第1巻第0号   【新刊予告号】     1995/12/1
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Kyoshinken Review, or Knowledge of Results
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不定期発行・発行責任者:信州大学教育学部・ 守 一雄
kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp
http://cert.shinshu-u.ac.jp/facul/psycho/mori/kr/



【KR発刊の目的】


批判の重要性
 学問の発展は互いに批判しあうことでなされるものであると思います。批判しあい議論しあう中で、真実とそうでないこととが選別され、また、新しい研究のアイディアも生まれてくるのだと思うのです。
批判がなされていない
しかしながら、そうした批判や議論が起こりにくい実情があることも事実です。本来、研究成果を発表しあって、それを批判しあい、議論しあう場であるはずの学会発表でも、批判や議論がなされることはまれです。発表者が一方的に「発表」するだけで、「討論」の時間が用意してあっても、ほとんど討論がなされることはありません。
批判・反論の健全なサイクル
 論文を発表する場である『教育心理学研究』でも、批判や議論はなされません。掲載された論文に対する批判論文が掲載される、さらに、それに対する再反論の論文が掲載される、というサイクルができれば理想的なのですが、研究者の数や研究に必要な時間が限られていること、単なる批判だけでなく、批判する側も実証的なデータを用意しなければならないことを考えると今のままのシステムではとても実現が難しいと思います。さらに、仮に実現したとしても、刊行のサイクルが3カ月に一度ですから、議論のキャッチボールに半年も一年もかかることになってしまいます。
合評会の果たした役割
 そうした面を補うという意味で『教育心理学研究』には昔「合評会」という大変素晴らしい制度がありました。しかし、それも数年前頃から自然消滅してしまいました。私は長野地区の合評会の世話役をずっと続けていましたが、「合評会のようす」という欄が『教育心理学研究』や『教育心理学年報』から消えてしまい、報告の義務もなくなった頃から「合評会」そのものもやめてしまっていました。
追試による研究結果の吟味
一方、学会誌に掲載された論文の研究結果が真実であるかどうかは「追試」によって確認されなければなりません。ところが、こうした「追試」研究も学会誌に掲載されることはありません。「追試」研究が学会誌に掲載されるためには、元の研究結果を否定するだけでは不十分で、さらに新たな知見をつけ加えなければならないからです。そこで、学会誌に掲載された論文の研究結果が疑問視されるようなものであり、現に「追試」しても結果が再現できないような場合でも、現行のシステムの中では、オリジナルの研究結果だけが広く世間に知られることになってしまいます。現実には、卒論などで多くの「追試」がなされていると思うのですが、そうした「追試」の結果は報告のしようがないのです。こうしたフォローアップのためのシステムを作ることも急務ですが、現在の学会誌のシステムでは難しいと思います。
ないものは作ろう
 というわけで、このままではいつまでたっても「研究論文の発表」→「批判」→「著者からの反論」という健全な議論のサイクルは生まれてきそうにありませんし、「オリジナルの研究結果」を「追試」によって吟味するという健全な科学的システムも期待できません。そこで、個人的にですが、『教育心理学研究』に掲載された論文を定期的に批判したり、「追試」の結果を載せたりするシステムを作ることにしました。
「KR」:インターネットによる個人発信
 インターネットに代表される高度情報通信網の整備により、従来は情報の受信者にしかなれなかった個人が、情報の発信者となることができるようになりました。これは言ってみれば、個人個人が放送局や出版社になれるということです。そこで、私もこのインターネットを使って、『KR』というミニコミ誌を発行することにしました。『KR』のKとRは、基本的には『教育心理学研究』のKとreviewのRですが、学習心理学でよく使われる「学習者に対する結果のフィードバック」を意味する「KR:Knowledge of Results」も意味しています。当面は、全国の知人に個人的に電子メールで配送することとし、近い将来にはWWWサーバに載せて、世界中から誰でも自由に読むことができるようにする予定です。 
転送自由
 『KR』はできるだけ多くの読者に送りたいと思いますので、「転送自由」とします。パソコン通信上でも、紙にコピーしたものでも、どんどん複製して配布して結構です。なお、論文の著者自身にも何らかの形で直接に『KR』をお届けしようと思っています。そして、著者から反論が得られれば、それはそのまま、次の『KR』に掲載するつもりです。というわけで、『KR』は当面、不定期で発行しようと思っています。
どうぞよろしく
どうぞよろしくご支援下さいますようお願いします。

【KRの内容】

 『KR』の内容は、当面以下の2本建てで行きます。
  1. 『教育心理学研究』の号単位での掲載論文批評(『KR』第1巻第1号では、『教育心理学研究』の第43巻第1号掲載の12論文を対象にしたいと予定していま す。)
  2. 『教育心理学研究』に過去掲載された論文の「追試」結果の報告(私の研究室の卒業研究は例年3〜4件が『教育心理学研究』論文の「追試」ですので、それらを報告します。他大学での卒論などで「追試」がなされたものも私宛ご連絡下されば、併せてここに報告させていただきます。)
  3. 上記1.2.のオリジナル論文著者からの反論(これは私の希望です。オリジナル論文の著者から反論がもらえるか、ただ無視されるだけか。楽観的かもしれませんが、私はきっと反論がもらえるだろうと期待しています。)

【KRの配布方法】

『KR』は以下の3通りのルートで配布する予定です。
  1. 私が9年来発行を続けてきた別の個人ミニコミ誌『DOHC』のメールリング リスト(全国の心理学関係者50名程度)に流す。
  2. 95年度の沖縄日心後に最近発足した『心理学とインターネット』メーリングリ スト(JPR95@reitaku-u.ac.jp)に投稿する。
  3. 96年1月に開始予定の信州大学教育学部附属教育実践センター開設のWWWサーバ上。


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