トンプソン・現代ピアノ教本(1)

 

(この研究は、学習指導の中に音階がどのように活かされているか、ということを主な研究の視点の一つとしているので、このテキストのシリーズに音階が導入されたところからの研究になっていることを、お断りしておく。)

学習事項導入

調名

学習曲名

学習内容

音階

備考(問題点、留意点)

長調の音階

 

長調の音階

28

長調の音階

なし ここですでに音階の説明がなされているが、この後の学習曲の中では、ハ長調の音階が直後の短い2曲で扱われているのみである。これ以後は P73の「鍵盤のあそび」で扱われているのみ。
ト長調の音階も、譜例とともに解説されているが、楽曲の中での学習は、 P73の「鍵盤のあそび」のみ。
上記以外の調の音階に関しては、ヘ長調のみが P73の「鍵盤のあそび」で扱われているだけで、他の調の音階に関しては、譜例・解説ともになし
実際の楽曲で学習体験できないことを学ばせることは、学習内容の体系化に対する配慮が欠けている。
 

ハ長調

城壁をのぼる

29

音階

なし  左右4つの音に分けられた音階の学習。
5ポジションのコンセプトにこだわったから、5432の指使いをとったのだと思うが、ピアニスティックな見地からは4321の指使いの組み合わせの方が望ましい。
 

ハ長調

鐘の音

30

音階

なし  左右4つの音に分けられた音階の学習。
ピアニスティックな見地からは、4321の指使いの組み合わせの方が望ましい。
 

ハ長調

とび石

31

  なし   

和音の構造

 

和音の構造

32

音程、三和音

なし  音程の説明がなされているが、以後の学習の中で音程について触れてる個所はない。三和音の第1音、第3音、第5音の説明のために必要だったと考えたのだろうが、この段階では「一つ飛びの三つの音で和音ができる」程度で十分ではないか。

和音の転回

 

和音の転回

33

和音の転回

なし  ここで転回和音の説明が行われた後、1巻の最後まで約50頁にわたり、和音の転回を含む曲は皆無学習体験が用意されていない学習事項の説明には、どんな意味があるのだろう。
 

ハ長調

山のぼり

34

分散和音

なし  分散和音としては、すでにP20の「月のこびと」の左伴奏に出てくるが、そこでは和音の分散としての説明はなかった。
一方「山のぼり」での分散和音は、子どもたちには分散和音としてより、一つおきのメロディーとしか理解されないのではないか。
 

ヘ長調

和音のあそび

35

和音奏

なし  和音としての学習は、この曲の方が分かりやすい。
しかし、このような形ではこの一曲だけがあるのみ。
●このページ以後新しい調のたびに示される「新しい手の位置」の左端に、小さい文字で書かれている「ヘ長調の鍵 記号シ♭」の下線部分は「調号」の誤訳と思われる。
 

ト長調

妖精のハープ

36

アルペジョ

なし  ●高音部譜表に突然上第1線、上第2間の加線音が出てくるが、この加線の音の指導は、これまでになされていない。これらの音は、その後P53まで出てこない。

8分音符

ハ長調

おほしさま

38

8分音符

なし   

ニ長調の導入

ニ長調

ぼくのふね

39

ニ長調の5ポジション

なし  Dからの5ポジションの曲のため、ニ長調の特徴音Cisがない
ニ長調の学習はこの1曲のみで、次にはイ長調が新規の学習として導入されている。
次のイ長調ではFis、Cis、Gisを持っていることが、ゴシックで強調されて説明されているが、このニ長調ではその説明はない。

イ長調の導入

イ長調

春の口笛

40

イ長調の5ポジション

なし  ニ長調の学習が徹底しないまま、イ長調の導入になる。
ニ長調と違い、調号の説明がされている。
イ長調の最初の学習曲は、これ1曲のみ
 

ニ長調

舞い落ちる木の葉

42

  なし  ニ長調としては2曲目のこの曲の後、3曲目の学習曲はこの後15曲待たなければならない
●ニ長調の特徴音cisはない。
 

ト長調

オランダのダンス

43

  なし  ●P40のイ長調の「新しい手の位置」説明にあるような、左手Fisに広げる説明が用意されていない。  
 

ヘ長調

妖精の宮殿

44

  なし   

テスト

 

テスト2

45

    5番、6番に未習の変ロ長調の課題!?が載っている。
 

ト長調

きつつき

46

  なし   
 

イ長調

ナイトとレディ

48

  なし  ●イ長調の2曲目(この前のイ長調第1曲はP40に。
●「左手をひろげた時の手の位置」はすでにP40で説明済み。(ト長調では説明がないのに、イ長調では二重に説明 

付点4分音符

イ長調

モーツァルトの曲から

49

付点4分音符

なし 

●すでに8分音符は学習済みなのだから、7小節目第3拍の4分音符は、原曲に則って二つの8分音符にした方がいいだろう。

 

ト長調

小さなワルツ

50

付点4分音符復習

なし  ●このト長調に関しては、左手の1の指を広げてとることを説明する楽譜がある。(「オランダのダンス}P43の備考参照) 

変ロ長調

変ロ長調

夜のうた

51

変ロ長調

なし  この曲の後1巻の最後まで30頁にわたって変ロ長調の曲はない

8分の6拍子

ハ長調

青がんばれ

52

8分の6拍子

なし   
 

ヘ長調

かっこう時計

53

8分の6拍子復習

なし  中間に休符の入った8分の6のリズムは、休符のないリズムをもっとたくさん練習した後に学習させたい。
●P35ですでに説明したFからの5ポジションを、ここで再度説明することの意味は?
●P36で突然出てきた上第1線の音が、ここで再び使われる。
 

ト長調

歌うねずみ

54

8分の6拍子復習

なし  前項の理由で、こちらの曲を前曲の前に学習する方がよいだろう。
●前曲同様、ここでもすでに学習済みのGからの5ポジションの説明図を載せている。
●上第1線と上第2間の音が使われているが、これらの音はここまでにP36とP53の曲で使われているのみ。
 

ヘ長調

バースデー・ケーキ

55

  なし   
 

ト長調

ポップコーン屋さん

56

2つの5ポジション

なし   
 

ト長調

メリーゴーランド

57

2つの5ポジション

なし   

シンコペーション

ヘ長調

スペインのフィエスタ

58

シンコペーション

なし  シンコペーションの表記は、二つの8分音符が4分音符と等しいことを解説しておくとか、途中から8分音符+4分音符+8分音符に変えたりした方が、見やすく識別しやすいのではないか。
 

ト長調

キツネ狩り

60

  なし   
 

ニ長調

シリアに寄せて

62

2つの5ポジション

なし  2曲目のニ長調曲(P42)学習後16曲目に用意された3曲目のニ長調学習曲。

テスト

 

テスト3

63

    未習の変ホ長調、変イ長調、ホ長調の音階奏と転回和音奏の設問がある!?

交差した手の位置

ト長調

カエルのコーラス

64

交差した手の位置

なし  このような形での交差した手の曲はこれ1曲のみ。学習事項として導入するなら、もう少し同種の曲を用意した方がいいと思う。
なお、交差ということだけでいえば、P36の「妖精のハープ」、P40の「春のうち笛」、P42の「舞い落ちる木の葉」に出てきている。
 

ハ長調

そり

65

  なし   

変ホ長調

変ホ長調

小さなボウピープ

66

変ホ長調

なし  変ホ長調の学習曲はこれ1曲のみ。
 

ヘ長調

夕べの鐘

68

  なし   

ホ長調

ホ長調

お百姓さんのダンス

70

ホ長調

なし  ホ長調の学習曲はこれ1曲のみ。
 

ニ長調

むかしむかし

71

8分音符のアルベルティバス

なし  4曲目のニ長調学習曲
●アルベルティバスの曲がこれ一曲だけというのは、いかにも少ない感じがする。また、突然8分音符のアルベルティバスを学習させるのは、ちょっと飛躍してはいないか。
 

ハ長調

きよしこの夜

72

3つの5ポジション

なし  3つの5ポジションで用意されていない左手のCGEの動きが、11小節目にある。あらかじめポジションを学習させる意味は?
 

ハ長調

鍵盤のあそび

73

両手に分けた音階奏

なし  ピアニスティックな見地からは4321の指使いの組み合わせの方が望ましいのではないか。
片手でひく音階の曲は、教本2のP37「かくれんぼ」まで待たなければならないが、この片手の音階を含む最初の曲の音階は、どういう訳かト短調の和声短音階である。
 

ハ長調

特急列車

74

  なし   

変イ長調

変イ長調

摩天楼に寄せて

76

変イ長調

なし  5ポジションに限定して書かれているので、変イ長調の学習としては極めて限定的なもの。
変イ長調の学習曲はこれ1曲のみ。変イ長調の2曲目は、2巻の24頁まで待たなければならない。
 

ト長調

ダブリンの町

78

  なし   

16分音符

ハ長調

ジョン・ピール

80

16分音符

なし  ●16分音符を習う最初の曲が、第1巻の最後にこの1曲だけが用意されている編集方針には、問題があると思う。
しかも最初に16分音符を習う曲としては、複雑でややこしいリズムの曲。もっと分かりやすくやさしい曲を用意すべきではないか。

テスト

 

テスト4

81

    未習のロ長調、嬰ヘ長調、変ニ長調、変ト長調の音階奏と転回和音奏の設問がある!?

 


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