Ｋ氏へのお返事（その３）
平成10年３月２５日
Ｋ 様
信州大学教育学部
守 一雄
前略
３月１７日付けのお手紙拝見いたしました。
どうもまだお互いに誤解があるようです。ま、それでも誤解はこうした手紙のやりと
りを続けていけば必ずいつか解決するものですから少しずつでも誤解が修正されていけ
ばいいと思います。
前回のこちらからの質問にお答えいただいていないので、繰り返します。［ ］は今
回付記しました。
お手紙［３月５日付け］の中に、『チビクロさんぽ』を購入した人の多くは、「以前
『チビクロサンボ』を読み、その黒人差別的内容の問題性に気づくこともなく」とか、
「そこに隠された黒人差別意識の問題性を持ち続ける」とかいう表現が見られますが、
［質問１］『チビクロサンボ』に「サンボ」という蔑称以外に、どんな「黒人差別的内
容の問題性」や「隠された黒人差別意識の問題性」があるとお考えなのでしょうか？
［質問２］そうした問題性は具体的にどのような「被害」を黒人に与えているのでしょ
うか？
［質問３］また、「日本でおこっている黒人差別の実態の内容」とは何でしょうか？
［質問４］そして、それと『チビクロサンボ』がどのような因果関係を持つのでしょう
か？
そちらからいただいた質問にもお答えしておきましょう。
（質問１）当事者の意見を聞かずに差別が改善されたと結論づけた理由。
「サンボ」という蔑称を取り除き、主人公を犬に代えたから。（詳しくは『チビクロ
さんぽ』巻末の資料をご覧下さい。）
（質問２）マスコミのみの立場の調査で差別が改善されたと結論づけた理由。
悪いと指摘されていた部分を改善したことは論理的に判断したことで、マスコミ関係
者に意見を聞いたことは補足的なことにすぎません。「調査で結論づけた」のではなく
、「論理的に結論づけた」のです。
（質問３）どのような資料・文献を元に検討したか。
基本的には、径書房の『チビクロサンボ絶版を考える』に尽きると思います。「サン
ボ」という言葉だけが問題なのだという結論の根拠も同様です。
（質問４）前回の手紙でのＫさんの説明に対する反論は？
Ｋさんの説明そのものが説明になっていません。肝心な部分を「明らかです」とされ
たのでは反論ができません。
（質問５）『チビクロさんぽ』で『ちびくろサンボ』の差別性が拡大していないという
根拠は？
「サンボ」という蔑称を使っていないから。
（質問６）日本社会に黒人差別意識が残っているか？
残っていると思います。（詳しくは『チビクロさんぽ』別添の論文をご覧下さい。）
（質問７）黒人が「サンボ」と呼びかけられて嫌な思いをしていることへの感想。その
背景。
残念に思います。その背景には「サンボ」が蔑称であることの理解が十分なされてい
ないことがあると思います。『チビクロさんぽ』を読んだ人の多くが、「サンボ」が蔑
称であることに初めて知ったと読者カードに書いてきています。少なくとも、『さんぽ
』の読者だけにでもそうした理解が進んだことを嬉しく思っています。
以上、お答えをしましたが、これらの質問に対する答は既に巻末論文やホームページ
上で回答されています。たとえば、（質問１）は今回の改作の一番のポイントですから
、何度となく説明がなされています。それをまた改めて質問してきているのは、Ｋさん
が「当事者の意見を聞かない限り差別問題の解決がなされたとは言えない」という意見
をお持ちであるためだろうと思います。（私は当事者の意見を聞かなくても改善は可能
と考えているということです。）おそらく、（質問２）以下の質問も同様だろうと思っ
ています。ぜひ、こちらからの［質問］にお答え下さり、ご意見をお聞かせいただける
ようお願いいたします。
なお、重ねてのお願いで恐縮ですが、一番最初のお返事に書きましたように、こうし
た問題は議論を通して理解を深めることが解決への道筋になると考えています。そこで
、いただいたご質問・ご意見をホームページ上で公開したいと思います。いただいたお
手紙の内容をこちらでもう一度タイプ入力すればいいのですが、なかなか時間がとれま
せん。Ｋさんもワープロをお使いのようですので、できましたら今までいただいたお手
紙をフロッピーでお送りいただけないでしょうか？ MS-DOSフォーマットのフロッピー
ディスクにテキスト形式で保存していただけるとこちらの機械でも処理ができます。ど
うぞよろしくお願いします。（もし、電子メールをお使いでしたら、電子メールが一番
好都合です。私のアドレスは kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jpです。）
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