第1巻第1号   【創刊号】     1996/1/1
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KR

Kyoshinken Review, or Knowledge of Results
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不定期発行・発行責任者:信州大学教育学部・ 守 一雄
kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp
http://cert.shinshu-u.ac.jp/facul/psycho/mori/kr/


目次


【KR発刊の目的】

(第1巻0号からの抜粋)

  • KR第1巻第0号


  • 健全な批判の重要性
     学問の発展は互いに批判しあうことでなされるものであると思います。しか しながら、そうした批判や議論が起こりにくい実情があることも事実です。論 文を発表する場である『教育心理学研究』でも、批判や議論はなされません。 そうした面を補うという意味で『教育心理学研究』には昔「合評会」という大 変素晴らしい制度がありました。しかし、それも数年前頃から自然消滅してし まいました。一方、学会誌に掲載された論文の研究結果が真実であるかどうか は「追試」によって確認されなければなりません。ところが、こうした「追試」 研究も学会誌に掲載されることはありません。
    批判サイクルの構築
    これでは「研究論文の発表」→「批判」→「著者からの反論」という健全な 議論のサイクルも、「オリジナルの研究結果」を「追試」によって吟味すると いう健全な科学的システムも期待できません。そこで、『教育心理学研究』に 掲載された論文を定期的に批判したり、「追試」の結果を載せたりするシステ ムを個人的に作ることにしました。『KR』はできるだけ多くの読者に送りた いと思いますので「転送自由」とします。どんどん複製して配布して結構です が出典が『KR』であることを明記して下さい。どうぞよろしくご支援下さい ますようお願いします。

    【『教心研』第43巻第1号掲載論文批評】

    (その1)

    (「なんだ単なる感想ぢやないか」とご批判下さるな。
    『KR』はまだ「赤児」 徐々に育っていきまする。)

    ◎太田・山崎原著論文:(次号掲載)
    ◎湯沢・大山・杉村・白川原著論文:(次号掲載)
    ◎上瀬・堀野原著論文:(次号掲載)
    高橋原著論文
    「幼児期の母子の対話」を録音しテープ起こしをして分析を するという労作であるが、比較対象が「大学生同士の対話」というのがあまり にギャップが大きすぎると思う。「大学生と幼児」とか「母親と小学生」を比 較対象にしていたら結果ももっと興味深いものになったであろう。著者コメント
    山本原著論文
    大変良くできた論文であるが「幼児の対人葛藤場面」という のが、紙芝居で見せて対応方法を尋ねるという「架空事態」であることが残念 である。被験者の一部でもいいから、実際に幼児を葛藤場面に置いて結果を確 認し、架空事態での結果が一般化できることの確認がなされていたら一層素晴 らしい研究となったであろう。
    保坂資料論文
    A市の公立小中学校の「全部」について、1989〜1991年度の3年度分の 長期欠席の実態を調べたもので大変貴重な資料である。
    ◎小泉資料論文:(次号掲載)
    平・小野・前川・林部・米山資料論文
    高校生程度の日本語の能力が「語彙 理解テスト」と「漢字の読み取りテスト」だけで簡便に測定できるというもの で、日常ほとんど使うことのない古文や漢文までが含まれている大学入試セン ターの「現代国語」の試験より、ずっと実用的な気がする。ただし、これだけ で「日本語(国語)」の能力が測られるようになれば、受験生などはこれだけ を勉強するようになるだろうから、そうした場合でも「これだけ」でいいのか が気になるところである。著者コメント
    ◎谷島・新井資料論文:(次号掲載)
    ◎柴田資料論文:(次号掲載)
    倉八資料論文
    麻柄(1994)も『年報』で絶賛しているように、倉八の研究は 半端ではない。この研究でも「都内の小学校6年生の双生児を、住民台帳から 探し出して、募集案内をダイレクトメールで発送し参加者を募り、応募者の保 護者を対象に説明会を開いて同意を得た上で、双生児のペアを違う教授方法に 配置した2クラスに75分の授業を8回も行ってその差を調べたもの」である。 賞金なし権威なしの賞だが【KRベスト論文賞】を授与する。
    ただし、重大誤植あり(1996.12.1判明)
    小野瀬資料論文
    「竹井機器には筆圧と筆速が簡単に測定できる装置があり ますよ」という研究。後輩に厳しいのは身びいきと言われないため。若い小野 瀬氏にはぜひ「機器の使用例」を越える研究を期待したい。

    【『教心研』掲載論文「追試」結果報告】

    ◎伏見論文(第39巻4号1991)の実験2に「カブトムシ」を加えて追試(田嶋卒論 1994):
    伏見論文の結果を再現。「カブトムシ」は「非家畜」と判断され、 「ブタ教示」「カイコ教示」のどちらを与えても影響に差無し。
    ●守論文(第39巻4号1991)の実験1を「音声誤認識が起きない状況」で追試(後 藤卒論1992):
    音声認識ユニットの代わりに実験者が被験者の音声を認識して キー入力するという方法で、守(1991)で不可避であった「音声誤認識」を排除 した。2つの実験の結果、誤認識がない場合でも文産出群の成績は悪く、「音 声の誤認識が文産出群の学習を妨げている」という守(1991)の解釈は否定され た。
    ●今井論文(第41巻3号1993)がwearで行った実験をtakeとgetで追試(小泉1994) :
    結果がまったく再現できず。(卒論はまったく別のテーマに変更。)今井の 結果は、「wear」と「着る」のように日本人とアメリカ人とで意味表象が適度 に異なっている単語でだけ観察される現象である可能性が高い。とすれば、過 度の一般化は禁物。
    ●「追試」じゃないけれど
    『教心研』の第40巻には340-359頁が第3号にも第4号に もあるってこと知ってますか?

    【KRの配布方法】

    『KR』は以下の3通りのルートで配布しています。

    1. 『DOHC』のメールリングリスト(dohcnet@gipnc.shinshu-u.ac.jp)
    2. 『心理学とインターネット』メーリングリスト(JPR95@reitaku-u.ac.jp)
    3. 信州大学教育学部附属教育実践センター東原氏開設のWWWサーバ上に置く。

    ◎以上の他、オリジナル論文の著者にも郵送しています。


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