K氏へのお返事(その2)
平成10年3月9日
K 様
信州大学教育学部
守 一雄
前略
3月5日付けのお手紙拝見いたしました。
こちらの考えは前の手紙でほとんど書きましたので、補足説明だけになりますが、ど
うやらお手紙から拝察するに、Kさんと私の主張の行き違いは『チビクロサンボ』その
ものにあるようです。Kさんは「日本社会の中で『チビクロサンボ』に結びついた黒人
差別・蔑視の意識が残っている」とお考えのようですが、私は『チビクロサンボ』に結
びついた黒人差別・蔑視の意識があるとは考えていません。『チビクロサンボ』が問題
であったのは、「サンボ」という蔑称が使われていたからであって、その蔑称さえなけ
れば問題はないと考えています。だからこそ、蔑称を取り除いた『チビクロさんぽ』を
出版したわけです。
お手紙の中に、『チビクロさんぽ』を購入した人の多くは、「以前『チビクロサンボ
』を読み、その黒人差別的内容の問題性に気づくこともなく」とか、「そこに隠された
黒人差別意識の問題性を持ち続ける」とかいう表現が見られますが、『チビクロサンボ
』に「サンボ」という蔑称以外に、どんな「黒人差別的内容の問題性」や「隠された黒
人差別意識の問題性」があるとお考えなのでしょうか?そうした問題性は具体的にどの
ような「被害」を黒人に与えているのでしょうか?また、「日本でおこっている黒人差
別の実態の内容」とは何でしょうか?そして、それと『チビクロサンボ』がどのような
因果関係を持つのでしょうか?
前回の手紙にも書きましたが、岩波書店をはじめとする日本の出版社は『チビクロサ
ンボ』を差別的図書として絶版にしました。そこで、一般の人々は、何がどう差別的だ
ったのかについてほとんど理解しないまま、『チビクロサンボ』は「有罪」と決めてか
かりました。しかし、『チビクロサンボ』は本当に「有罪」だったのでしょうか? 前
のお手紙に障害者福祉と人権侵害問題を研究なさっていると書かれていました。『チビ
クロサンボ』という本がもし「人格」を持つとしたら、この本の「人権」は守られてい
たと言えるでしょうか?私にはこの本が「冤罪」で「死刑」にされたように思えるので
す。
早々
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