長尾さん@活水女子大学からのお手紙(1999.9.1)

長尾さん@活水女子大学からのお手紙(1999.9.1)

拝啓

 残暑厳しき折、益々御健勝のことと存じます。先日は、「KR」を御送りいただき有り難とうございました。私の論文のコメントをいただき有り難く思っています。読者どうしで研究観を高めるために私なりのコメントのコメントをさせていただきます。

自分の防衛的コメント      
1)データーの取り方は行き当たりばったりと書か      
れているが、ライターとストロツカの危機理論の      
要因を基盤に要因が多いので2回にわけて      
データーをとりました。      
2)結果の解釈が恣意であると書かれているが、      
他の解釈の方法があれば教えていただきたい。      
3)Table 5「高校生女子」のlife change units得点      
欄の標準偏回帰係数.43は間違いではあり      
ません。幼児期の親子関係が、不安定ととった場合、      
最近1年間でライフイベントが高くあった者が、青年期      
の危機状態(親子関係の葛藤やアイデンティティ      
の葛藤)が高いことを意味します。      
4)「記述にメリハリがない」という御指摘のこと、      
この研究は、危機状態に影響を及ぼす      
要因をさぐったパイロットスタディなので、読者にとっては      
メリハリがないかもしれない。

挑戦的コメント      
1)KR全体を読んで、読者(記述者)のできあ      
がった研究観(価値観)を感じた。それは、自分      
の育てられた研究観からきているようだ。きっと読者      
(記述者)は若い人たちと思う。何がよい研究かの      
観点をもう少し考え返すことも次の展開ができる      
と思う。とくに実験研究を評価し、調査研究を      
あまり評価していないようにとらえた。      
2)たしかに実験研究のほうが、わかりやすく      
クリヤーな結果が出るが、仮説(問題)そのものが      
軽いことも考えたほうがよいのでは。調査研究でも      
扱っている内容が、実践的、役立つことが明確であれ      
ばその価値はあると思う。「青少年白書」を価値がない      
ように書いているが、事実を整理しているものとして      
価値あるものと思える。

     

私の研究は、メリハリがないと書かれているが、      
青年期の迷い、つまづきは、その個人のもつ自我      
の強さ(心の強さ)の程度が何よりも大きく左右      
しており、発達的迷い(親子関係の独立と依存、      
自分の確立)は、幼い頃よりの社会化の完成の      
程度が、また不適応に陥るかどうかは、ライフイ      
ベントがきっかけとなり自我の強さの程度が左右      
していることが明らかになったということです。これは、      
明日からの教育や臨床に役立つと思います。      
莫大な予算をつかって研究をしている大学もありますが、      
私の研究観は、少しでも実践に役立つものでなけ      
ればならないし、研究者という形をつくるための研究は価値が      
ない(自己愛的研究)と思います。

 以上、勝手なことばかり書きましたが、コメントでも又、いただけたら幸いです。

                     敬具


守註:いただいたお手紙を守がテキスト入力したものです。