内昇『メガバンクの誤算b』平野拓也『官僚は失敗に気づかないa』J.メイナード=スミス『生物は体のかたちを自分で決めるc』C.タッジ『農業は人類の原罪であるb』E.エンスラー『ヴァギナ・モノローグc』伊藤公紀『地球温暖化b』鈴木善里『論争・英語が公用語になる日b』別冊宝島編集部『ドキュメント内部告発b』大瀧雅之『景気循環の読み方b』R.ドーキンス『虹の解体b』是本信義『クラウゼヴィッツ「戦争論」は面白い!c』芹沢正三『素数入門b』高杉尚孝『論理的思考と交渉のスキルb』門倉貴史『日本アングラマネーの全貌b』野口旭『ゼロからわかる経済の基本b』前間孝則『日本はなぜ旅客機をつくれないのかb』日本教育心理学会『教育心理学ハンドブックb』宮本みち子『若者が≪社会的弱者≫に転落するb』山田真美『ブースケとパンダの英語でスパイ大作戦b』高村薫『マークスの山(上)b』高村薫『マークスの山(下)b』小田切誠『PTA改造講座c』横山秀夫『動機a』酒井啓子『イラクとアメリカb』黒川伊保子『LOVEbrain b』永谷敬三『経済学で読み解く教育問題a』荒井一博『教育の経済学・入門b』三木善彦ほか編『新版・心理の仕事b』本川達雄『歌う生物学必修編a』横山秀夫『動機a』中井浩一『論争・学力崩壊2003b』苅谷剛彦『教育改革の幻想b』安野光雅・河合隼雄『人が、ついとらわれる心の錯覚b』日高正裕『論争・デフレを超えるb』横山秀夫『陰の季節a』井口和基『物理お宅博士のスポーツ観戦記c』R.デーゲン『フロイト先生のウソa』小西行郎『赤ちゃんと脳科学b』小野田襄二『やりなおし基礎数学b』四方義啓『数学をなぜ学ぶのかb』佐々木敏『ラスコーリニコフの日a』田中宇『マンガンぱらだいすb』福沢一吉『議論のレッスンb』ビートたけし『裸の王様c』吉田甫『学力低下をどう克服するかb』飯田経夫『人間にとって経済とは何かb』金子達仁『28年目のハーフタイムb』なだいなだ『神、この人間的なものa』半藤一利『日本国憲法の二〇〇日b』道端秀樹『英辞郎b』なだいなだ『民族という名の宗教b』E.O.ウィルソン『知の挑戦b』川上洋一『クルド人もう一つの中東問題b』左巻健男『「理数力」崩壊b』N.チョムスキー『メディア・コントロールb』読売新聞大阪本社『大学大競争b』村越真『方向オンチの謎がわかる本b』坂本敏夫『刑務官b』金澤治『LD・ADHDは病気なのか?b』石井政之『肉体不平等b』兵頭二十八『ニュースではわからない戦争の論理b』兵頭二十八『学校で教えない現代戦争学b』兵頭二十八『「戦争と経済」のカラクリがわかる本b』眞境名オスカー『オスカーのフットサルコーチングb』斎藤兆史『英語達人熟b』三井環『告発!検察「裏ガネ作り」b』G.クライツァー『デブの帝国a』鄭讃容『英語は絶対、勉強するな!b』別冊宝島『笑ってられない「北朝鮮」画報b』藤本隆宏『能力構築競争b』岡本浩一・今野裕之『リスク・マネジメントの心理学b』佐々木敏『ゲノムの方舟(上下)a』S.ピンカー『心の仕組み(上中下)a』日垣隆『裁判官に気をつけろ!a』近藤誠『成人病の真実a』近藤誠・ひろさちや『死に方のヒントb』森信茂樹『日本が生まれ変わる税制改革b』藤田紘一郎『ニッポン「亜熱帯」化宣言b』尾崎哲夫『「超」英語力b』A.R.ダマシオ『無意識の脳自己意識の脳b』(120冊)


【2002-2003一番面白かった本】

渡辺正・林敏郎『ダイオキシン 神話の終焉』日本評論社\1,600

学生 先生が以前言っていた「ダイオキシンが猛毒だというのは嘘らしい」ってことをちゃんと検証した本が出てましたよ。

教授 おお、君も見つけたかい?この本のことだろ?書名を見たときは「またダイオキシン恐怖を煽る本か」と思ったんだが、副題が「神話の終焉」ってなっていたんでさっそく買って読んでみたんだ。やっぱりダイオキシン猛毒説は嘘だったんだな。こんな本を待ってたんだ。早速、いつもの新聞の書評欄で紹介することにした。

学生 これはすごいことですね。ちょっと信じられない。日本中の人が騙されてたってことですか?

教授 うん、そういうことになるな。「ダイオキシン猛毒説が嘘だ」という疑問を日本で最初に投げかけたのは、日垣隆さんが書いた『文藝春秋』九八年十月号の記事だった。

学生 ええ、私たちにも興奮してその話をしてくれましたよね。

教授 そう、私にはあの記事が「世紀の大スクープ」に思えたんだが、その後、誰も後に続かない。それと、日垣氏の記事だけでは、「ダイオキシン騒ぎを起こしていったい誰がトクをするのか?」がよくわからず、続報を待っていたんだ。

学生 あれから四年以上が経ってしまい、「ダイオキシン猛毒説」が誰にも疑問視されないまま「ダイオキシンを規制する法律」までできちゃいましたね。

教授 今となってみれば「ダイオキシンを発生させない」というふれこみのハイテク焼却炉メーカーだけが儲けるカラクリだったなんて、見え見えの構造だったのに、なんで誰も気がつかなかったんだろう?腹立たしさを通り越して、あきれてしまうよ。

学生 あまりにできすぎで、アリエネーって感じですね。

教授 しかし、驚いたりあきれたりしているだけではダメだ。この本の著者たちも言っているように、できたばかりの「ダイオキシン法」のすみやかな見直しをするべきだろう。そのためにも、この本はぜひ多くの人に読んでもらいたいものだ。

学生 デマを流した科学者の責任も問うべきですね。

教授 そう、それと新聞などマスコミにも文句を言いたい。ダイオキシン騒動の責任の一端は彼らにもあると思うぞ。

学生 先生、先生、あまりそんなことを言うとこの書評、載せてもらえなくなりますよ。

                  (『信濃毎日新聞』書評2003.3.9を再掲)


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