第8巻第5号              1995/2/1

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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



 以下、DOHC第4巻9号(1991/6)の再録です。

 毎月一回のペースで「絶対面白い本」の紹介をつづけていますが、軌道に乗ってくると、一度紹介した本をもう一度紹介することがしにくい感じになります。面白い本はいくらでもあるし、第1巻第1号からの読者のことも考えると、新しいものをどんどん紹介していくので良いのかもしれません。しかし、もし学生時代の4年間に400冊の本を読んだDOHC会員が、「この本」を読んでいなかったとしたら、それはとても残念なことです。言い替えれば、学生時代に「この本」1冊を読むか、それとも「この本」以外の400冊を読むかのどちらかを選ぶとしたら、私は「この本」1冊を読む方を選ぶべきだと思うからです。そんなわけで、「この本」は少なくとも3年に一度はDOHCで紹介し続けていくつもりです。

 ふと気がつくと、これを書いてから3年半が経ってしまっていました。うちの学生は3年間しか長野キャンパスにいませんので、このままではこの本を知らずに卒業してしまう学生が出てきてしまいます。というわけで、卒業前ぎりぎりでなんとか間にあわせました。

【これは絶対面白い】

(ここも、DOHC第4巻9号(1991/6)の再録です。)

ドーキンス『利己的な遺伝子』

(日高敏隆他訳)紀伊國屋書店(\2800)


 「われわれはなぜ生きているのか?」という問いに対する解答は、宗教的なたわごとを別にすれば、この本にあるものしか考えられない。この本は、基本的にダーウィンの進化論を突き詰めていったものである。ダーウィンの進化論は子どもの頃から知っているつもりでいたが、それはまったくの誤解であった。この本は、私の世界観・人生観をすっかり変えた「一生に一冊の本」である。

 この本の内容を一言で言えば、「ニワトリは次のニワトリを作るために卵を生むのではなく、卵が次の卵を作るためにニワトリを作る」ということである。「我々生物は遺伝子によって子孫を作って行く」という個体中心の考えがまったくの幻想で、実は「遺伝子が行き続けるために、我々生物の身体を乗り物にしている」のである。私もあなたも私やあなたの遺伝子の単なる一時的な乗り物に過ぎない!!!これは、「太陽が地球の周りをまわっているのではなく、地球が太陽の周りをまわっているのだ」ということに気付くことに似ているが、その衝撃は百万倍も違う。地球が太陽の周りをまわろうがまわるまいが、私個人には何の不都合もない。私が生きる世界では自分が中心であり、「太陽も星もオレの周りをまわっているのだ!」ところが、この本を読むと、こうした自己中心的な世界観・人間観の原点がひっくり返されてしまうのだ。

 1976年に出版された原書をカナダ留学中に初めて読んだ時のことをいまだに忘れられない。日本では1980年に『生物=生存機械論』という、本の内容を見事に言い表した書名で出版された。しかし、The Selfish Geneという原題があまりにも有名であるため、第2版の訳書からは原題を直訳したものになった。
 第2版の『利己的な遺伝子』では、新たに2つの章が付け加えられている他、初版の11章分には補注が加えられた。第1章から11章までは初版の通りであるが、初版の『生物=生存機械論』を既に読んだ人も、この補注と新たな2章のためだけにでも2800円を出す価値は充分にある。

 古い情報だけでは昔からの読者に申し訳ないので、新情報の追加です。

【これは絶対面白い】

高木仁三郎『プルトニウムの未来』

岩波新書\650


 阪神大震災では自然の力の強烈さを思い知らされたが、工学関係者や政治家たちは、あのような直下型地震でも大丈夫なような耐震建造物をまだ作るつもりでいるようである。しかし、自然に打ち勝とうとするアクティブ・テクノロジーはもう止めて、自然と共生していくパッシブ・テクノロジーを目指すべき時なのではないだろうか?この本では、原子力についてもアクティブ・テクノロジーを押し進めるとどういうことになるのかが、近未来のSFとして描かれている。恐い話だが「これは絶対面白い」。
(守 一雄)


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