前回の展望論文(藤井,1995)への批評でも指摘したことだが、「学校ストレスに関する研究の展望」の中に外国での最新の研究がまったく含まれていないのは展望論文として致命的な欠陥であると思う。引用文献の発行年を5年ごとに区切ってヒストグラムを描いてみると、日本文献の最頻値が1990年代であるのに対し、外国論文の最頻値は1965年代、1986年以降は皆無である。それでいて「日本の学校でのストレスについての研究展望であるから外国の研究は考慮しない」という方針があるわけでもないようだ。1990年代の現代の学校現場の問題を憂える記述(p.229)のわずか数行後に、Brown(1954)やAngelino et al(1956)が引用してあるのを見ると苦笑してしまう。学校ストレスが問題となるのは日本の学校だけではないはずである。まだ若い大学院生の著者には日本だけで通用するような研究ではなく、学校ストレスについての普遍的な研究を目指してもらいたい。