岩男さん@関東学院大学からのご提案(1999/5/28)

岩男さん@関東学院大学からのご提案(1999/5/28)

From: IWAO Takumi
Date: Fri, 28 May 1999 05:40:47 +0900
To: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp (守 一雄)
Subject: Re: KR's comment on your paper
MIME-Version: 1.0

こんにちは.岩男@関東学院大学です.
お世話になっております.

message "KR's comment on your paper"で,
守先生は書かれました.
> まずはじめに、「面白くもなんともない研究」という表現によって、感情を害され
>たことに対し、お詫び申し上げます。それでも『KR』の趣旨を御理解下さって、そ
>のまま感情的に反発するのではなく、冷静に反論をお送り下さったことに感謝します。

まず,念のためにお断りしておきたいのですが,私の前回のメールは,守先生の
コメントへの「反撃」ではありません.KRの冒頭には,「学問の発展は互いに
批判しあうことでなされるものである」とあります.これは私も全く同感です.
ところが,守先生の私の論文へのコメントは,そのままでは私の今後の研究にど
のように生かせばいいのか理解しがたいものであったため,補足をお願いしたの
が,前回のメールです.感情を害したために,守先生に「反論」したり,まして
や「反撃」しようとしたわけでは決してありません(「反撃」したということは,
守先生自身「攻撃した」コメントだったとのでしょうか?).普段ではなかなか
お話しする機会も持てない,守先生のような高名な先生から具体的なコメントを
頂くことによって,私自身の研究が少しでも進展すればという願いを込めて書い
たメールです.その点は誤解のないようお願い申し上げます.ですから,「反撃」
のメールではなく,「お願い」のメールと訂正いただければ幸いです.

(1)論文の面白さを巡る議論

というわけで,私の論文の面白くなさを,私の今後の研究の進展に役立つような
形で説明して頂きたいというのが,第1のお願いでした.頂いたメールによって,
おおむね守先生がどのような意味で「面白くない」とおっしゃっているのかは,
理解できたと思います.守先生のご指摘の中には,誤解と思われる部分もありま
すし,私自身行ってはいても,紙面の制約のため,実際の論文の中では割愛した
ような手続きの提案もありました.ただ,昨年ご一緒させていただいた「チビク
ロさんぽを巡る電子討論」の時にも強く感じたことですが,実際にお会いしてお
話するのと比べると,メールというメディアは,即応的な相互作用に欠けるため
か,誤解や不一致を促進することも多いようです.私の目的は,守先生のご批判
の意味を理解することであったので,守先生のご指摘の一つ一つに,再反論する
ということは行いません.ただ,今後のKRの運営へのご提案も含めて,少し述
べさせていただきます.

>ていません。岩男(1994)がもうすでに公刊されたものならば、確認もできますが、未
>公刊のものでは困ります。さらに、疑問に思うのは、付記によればこの論文は岩男さ
>んの「修士論文の一部を加筆、修正したもの」で、比較されている岩男(1994)もまた
>「修士論文」です。ということは、「修士論文の一部」と「修士論文」とで結果が異
>なるから面白いと言っていることになるわけで、なぜ、こうした面白い結果の違いが
>見られたことそのものを投稿論文にしなかったのでしょうか?

この部分は,実は投稿論文になっております.心理学研究 第68巻第5号「帰納推
論の確証度判断における類似性とカテゴリの役割」という論文がそれです.ただ,
両論文の査読期間が重なったなどの事情で,本論文の引用文献には載せることが
できませんでした.ただ,同じような研究をしている研究者の方には,ある程度
お読みいただいているようです.ところが,大変残念なことながら,守先生には
お読みいただいてないため,更に「面白くも何ともない論文」という評価を強め
たようです.

ここで一つ大変差し出がましい提案をさせていただきたいと思います.いかに守
先生といえども,研究分野によっては領域知識が不足しており,かならずしも的
確でもない批判をなさることもあるかもしれません.KRのコメントへの返事の
メールに,守先生の誤解を解くことが趣旨であるものが少なくないのも,そのこ
とを裏付けているかもしれません.そのような批判は少なくとも学問の発展には
貢献しないでしょう.とすれば,コメントを行われる際,

1.守先生ご自身のご専門に近く,十分な領域知識のおありになる論文にコメン
  トする.
2.論文の疑問点については,著者に何らかの照会を行って後,コメントする.

このような制約を課すことによって,KRは更に学問の発展に貢献するものとな
るのではないでしょうか? 2.についても,すべての論文の著者に照会を行う
のは大変だというのであれば,守先生が特にコメントしたいと思った論文だけ行
えばいいのではないでしょうか? いくら面白くないからと言って,批判のため
の批判のようなコメントでは,学問の発展には寄与しないはずです.

学問の発展のためということで言うと,KR英語版にも疑問を感じます.KR英
語版では,しばしば[Not Worth Reading] とだけコメントされた論文が散見され
ます.このようなコメントをおなうことで,学問が発展するのでしょうか? や
はりすべての論文にコメントされるよりも,取捨選択され,十分に練られたコメ
ントを行うことによってこそ,学問は発展するのではないでしょうか? 私のよ
うな若輩者が大変差し出がましいことを申すようですが,何卒,御一考ください.

>(2)論文の面白さの基準について
>(3)明確な基準なしに「査読」をしていることについて

「面白い」「面白くない」のような主観的な表現をコメントに使われているとき,
その基準が明示されていれば,どのような意味で「面白くない」というコメント
を受けたのかが分かり,今後の研究の発展にも寄与するし,無意味に不愉快を与
えることもないので,是非公開をお願いしたいというものでした.ただ,これに
ついても,守先生がコメントされる論文を取捨選択され,十分に練られたコメン
トを行うのであれば,どのような意味で「面白くない」のか教えてください,な
どと問い合わせる必要もないわけです.

以上,先生からの再御批判にお答えするのでなく,お願いを重ねることとなって
しまいました.ただ,KRの主旨に賛同しているからこそ,KRのような活動を
通じて,日本の教育心理学会が更に発展することを祈っているからこそ,このよ
うなお願いをしているのです.私のような浅学非才の若輩者が何を勝手なことを
思われるかもしれませんが,どうか非礼をお許しください.このような勝手なお
願いに対し,更にご返事を頂くのも恐縮ですので,私としては,今後の守先生の
KRにおける活動を見て,私からのお願いについて守先生がどのようにお考えに
なったか判断したいと思います.

お相手いただき,本当にありがとうございました.それでは,今後もさらなるご
活躍をお祈り申し上げております.

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岩男 卓実(Iwao Takumi)
関東学院大学 法学部
E-mail: iwao@kanto-gakuin.ac.jp
tel: 0465-32-2624(研究室直通)
Fax: 042-746-1832
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