岩男さん@関東学院大学からのメール(1999/5/19)

岩男さん@関東学院大学からのメール(1999/5/19)

From: IWAO Takumi
Date: Wed, 19 May 1999 17:13:15 +0900
To: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp
Subject: KRレビュー
MIME-Version: 1.0

こんにちは.岩男@関東学院大学です.

守先生は書かれました:
カテゴリに基づく帰納推論における専門性の影響
>カテゴリに基づく帰納推論」のやり方が、専門家と一般人と
>で違うのかどうかを調べた研究であるが、どうも研究の手順
>が「行き当たりばったり」の感が強く、何かを解明したいと
>いう強い動機に基づく研究というよりは、「修士論文」を書
>くための研究という感じがする。手近の大学院生(専門家)
>に課題をやらせてデータを集めただけで、Oshersonらの先行
>研究から一歩も踏み出るところのない、面白くもなんともな
>い研究になってしまった。

KRによるご批判ありがとうございます.

さて,本研究はご指摘の通り,事前に専門家と一般大学生との
カテゴリに基づく帰納推論の違いを「行き当たりばったり」に
調べたものです.専門家と一般大学生の違いについて,あらか
じめ明確な予測を行い,その予測を検証するような実験を行う
という形の「理論駆動的な研究」になっていないのはご指摘の
通りです.しかし,すべての研究について,あらかじめ明確な
予測を持つことは,非常に困難なことであり,探索的な研究・
探索的な分析というものが存在します.

本研究は,そのような探索的な研究です.守先生のコメントで
は,研究手続きのご批判は頂戴していますが,探索の結果その
ものについては,「面白くも何ともない」という結論で,学問
の発展につながる批判であるとは思えません.可能であれば,
結論も含めてどう面白くないかをお教えいただけると大変うれ
しいです.私自身としては,カテゴリに基づく帰納推論におい
て,一般大学生と専門家でこのような違いが生じたことは,面
白いとも思いますし,なぜこのような結果が生じたのか,これ
はどのような意味を持つのか,考えたいと思っております.
「面白くも何ともない」ということは,「陳腐である」「当然
の結果だ」「瑣末なことだ」など様々に解釈できて,私の方と
しても,今後どう考えたらよいのかの参考にできません.でき
れば,どう「面白くも何ともない」のか,お教え願いたいと思
います.

また,先生が使ってらっしゃる「面白くも何ともない」という
批評は,きわめて主観的・印象風の表現です.むろん,主観的
な表現を使うのに,問題があると言いたいわけではありません.
このような主観的な表現を使われるからには,先生なりの「面
白さ」の基準を,明示していただきたいと思います.言い換え
れば,KRレビューとしての「査読基準」を示していただきたい
と思います.

守先生は,個人の集合である教育心理学会の編集委員会に対し
ても,長年にわたって,そのような「査読基準」の公開を強く
求めてこられました.守先生個人であれば,そのような基準の
公開は,集団がそのような基準を公開するよりも容易だと思い
ます.正直に申し上げて,守先生の「査読結果」に「傷ついて
いる」著者も少なくないと思いますので,先生の「査読基準」
が明示されれば,そのような感情的な反発も持たずに済むと
思います.

まとめると,次の2点になります.

1.探索的な研究である本論文の結果の「面白くも何ともない」
という批判を,できれば学問の発展につながる形で説明してい
ただきたい.

2.「おもしろい」「おもしろくない」などの主観的な表現で
批評するからには,「査読基準」を公開していただきたい.

以上,何とぞよろしくお願い申し上げます.

********************************
岩男 卓実(Iwao Takumi)
関東学院大学 法学部
E-mail: iwao@kanto-gakuin.ac.jp
tel: 0465-32-2624(研究室直通)
Fax: 042-746-1832
********************************