みさきちゃんからの贈りもの
夏目 芳徳
みさきちゃんがここ一両年に習った曲を並べてみると、優に本格的なリサイタルをやるに十分なほどの内容がありました。そのことを考えたとき、これは是非みさきちゃんに演奏会を開いてもらい、多くの人たちに聴いていただきたいものだとの考えが浮かびました。

というのも、みさきちゃんの演奏にはみさきちゃんならではの特別な魅力があふれているからです。それに、この魅力は生まれながらに備わったみさきちゃんの音楽的感性によるとはいうものの、今の魅力は中学生という時期のナイーブでしなやかな心から生まれる音楽でもあるからです。これは今をおいては聴くことのできない美しさだと思いました。

そこで、さっそくみさきちゃんにこのことを提案したのですが、それに対する返事は「はい」という一言でした。その言葉には、大それたことをしようという気負いはなく、ただピアノをひきたいという素直な気持ちが感じられました。

とはいっても、いざ実行するとなると、その重圧は小さな中学生の身には大変重くのしかかったに違いないと思います。それまではそれほど気にならなかったことでも、リサイタルとして公に聴いていただくためには、あそこが気になったり、ここに問題を感じたり。それがなかなかうまく解決しないと、プレッシャーとしてのしかかったことだと思います。でも、そんなハードルを乗り越えて、みさきちゃんには成長してもらいたいと願っています。

みさきちゃんは小学校4年生の時から毎年開かれるコンサートで、地元の演奏家の加藤晃、西山健一、田本摂理各氏の協力を得て、アンサンブルの共演をしてきました。このようにして成長してきたみさきちゃんの音楽学習の足跡もお聴きいただきたく、今回はバイオリンの加藤さんと新たにチェロの宮澤さんにも加わっていただき、モーツァルトのピアノ三重奏を演奏します。ソロと合わせてお楽しみいただきたいと思います。

前述しましたように、みさきちゃんに自分のリサイタルを開いてみたらと促したのは、楽しくも充実したレッスンをさせてもらった私からの贈りものとしての提案でした。でも、これはみさきちゃんから私への素晴らしい贈りものであると同時に、お聴きになる皆様への素晴らしいプレゼントでもあると思っています。そんな素敵な贈りものをいただいて、私も皆さんとともに「どうもありがとう」と、みさきちゃんに心からのお礼を述べたいと思います。

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