KRから坂田陽子さんへのお返事メール#2(2000/8/18)

Date: Fri, 18 Aug 2000 13:49:04 +0900
To: "SAKATA Yoko"
From: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp (守 一雄)
Subject: Re: KRの件#2


坂田さま:守です。
 メールありがとうございました。

At 1:03 PM 00.8.18, SAKATA Yoko wrote:
> 守様:
>
> ただ、疑問に残るのは、M&Wは、もし「動物が隠れているはずのドア(relevant)」だ
> けに注意を向けてその動物を探せるかということを調べるために、なぜ、ドアにあの
> ような関連のある絵をつけたのでしょうか。やはりそこは納得の行かないところで、
> 純粋に選択的注意を測定していない気がします。その答えは、先生がおっしゃるよう
> に、
>
> > M&Wも課題遂行に動物や家具の概念(知識)が要求されることは折り込み済み
> で、
> > だからこそ、子どもたちが充分な知識を有しているかを何度も確認しているので
> す。
> > M&Wが調べたかったことは、
> > 「その知識を生かすための注意を選択的に使うことができるか」
> > ということだったはずです。
>
> ということでしょうか。知識を有しているかを確認してはいますが、あるという保証
> がデータでなされていないと思います。もし知識を有していなかったら、その知識も
> 生かしようがないと思います。知識がないので課題が解決できないのか、知識はある
> が、注意を選択的に使うことが未熟なため解決できなかったのか、M&Wらのデータか
> らは分からないと思います(ただ、私はこの考えに固執しているので、他の見方をご
> 教示ください)。

 M&Wは、「知識がないので課題が解決できない」という可能性はもともと
考慮してないと思います。
彼女らは課題の実行のためには知識が必要であることは大前提としていて、
だからこそ、必要な知識が獲得されているかを確認し、
さらに、関連が明らかになるような絵をドアに付けたのだと思います。

 「知識があるのになぜ注意を選択的に使えないのか?」はおそらく
「どこに注意を向けるべきか」という方略的知識(別レベルでの知識)が必要であり、
なおかつそうした方略をどう使うかというさらにメタのレベルの知識が必要となるん
じゃないか、
と思います。
(他の教授実験などからの類推です。特にこの領域の論文を調べたわけではないので、
どこかですでに研究されているかもしれません。)

 坂田さんが言うように「知識がないので課題が解決できない」という可能性について
もう一度きちんと確認してみることも必要なのかもしれません。
私にとっては自明のことに思えたので、あんなコメントになりました。
実験は2つも丁寧に行われており、2つの実験の積み重ねがうまくなされた研究だと 思います。
今後の研究に期待しています。

 これからもどうぞ『KR』をご支援下さい。

-------------------------------------------------------------------
守 一雄@380-8544信州大学教育学部教育科学講座(これだけで郵便が届きます。)
kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp 電話 026-238-4214(ダイヤルイン・留守電)
『DOHC』『KR』発行元     Fax 026-237-6131(直通)
http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/hp-j.html
-------------------------------------------------------------------