KRから、加藤司さん@関西学院大学へのお返事(2000/9/26)

Date: Tue, 26 Sep 2000 15:47:00 +0900
To: 加藤 司 ,守 一雄
From: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp (守 一雄)
Subject: Re: KRvol.6-4

加藤 司さま:守@KRです。
 いきなり送りつけたコメントにお返事を下さいましてありがとうございました。

At 3:02 PM 00.9.26, 加藤 司 wrote:
> 守 一雄先生へ
> さて,先生の批評では,「尺度作りはもういい」というような表現なされてい
> ました.しかしながら,研究者にとって,研究に使用する尺度の信頼性と妥当性
> の検証は極めて重要な問題だと思います.質問紙による調査研究を実施する上
> で,多くの研究者によって使用されている尺度であろうとも,その尺度の信頼性
> や妥当性に問題があるとなれば,その尺度の使用をためらうはずです.本研究で
> は,既存のコーピング尺度に存在する多くの問題点を改善し,これまで,開発さ
> れていなかった対人ストレスイベントに対するコーピング尺度を作成しました.

 今までの尺度を開発してきた人もみんな同じことを考えていたと思います。
今回、あえて加藤さんの研究に苦言を呈したのは、
加藤さんだけでなくその他大勢の「尺度作り研究者」に向けてのメッセージのつもり
でした。

 確かに、信頼性や妥当性に問題のある尺度では使えないでしょう。
しかし、加藤さん自身も論文の中で述べていたように、
既存の尺度との相関を調べて妥当性を検証しているのでは自己矛盾でしょう。
こうした方法で妥当性を検証できるということは
既存の尺度の妥当性を認めていることになるわけですから。
 皮肉な見方をすれば、
既存の尺度は次に作られる新しい尺度の妥当性を保証するためにあるようなものです。

> 今後,本研究で作成した対人ストレスコーピング尺度を使用した研究が行われな
> いようであれば,先生がおっしゃるように「(本研究のような)尺度作りはもう
> いい」という評価になると思いますが,私は広く汎用されることを望んでいます
> し,今後も使用に耐えられる尺度であることを実証し続けたいと思っています.

 尺度作りに精を出す他の研究者の皆さんも
同じように考えているのではないでしょうか?
「尺度はオレが作ったから、他の人はこれを使え」と。

 というわけで、尺度作りだけが盛んになって、誰も尺度を使わない。

 私が「中身のある研究を期待したい」と書いたのは、
こうした悪循環を断ち切るためには、
「尺度作りをする人が、まず自分でなにかの研究にその尺度を使ってみて、
今までに発見できなかったような新しい事実を発見してみせる」
ことが必要だと思うからです。
 たとえば、「従来のSCIを使った研究では間違って解釈されてしまうことが、
新しいISIを使うと別の解釈になり、その方が正しいことをうまく示す」
ような研究がなされれば、
黙っていても、他の研究者もISIを使うようになるのではないでしょうか?

-------------------------------------------------------------------
守 一雄@380-8544信州大学教育学部教育科学講座(これだけで郵便が届きます。)
kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp 電話 026-238-4214(ダイヤルイン・留守電)
『DOHC』『KR』発行元     Fax 026-237-6131(直通)
http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/hp-j.html
-------------------------------------------------------------------