浦上昌則@南山大学さんの反論(その2)(1997/9/8)

Date: Mon, 8 Sep 1997 15:43:12 +0900 (JST)
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To: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp (MORI Kazuo)
From: Masanori Urakami
Subject: Re: KRについて
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守先生 お返事ありがとうございました。

>  「一度提起した概念名」がどれだけ定着しているかが判断の分かれ目だと思います
> 。少々難有りだったとしても、広く使われるようになってしまっていれば、修正は混
> 乱の元となります。「自我同一性」などがこの例にあてはまるでしょう。 >  まだ、広く定着していないうちならば、改める方が賢明でしょう。そもそも、広く
> 定着しなかったことの理由がその命名のまずさにあったのかもしれないのですから。

 ご意見ありがとうございました。わだかまりが,少し消えたように思います。現在 進行中の一連の研究が終ったら,もしくはそれをまとめるときにでも改変しようと思 います。

>  Self-efficacyも、もちろん「自己効力」というのは直接に対応する意味ですが、
> この研究での文脈からは「そうした自己効力を被験者がどれだけ感じているか」です
> から、「自己効力感」とすべきだと思います。
>  実は、浦上さん自身もこの概念を説明する際に、「進路を選択・決定する過程で必
> 要な行動に対する遂行可能感」(p.196左)と「感」を使っています。

 私は,研究を始めた初期に「社会的学習理論の新展開(金子書房)」を読んだから か,「自己効力」の中に「感」が含まれている(私自身の概念説明もこれに従ってい ます)と考えて使っています。Self-efficacyは,efficacy expectancyの認知された ものであるため,「感」以外の何者でもないと思います。ですから,「自己効力感」 と書くと,「感」を二重に使っているような気になってしかたがないのです。

 現在のこの領域の研究を見ていると,「自己効力」と「自己効力感」は,区別され ることなく,文脈に合わせて使われているような気がすることもありますが,私はで きれば区別したほうが(さらにできれば,どちらかに統一したほうが)よいと考えて います。そうしないと,「自己効力」という概念があり,さらにそれが認知されたも のが「自己効力感」であると誤認されてしまう可能性があるような気がします。です から,私は論文の中で「自己効力感」という表現は使っていません(そのはずです) 。

 結局,この理論を自己効力理論と呼ぶのなら,Self-efficacyを「自己効力」(当 然,意味的に「感」を含む)と対応させておこうというのが現在の私の考えです。  先生は,この私の考えをどう思われますか?わかりやすさの点など,ここにはまだ まだ多くの問題があるように思います。

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浦上 昌則 (南山大学文学部)
466 名古屋市昭和区山里町18  Tel. 052-832-3111(内349)
http://www.nanzan-u.ac.jp/~urakami/urahp.html
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