「トランペット吹き」が退屈なわけ
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- このようなフレーズの単純な繰り返しは、2ページ目の2段目から始まる第2部においても同様です。モティーフcの上昇するメロディーは、aの分散和音形を今度は順次進行形に変えただけで、同じようにたいへん定型的なメロディーです。そしてこれがそのまま2回繰り返されます。
- それを受けるフレーズdは「レ」に終わりますが、これもそのまま2回繰り返されますので、cとdからなる4小節フレーズの繰り返しは、これまた単調な感じを強調しています。
- このように、この曲は最後の4小節に至るまで、だらだらと単調な繰り返しに終わっています。そのために、最後のところで突然現れる最高点の「ラ」にまで上昇するa
のd minor の上昇分散和音形は、あまりに唐突な感じがして、クライマックスとしての高潮感は、ぶっきらぼうな感じになってしまっています。この上昇音型の左手に、突然2つの和音を挿入したのも、唐突な感じをかえって強調しているように思います。
- また、もう一つの全体的な曲作りの問題として、モティーフaとcはそれぞれ分散和音形と順次進行形と違っていても、両方とも全く同じリズムによる定型的な上昇形で、極めてよく似た印象を与えるパターンになっています。同様に、モティーフbとdも基本的に同じリズムの音型で、これも最後まで繰り返し使われるために、同じパターンの繰り返しの印象をいっそう強くしています。
これらのことが、この曲がフレーズが終わるたびに一旦停止をしながら、曲の最後まで同じ形の繰り返しに終始し、冗長で退屈な印象を強く与えている要因だと思います。
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(グローバー・ピアノ教本・VOL.3 19頁)
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