小学校5年生の社会科の授業中の教師と児童の発話を7時間分記録し分析した研究である。研究のキーワードは「両義的な発話」で、その数量的な発生割合、それに対する教師の対応、その機能、を解釈的に分析したものである。で、その「両義的な発話」とは何かというと、「フォーマルともインフォーマルともとれる」発話なのだという。英文では「mixed formal and personal verbalizations」となっている。しかし、研究内容から読みとるかぎり、これは「インフォーマルな発話」とする方がよほどわかりやすくスッキリする。著者はわざわざ「フォーマル」「インフォーマル」「両義的」に3分類して分析をしているのだが、Tables1,2を見ればわかるように、インフォーマルな発話はきわめて少なく、分析対象となっていないのだ。だったら、「両義的」などというわかりにくいカテゴリーをあえて作らずに、両者をまとめて「インフォーマルな発話」にした方がよい。そうすれば研究の結論もずっとわかりやすくなる。「授業の中で、子どもはかなりインフォーマルな発話をしており、教師もそれによく反応している。そして、そうしたインフォーマルな発話が授業進行を円滑にするのに役立ってもいるのだ。」