第2巻第3号          1996/11/1
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KR

Kyoshinken Review, or Knowledge of Results

学問の発展は
互いに批判しあうことで
なされるものである。

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不定期発行・発行責任者:信州大学教育学部・ 守 一雄
kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp
http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/kr/krhp-j.html


目次


【KR発刊の目的】

(第1巻0号からの抜粋の抜粋の抜粋)

  学問の発展は互いに批判しあうことでなされるものである。また、学会誌掲載論文の研究結果は「追試」によって確認されるべきである。しかし現状では、「研究論文発表」→「批判」→「著者の反論」という健全な議論も、「追試」による「オリジナル論文」の吟味も期待できない。そこで、『教育心理学研究』掲載論文を批判したり「追試」結果を載せたりするシステムを作った。どうぞよろしくご支援下さい。反論・コメントを歓迎します。

【『教心研』第44巻第2号掲載論文批評】

(その1)

内田・今井論文
「匹」「頭」「人」「羽」という助数詞の獲得の様子を4歳前後から6歳前半までの幼児計 150名を用いて横断的に調査した研究。結果そのものは特に驚くようなものはないが、研究方法も丁寧で結果の示し方もわかりやすい模範的論文である。
大浦論文
6つのピアノ曲の演奏をコンピュータで4通りに加工し、それぞれの演奏を小学生と大学生に評価させた。大学生と小学生という年齢の違いにかかわらず、また、ピアノ学習経験の多寡にかかわらず、「オリジナル」「平坦」「ランダム」の順に評価がなされた。つまりこの程度の評価はかなり小さいうちにできるようになる。一方、専門家しか知らないような法則の一部だけを使って作った「人工的な演奏」は、素人ほど評価が高く、専門家は「平坦」よりも低く評価した。この部分がこの研究のミソであるが、私は「専門家しか知らないような法則を使って作った演奏は専門家だけが「高く」評価するのだろう」と思いこんでいたため、結果のところで「あれっ逆だ」と思い読み返すことになった。こう思いこんでしまったのは、私がピアノ演奏の素人だからなのだろうか。もう少し、この部分に関する説明が欲しい。(その他「ランダム演奏」が表では「Swapped」なのも少しとまどう。)
○下村論文:
(次号掲載)
○田中・中澤・中澤論文:
(次号掲載)
高橋論文
就学期前後の読み能力の発達過程についての2年間にわたる縦断的研究。絵画ストゥループ課題や単語命名課題など5種類の課題を組み合わせ、ほぼ半年おきに4期に分けて個別検査で69名の子どもの発達状況を調べた。「単語の意味の自動的な活性化は短期間に急速に獲得される(ストゥループ課題から判明)」一方「単語の読みの速度は比較的長い時間をかけて徐々に進行する(単語読み課題から判明)」という興味深い結果が見出された。(高橋(1993)の横断的研究で示唆されていたことを縦断的研究で確認した。高橋(1993)の掲載ページは22-32ではなく、264-274である。)【KRベスト論文賞】
秋田論文
「授業」「教師」などに対するイメージを比喩として表現させることを一般学生・教職学生・新任教師・中堅教師それぞれに行い、授業に対するイメージの変化について調べた研究。主なイメージとして授業は「伝達の場」であるとするものと、「共同作成の場」であるとするものがあり、教職の経験とともに前者から後者に変化する傾向があることが見出された。研究結果はそれなりに面白いが、なぜイメージを問題にするのか、さらにはなぜ比喩表現なのか、がよくわからない。もっと直接的に授業に対する考え方や態度を尋ねる方が意義があるのではないかと思う。(p.181最終行「A2伝達者」は「A2伝達の場」のミスプリ。)
土肥論文
ジェンダー・アイデンティティ(エゴ・アイデンティティのジェンダー版=男としてあるいは女としての生き方が確立しているか)には、「自己の性の受容」「父母との同一化」「異性との親密な関係の保持」がかかわると仮定し、これらの下位概念に対応する質問項目を作り、確認的因子分析によってこれら3つの下位概念を因子とする「3因子モデル」が「単一因子モデル」や「因子を仮定しないモデル」よりもデータへのあてはまりがいいことを確認した。「うーんなるほどなあ」と思う。 
○浦上論文:
(次号掲載)
浅村論文
空間位置情報についての心的表象である「認知地図」に2通りある。一つは、自分の動く経路を継時的に繋げた「ルートマップ型」で、もう一つは、地図のような俯瞰図型(「サーヴェイマップ型」)である。この研究では、2年前に新設された学校を使って、「居住経験の量が学年間で同じ」状況を確保し(ここがこの研究のポイントである)、小学校2・4・6年生で認知地図がどのように作られているかを調べた。その結果、「ルートマップ型認知地図は2年生でも持っているが、サーヴェイマップ型は6年生にならないとできない。サーヴェイマップ型認知地図ができた後も、ルートマップ型も残り、両者が併用される。」ことがわかった。面白い研究で、内容はシンプルなのだから、もう少しわかりやすく簡潔にまとめて欲しかった。
○中川・松原論文:
(次号掲載)
○安藤論文:
(次号掲載)
○栗田論文:
(次号掲載)

【『KR』巻号別アクセス統計】

(信州大学教育学部内(160.252.121.xxx)サイトを除くアクセス)

 『KR』がzenkojiサーバで1996年4月25日に公開されてからちょうど半年が立ちました。この間、創刊予告号(第1巻0号)を含めて先月までで11号が発行されてきています。各号ごとのアクセス統計を調べましたので、以下にお知らせします。各号ともほぼ100〜200回アクセスされていることがわかります。KRホームページへのアクセス回数は930回です。また、信州大学教育学部内(160.252.121.xxx)サイトを除くアクセスサイトの数は500箇所を越えました(1996/10/30朝現在)。

発行月 巻号 アクセス件数
96年11月 第2巻3号 0
96年10月 第2巻2号 282
96年9月 第2巻1号 264
96年8月 第1巻8号 173
96年7月 第1巻7号 156
96年6月 第1巻6号 202
96年5月 第1巻5号 145
96年4月 第1巻4号 125
96年3月 第1巻3号 115
96年2月 第1巻2号 135
96年1月 第1巻1号【創刊号】 163
95年12月 第1巻0号【刊行予告号】 150
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