第16巻第4号              2003/1/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 新年あけましておめでとうございます。今年もDOHCをよろしくお願いします。2002年の一番の話題はワールドカップサッカーでしたが、振り返ってみるとサッカー関係の本は一度も取り上げませんでした。読書リストを見るとほとんど読んでないこともわかります。実はワールドカップに関して昨年読んだ本で私の記憶に残っている唯一の本は、佐々木敏『龍の仮面』(徳間書店\2,500)です。といっても、この本自体はサッカーとは何の関係もありません。著者の佐々木敏氏が発行するメールマガジン『週刊アカシックレコード』の特集記事「2002年W杯サッカーの深層〜「韓国の疑惑」を見逃すな〜」が強烈に面白く、「この著者なら」と同じ著者の新刊を買って読んだものです。中国・アメリカ・台湾を舞台にした大変面白い国際謀略小説で、巻末註を含めると635頁の大著でしたが、一気に読みました。「北京オリンピックを無事開催するために中国の軍事行動が制限される時期を狙って台湾が独立する」という予測はホントに当たりそうな気がします。ただ、この領域については私自身あまりに知識不足なので著者の手玉に取られているだけなのかもしれません。

 というわけで、ここではアウェイでなく、ホームゲームにできる本を紹介することにします。この本の著者の北岡氏は「学術論文は英語でしか書かない」という日本では少数派の心理学者です。思えば、ワールドカップで活躍した選手もみんな国際派でした。FIPA(Federation Internationale de Psychologie Association)ワールドカップの日本代表11人を選ぶとしたら、私は北岡氏を代表候補の一人に推薦したいと思います。         (守 一雄) 

 
(c)カンゼン


【これは絶対面白い】

北岡明佳『トリック・アイズ』

カンゼン(\1,200)


 「トリック・アイズ」というのは「目の錯覚」(心理学用語の「錯視」)を一般受けするように言い換えたものである。この本は北岡氏が描いたカラフルな錯視図形を集めたもので、表紙にも「魔法のイラスト集」とあるように、本というよりは絵本に近い。大学で心理学を学んだ者なら誰でも錯視図形のことは知っていて、「もう過去のもの」、「古典的視覚研究の材料」と思っているかもしれない。実は私もそう思っていた。しかし、『心理学ワールド』という日本心理学会発行のPR誌の第18号(2002.7月)に北岡氏が書いたものを読んで、認識を新たにした。そこに紹介されていた「ログビネンコの明るさ錯視」というのが、「信じられないような錯視」だったからである。(これは早速、夏休みの「小学生親子心理学教室」で使わせてもらった。これには誰もが驚いていた。)

 雑誌記事にあった北岡氏のWebページを訪問してみると、それはそれは美しい錯視図形が並んでいるではないか。止まっているはずの絵が動いて見える錯視図形にも驚いた。そして、それぞれの錯視図形に付けられた名前もなかなかセンスが感じられるものだ。うーん、これは面白い。

 さて、こんな面白いものを出版不況の出版社がほっておくはずがない。最初にアプローチしてきたのが、株式会社カンゼンという出版社だったようだ。「あとがき」によると、一晩飲んで打ち合わせをしただけで、あっという間に出版を決め、3ヶ月足らずのうちに発行されてしまったのがこの『トリック・アイズ』というわけだ。(表紙には「脳が活性化」とか「頭の回転がぐんぐんよくなる」とか書かれているが、博打的な出版社が勝手に書いたものだろう。信憑性はないが、ま、目くじら立てるようなことではない。)

 このDOHC月報では、【これは絶対面白い】という本を紹介してきているのだが、今回は「見るだけで面白い本」である。もっとも、読んで面白い本でも見て面白い本でも、どっちでもいいわけだ。とにかく【これは絶対面白い】のだから。それでも書物派の立場から一つだけ注文を述べるとすると、それぞれの錯視図形について錯視が起こる原理をもう少し解説してもらいたかったところである。                        (守 一雄)


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