レスナーの工夫

和音が変わっても気が付かない生徒の場合
和音の変わるところに印をつけさせる
 小さい子どもや、大きい生徒でもうっかり屋さんの場合は、伴奏の和音が変わっていることに気づかずに、平気で前の和音のままの伴奏をひいてしまうことがよくあります。おかしな響きにビックリ、始めて和音が変わっていることに気づくのです。私は、このような生徒たちには、伴奏はいつも同じ和音のままではないことを、先生が一方的に注意するのではなく、生徒自身に自覚させることが肝心だと思います。そのために次のような工夫をしています。

1. 先生が左手を同じ和音のまま弾き続けて、子どもにおかしな響きになるところを指摘させる。こうするだけで少し注意力のある生徒は、次に自分がひくときには注意してひくようになります。

しかし、これだけではあまり効果のない生徒もいます。そんな場合は
2. 先生がまたは生徒に、左手の和音を同じ和音のまま弾き続けさせます。そして、おかしな響きがしたら生徒に指摘させたあと、その場所に何かの印をつけさせます。その上で再度弾くときに、和音が変わる直前で、「マーク!」と言ってあげると、自分がつけた印ですから、何のことを言われているかすぐに気がついて、注意をして正しい和音をひくようになります。

もちろん、生徒によっては「マーク!」なんて言わなくても、気がつくだけの注意力のある子もいれば、自分で書いた印も見落としてしまうとろい子もいます。そんな子どもの場合は次のようにします。
3. 生徒の書いた印のところに、よく目立つ小さなシールを貼ってあげます。こうすると大抵の生徒は、シールに気がついて左手の和音の変化に注意するようになります。
(長野市:A.N.先生)

曲に詩をつける
「音階の曲集」を初めて手にした時、何か詩が浮かんできました。 そこで、私は 「音階の曲集」に、詩をつけるという形で、試みさせていただいています。とりあえず、この曲集に取り組んだのは、4年生と5年生の2名です。今までやってきたことの確認と、復習を兼ねて与えました。あまり練習をしてこないこの子達に、何か刺激を与えて、喜びを感じてほしかったのです。

こういうやり方は、何しろ始めてですので、思ったより戸惑っています。生徒も作詞となると、身構えてしまうようでした。もちろん、私も指導法など分かりません。あれこれ悩んでいるうちに、こう言ってみました。
「かっこよく作ろうとか、むずかしい言葉を作らなくちゃなんて思わなくてもいいんだよ。自分が思ったままの言葉、話し掛けるような気持ちをそのまま書けばいいんじゃないかなー」と。
そして出来たのが、下記のものです。

決して良い作品とはいえず、お恥ずかしい限りですが、生徒の方は、1曲詩が出来上がると、弾いてみるその曲が、はっきり自分のものになっているように、聞こえるのです。
(沼津市:K.O.先生)

1. みちくさ
おしゃべり/ペチャクチャペチャクチャ/かえりみ/ちーー /だあから/やめられないんだ/みちくさ/はーー /おくれた/かえりみち/いいわけを/かんがえるー/だーけど/ほんとのりゆうは/いえない/よーー /
(学校が終わったら、すぐ帰ってそろばん塾へ行かなければならないのが、お母さんに怒られるのを気にしている気持ちを詩にしたようです。)

3. 朝の散歩
チェリーさーあー/行くぞ /まちどうしかった/ねチェリー /だいすき/さんぽ /かわいいあのこが/まってるよ /キャッチできたね/オッケー/うまく とれたね/ヤッター/チェリーさーあー/かえろー/またあしたもあそ/ぼうね /
(チェリーとは愛犬の名だそうです。)

47. 北風のうた
そらをふきぬける/かぜたち/さびしいきたかぜ/ふーくー/そらをとおりすぎ/ふくかぜ/つめたいかぜのメ/ロディー/きたかぜの/うたよ /ずっーとかなでて/いーてー/そらたかく/舞っーてメロ/ディとどけに/きーてー/

48. あひるの行進
あるーきだした/ペタペタ/おとーをたてて/ペタペタ/
フフリフリフラフラ/ぴょこぴょこ/かわいいあひるた/ちーー /
のんびり/さんぽ /いけのまわりにい/つーもー/
フフリフリフラフラ/いるよ /たのしそ/うーに /


「音階の曲集」の著者のコメント
指導された先生は「決して良い作品とはいえず、お恥ずかしい限りですが」とおっしゃっておられますが、私は生徒さんがつけられた歌詞が大変気に入りました。それぞれが曲の題に沿った内容の歌詞で、とても上手に曲の感じをとらえています。大人には思いつかない子どもの発想、そして子どもの生活の姿が鮮やかに表現されていると思いました。自分の作った曲が子どもの詩のお陰で、さらに新しい表情をつけ加えられた感じがして、とてもうれしく思いました。

例えば、「北風のうた」でいえば、最初のフレーズが「空を吹き抜ける風たち」で、次のフレーズが「空を通り過ぎ吹く風」と、同じフレーズの単純な繰り返しを避けていますね。最近の初級用のテキストに多く見られる同じフレーズを並列するだけの曲の作り方より、よほどよくできていると思いました。

また、「あひるの行進」では、中間部のゆっくりしたところの歌詞は、「のんびり散歩」とつけられていて、とても曲の雰囲気とマッチしています。それから「フリフリフラフラ」といった擬態語が、何かとてもユーモラスで雰囲気があっていいですね。

生徒たちは、このように詩をつけることで、曲の味わいをもっと身近に感じられるだけでなく、自分も曲作りに参加したようふうに感じることができるのではないでしょうか。指導の難しさはあると思いますが、曲との関わり方を密にするための、大変興味深い試みだと思います。

●「かせんがよめる」の活用
「かせんがよめる」の楽譜につきましては、加線の音符を覚えることと、今までに習った音符が、素早く読めて、弾けるということを目標にしようと考え、8小節のたくさんある課題曲を、初見でやることを試みています。
ゲーム形式で、間違えたらブッブー最初からやり直しです。
なかなか緊張感があり子供達も喜んで、数分間を、たのしみます。

音符が読めることと、それをすぐ鍵盤につなげることと、リズムがわかっていること、そして、右手、左手のすばやい切り替えなどが、要求され、とても役に立っています。
(沼津市:K.O.先生)

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