加藤司さん@関西学院大学からのメール#2(2000/9/27)

Date: Wed, 27 Sep 2000 19:01:39 +0900
From: 加藤 司
X-Accept-Language: ja
MIME-Version: 1.0
To: 守 一雄
Subject: Re: KRvol.6-4
Status: RO

守 一雄 先生へ

 早速、コメントいただき誠にありがとうございました。

>  私が「中身のある研究を期待したい」と書いたのは、こうした悪循環を断ち切
> るためには、尺度作りをする人が、まず自分でなにかの研究にその尺度を使って
> みて、今までに発見できなかったような新しい事実を発見してみせる」ことが必
> 要だと思うからです。 たとえば、「従来のSCIを使った研究では間違って解
> 釈されてしまうことが、新しいISIを使うと別の解釈になり、その方が正しい
> ことをうまく示す」ような研究がなされれば、黙っていても、他の研究者もIS
> Iを使うようになるのではないでしょうか?
 という、守先生からのコメントをいただきました。

   先生がおっしゃっていることはもっともだと思います。
 しかし、ほとんどの学術雑誌には紙面に制限があります。教育心理学研究にも
制限があります。本論文は、ISI(対人ストレスコーピング尺度)の信頼性と妥
当性の検証したところで、紙面がつきてしまいました。従って、ISIを使用して
の、新たな研究結果は報告することができませんでした。限られた紙面で、いか
に研究を報告するかというのは研究者の能力によるところだと思いますが、私
は、ISIの信頼性と妥当性を検証するだけで、紙面を使い切ってしまいました。
それでも、まだ、ISIの信頼性と妥当性の検証は十分であるとは考えていませ
ん。私は信頼性と妥当性の検証が不十分な手続きや尺度を使用した研究をするこ
とに抵抗を感じます。例え、新しい発見が確認されようとも、その手続きに問題
があったのでは、せっかくの発見も無意味であると思います。だからこそ、本論
文はISIの信頼性と妥当性の検証で終わってしまったのです。信頼性と妥当性に
関する記述部分を短縮し、十分な論議のないまま、ISIを使用した新たな発見を
報告した研究論文として、発表したくなかったのです。
 もちろん、現在も、ISIを使用した研究は続けております。また、それらの研
究のうち、ISIを使用することの意義を明確にする研究をいくつかの学術雑誌に
投稿しています。それらの研究が掲載され、興味を抱くような内容であるなら
ば、先生のいわれるように、ISIを使用していただけるかもしれません。

 関西学院大学 加藤 司