第13巻第6号              2000/3/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


  昨年6月から日本自動車連盟(JAF)の機関誌である『JAF-MATE(ジャフメイト)』という雑誌に「自動車に関連するノンフィクション本の書評」を連載することになりました。この『DOHC月報』がJAF-MATE社の編集の人の目に止まったらしく、「書評ミニコミ誌にDOHCと名付けるくらいだからきっと車好きに違いない」と思われたようです。そんなわけで昨年は自動車関係の本にも気を配るようになりました。

 「連載」といっても、もともとが月刊誌で、しかもフィクション部門は別の方が担当するので、隔月の出番にすぎず、まだ掲載されたものは二木雄策『交通死』(岩波新書)、曽根英二『ゴミが降る島』(日本経済新聞社)、長谷智喜『分離信号』(生活思想社)、山本寛『さようならエンジン燃料電池こんにちは』(東洋経済新報社)の4冊だけです。 実は、本当は4冊目に紹介したかったのは、『さようなら・・・』ではなく、この本でした。いろいろな事情でこの本は採用されませんでしたが、この本を読むと、TVコマーシャルを見ているだけではわからないプリウスの素晴らしさがよくわかります。試乗車にも乗ってみて、あやうく「衝動買い」しそうにまでなりました。臨界事故や相次ぐ宇宙ロケット打ち上げ失敗など、日本の科学技術への信頼が揺るいでいますが、こんなすごい車を作ることができる自動車メーカーがあるというだけで、「日本もまだまだ捨てたもんでないな」と希望が持てます。 (守 一雄)


【これは絶対面白い】

家村浩明『プリウスという夢』

双葉社¥1500


 ガソリンエンジンとモーターという2つの動力源を持つハイブリッドカー「プリウス」が発売されたのは1997年12月である。鉄腕アトムを宣伝キャラクターにして、「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーで宣伝されていたが、「電気自動車の試作品だろう」くらいにしか思っていなかった。しかし、この車は本当に革命的な車だったのだ。

 本はプリウスの開発が始まった「1993年・秋」から始まる。以後、この本はプリウスの開発がどのようになされていったかを詳細に解説する。大企業のトップの判断、プロジェクトチームのチーフの仕事、社内の人間関係といった人間くさい話も面白いが、やはりなんといっても面白いのは新しいマシンを作ることにかけるエンジニアたちの熱意や興奮が伝わってくることだろう。

 技術的な話もわかりやすく説明されている。先進的な技術やメカニズムの原理を知ることができることも読んでいてわくわくすることである。私が特になるほどと感心したのは、「エンジンとモーターという2つの動力源を持つことで、その両者の利点を最大限発揮させることができるということ」だった。自動車は止まった状態からまず動きだし、高速で走り、そして止まる。動きだしに必要な低速での力と、高速で走るための力は同じではない。一つのエンジンが動きだしにも高速走行にも使われるため、エンジンは野球で言えば「オールラウンドプレーヤー」的なものにならざるをえない。低速に強いエンジンにしようと思えば、高速でのパワーがどうしても犠牲になり、両方に適したエンジンにしようとすると今度は燃費が犠牲になる。ところが、低速に強いモーターともともと高速に強いエンジンとを組み合わせれば、今まで犠牲にせざるをえなかったことが一挙に解決するのだ。投げるのが専門のピッチャーと打つだけのDH打者の組み合わせの方が、投げるのも打つのもすごかった江川(古くてゴメン!)一人より明らかに有利だ。

 その他、この新しい動力源を有効に活かすため、プリウスでは、車体からシートやインテリアまで、すべて新しく開発することになったのだという。

 と、ほとんどトヨタの宣伝のようになってしまったが、もちろん私はトヨタの関係者ではない。ストイコビッチのファンではあるけれど・・・         (守 一雄)


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