第19巻第3号                         2005/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)

 前回の紹介からまた3年が経ちました。何か新しい話題を付加できると良かったのですが、何も見つかりませんでした。以下は第16巻第2号(2002年 11月号)の再掲です。(2005.12.11)


 最近「進化心理学」という用語を耳にするようになりました。人間に見られるいろいろな性質に進化論的な解釈を求めるものです。たとえば、女性がなぜ背の高い男性を好むのかとか、反対に男性がなぜウェストのくびれた女性を好むのかとか、について「その方が進化的に有利だったからだ」という説明づけをするものです。もちろん、それにひきつづいて「なぜそうした性質が進化的に有利だったのか」の説明を試みることになります。

 「なんか、竹内久美子の本みたいな話だなあ」と思ったかもしれません。さしあたってそれでオッケーです。進化心理学は「ダーウィンの進化論に基づく生物学」の人間版であり、かつて大論争を引き起こした「社会生物学」などとルーツは同じものです。進化心理学についての日本語で読める標準的な概説書としては、長谷川夫妻による『進化と人間行動』(東京大学出版会、2,500円)の評判がいいようですが、入口としては竹内久美子の一連の本(たとえば『そんなバカな!』文春文庫450円)でもいいと思います。要は、ドーキンスのこの本に行き着くことがなによりも重要なのです。竹内さんの本は面白さが優先されているため、一部の専門家の間では「似非」科学者として評判が悪いようですが、ドーキンス教の伝道師としてはおそらく日本で一番成功している人なので、同じドーキンス信者の私は竹内久美子支持派です。                (守 一雄)

 
初版(左上)では遺伝子を擬人化したイラストが使われていたが、改訂版(右上)ではより抽象的なデザインに変更になった。訳書(下)もほぼ同様に表紙デザインが変わっている。訳書はタイトルも変更された。


【これは絶対面白い】

R・ドーキンス『利己的な遺伝子』

紀伊國屋書店2,800


 このDOHC月報では原則として同じ本は2度取り上げないが、この本だけは例外で、少なくとも3年に一度は取り上げようと決めている本である。91年6月に初めて紹介した後、3年半後の95年2月にもう一度紹介し、96年11月に3度目の紹介、西暦2000年1月に4度目、そして今回が5度目だ。初めての紹介の時に「学生時代にこの本1冊を読むか、それともこの本以外の400冊を読むかのどちらかを選ぶとしたら、この本1冊を読む方を選ぶべきだ」と書いた。この考えは今も変わらない。

 初回の紹介の時にも書いたが、私はこの本をカナダ留学中の1978年にトロントでの研究会に参加した後、ニューファンドランドの留学先大学へ戻る旅行中に読んだ。原書は2年前の1976年に出版され、欧米ではこの本をめぐって大論争が起こったのだそうだ。1978年にはペーパーバック版が出たばかりだった。トロント空港の書店にもそのペーパーバック版があり、濃霧で欠航になったため空港に足止めを食っていたときにそれを買って読んだのだった。衝撃だった。まるまる1冊の英語の本をこれほど短時間に読んだのは後にも先にもこのときだけだ。おそらく引き込まれるように読み進んでいったのだと思う。

 当時まだ大学院生だった私は、ニューファンドランドの大学に戻ってから、当然日本でも大論争になる本だと思って、何人かの先生にこの本を送った。帰国後も仲間の大学院生たちにこの本の重要性を熱く語った。しかし、日本では「火がつかなかった」。こんな衝撃的な本に翻訳書がないのも不思議だった。まもなく、京都大学の動物行動学者、日高先生たちが『生物=生存機械論』(紀伊国屋書店)という邦題で翻訳書を出していることがわかった。そのころまでに私は信州大学教育学部に就職し、「青年心理学」の授業を担当することになった。「青年心理学」は当時、教職必修科目だったが、私にはほとんど中身のない空虚な学問に思えた。そこで、私は課題図書としてすべての受講生に『生物=生存機械論』を読ませることにした。青年期に特徴的ないろいろな特質は「進化心理学」的に説明できると思ったからだった。

 原書はその後、1989年に改訂版が出され、翻訳書も原題に忠実な『利己的な遺伝子』と改題されて1991年2月に出版された。翌、1992年にドーキンスが来日した際、原書のペーパーバックにサインをもらったのが今でも私の一番の自慢である。

 うーん、なんか全然本の内容紹介になってないなあ。ごめんなさい、内容紹介は1991年6月号1996年11月号を読んでください。                (守 一雄)

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