『JAF-MATE』書評(99.12月号)

長谷智喜 『子どもの命を守る分離信号』

生活思想社\1,800

評者 信州大学教授 守 一雄

号のある交差点で右折や左
   折をしようとして、歩行者
や自転車にぶつかりそうになり、
ひやっとした経験がないだろうか?
歩行者にとってみれば、青信号で
渡っていても安心はできない。青
信号でも右折車や左折車が走って
くるからである。
 この本の著者のお子さんも、青
信号で交差点を横断中に左折して
きたダンプカーに轢かれて死んだ。
小学五年生だった元喜(げんき)
くんは、「信号はなぜあるの?」
「答え 信号がないと、交通事こ
にあうから」という自作のなぞな
ぞカードを作っていたという。し
かし、信号があっても交通事故に
あってしまったのである。
 深い悲しみを乗り越える中で、
著者の長谷さんがたどり着いた結
論は、青信号で渡っていても交通
事故に遭ってしまうような「ニセ
青信号」を改め、人と車とを完全
に分離して通行させるような「分
離信号」方式にしなければいけな
いということであった。
スクランブル交差点や、歩行者
用の押しボタン信号はすべての車
を止めて、人だけが道路を横断す
る「分離信号」である。通常の交
差点でも信号機のサイクルを変え
るだけで「分離信号」にすること
ができる。すべての交差点を分離
信号にすれば、歩行者の交通事故
は激減するはずで、こんなことに
今まで気づかなかったのが不思議
なくらいである。ドライバーとし
て、歩行者として、そして何より
も子どもを持つ親として、すべて
の交差点が一日も早く「分離信号」
になることを強く望む。