中級テキストの指使いの提言


他教室から変わってきた生徒をレッスンして、時々指使いを全くいい加減にひく生徒に出会って唖然とさせられることがあります。指使いの目的のひとつは、ピアノをひきやすくすることです。それでなくてもあまりピアノがうまくない子どもにとっては、ひきやすい指使いでひく方がよぽどいいに違いがないと思うのですが、そんな生徒に限って自分勝手の使いにくい指でひいてくるのです。

しかし、こんな子どもたちも、間違った指使いがいかにひきづらいか、正しい指使いがどれほどひきやすいかを説明して、ひとつひとつ確実になおしていくと、大抵の子どもたちは2、3回のレッスンの中で直すことができます。正しい指使いでひいてこそ、より難しい段階へ確実に進めることができるのですから、初歩の段階から正しい指でひく習慣をつけてあげたいものです。

さて、ここにお話しした例は、楽譜に印刷されている指使いに全く注意を払わないで、勝手な指でひく場合ですが、指使いにはもう一つ別の問題もあります。それは、「印刷されている指使いが、常に最良の指使いとは限らない」ということです。印刷された指使いの中には、かえって演奏を難しくするようなものがあります。それよりもっとなめらかな演奏を可能にする指使いや、そこにもられた曲想に合致した指使いが考えられる場合が多々あります。また、小さい手の子ども、固めの手の子どもには、別の指使いを考えてあげた方がいい、といった場合もあります。

このような観点から指使いを変更することは、楽曲のレベルが高度になればなるほど、本格的に考えなければならない事柄です。しかし、初級中級の段階であっても、印刷されている指使いを子細に検討し、よりよいフィンガリングでひくことの大切さを教えることは、指使いがピアノの演奏でどれほど大切なものかを、早いうちから身につけさせるためにも、おろそかにしてはならないでしょう。

しかし、このような指使いの問題を、すべてのレベルにわたって網羅的に取り上げるとすると、分厚い一冊の本を書き上げることができるくらいの大きなテーマになってしまいます。そこで、このコーナーでは、初級から中級にかけてのテキストをいくつか取り上げ、例えばこんな部分の指使いはこんな風に変えた方が、ずっとひきやすいし、曲の表現が楽にできるのではないですか、といったようなヒントを提言させていただくことにします。それらのヒントを参考に、ご自分の指使いに関する意識を高められ、ご自分なりの創意にあふれた指使いをお考えになられるようになると、うれしく思います。
ツェルニー100番の指使いの提言

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