「かせんがよめる」の指導の実際


レスナーからのメール
初見練習に使っています

私は「かせんがよめる」を初見練習のようにして、使っています。毎回ひとつずつ。初見ですのであまりしつこくやりません。全部やるのには、1年近くかかってしまいますが、譜を読むことへの恐れのようなものは確実になくなりました。ただ本題の、加線つきの音符を読むことについてどの程度定着したかは怪しいところもあるので、もう一度違う形でやらせたいと思っています。
(山口県、光市:K.K.先生)
著者からの返信
それも「かせんがよめる」を使う一つの方法ではないでしょうか。私も「かせんがよめる」は、毎回2曲程度、生徒によっては1曲を課すだけです。大事なことは、少しずつでも、長期にわたって毎回練習することだと思います。私の場合は、一つの曲を弾かせる前に、必ずいくつかの加線の音を無作為に指して、「これは何の音?」と聞くようにしています。とにかく機会を見ては、自分で考え答えさせるようにすることです。多くの子どもたちは、そんなふうにしてやっと覚えるようになります。先生の方から、このように、毎回、長期にわたって、同じ学習内容を復習できるようにして上げること。それが大切だと思います。

もちろん、生徒によっては、「かせんがよめる」を全部勉強した後でも、加線の位置によっては覚え切れていないところがあるかもしれません。そんなときは、あなたもいっているように再度復習すればいいと思います。最初に勉強したときには、出来たら丸を上げ、再度勉強するときには、出来たらシールを貼ってやるとか、花丸にして上げるとか、丸の仕方を変えれば、気分も変わり新たな意欲が生まれると思います。とにかく、このように気長に対処してあげる必要のある生徒は、結構多いものです。

気長に辛抱強くやるという点では、こんな事例があります。現在教えている小学校2年生の例ですが、この子はじっと集中していることが出来ない男の子です。母親も教育には全く無関心といったふうで、調名を書かせても、他の子はほとんど漢字で書くのですが、この子だけは全部ひらがなで、それもとても大きな字で書きます。この子に、「音階の曲集」の初めの頃から、一曲習うごとに調名を言わせてきました。

それでも、最初のうちは聞いていることの意味が分かっていないようで、とんちんかんな答えしか返ってきませんでした。しかし、最近では「この曲は何調?」と聞くと、すぐ答えられないときは、曲の最後の終始音を探して、その音を頼りに、それが音階の出発の音(主音)だから何調と、ほとんど正しい答えを返すようになっています。

私がもし最初の段階で「この子には無理だ」とあきらめていれば、今はまだ調とは何ぞやということが分からなかったと思いますが、少しずつでもあきらめずに長い間教え続けていれば、だんだんと仕組みが見えてきて、いつの間にか理解できるようになるのだと思います。難しいことですが、指導者は辛抱強くなくてはなりませんね。

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