坂野新編集委員長への質問状


平成7年3月24日

『教育心理学研究』編集委員会
      編集委員長 坂野 登殿

                        信州大学教育学部 
                                       守 一雄

拝復

平成7年3月18日付けのお返事拝見致しました。

ご回答の要点は以下の2点であると読み取りました。

(1) 審査委員のコメントに対する私のコメントに個々に回答する必要はない。
(2)編集委員会からの回答は「「不採択」の根拠は、研究方法、並びに、結果の不充分さによるものとの判断が3審査者で一致しているとの結論を再確認しました」につきる。

編集委員長が替わられて、納得のいく議論ができるようになったかと期待しておりましたが、まったく的外れのご回答で残念です。


1. 学会誌編集委員会の義務

まず、(1)に関してですが、私の平成6年6月15日付けの貴委員会へのお手紙は、1会員から編集委員会への照会です。私は、この手紙の中でも、

1994年5月21日に常任編集委員長からいただいた文書(E)によりますと、「(審査委員への)ご異議は当編集委員会への異議として受けとめ、慎重審議し、事実誤認がなかったことを再確認しました」とのことですから、今回の異議申し立てでは、貴編集委員会の個々の論点についての審議結果をお尋ねします。

と述べ、なおかつ各項目ごとに「そこで、貴編集委員会へ質問:」とはっきり質問先を明示してあったはずです。

質問の中には、『教育心理学研究』誌の編集方針に触れる部分もあります。編集委員会はこうした件に関して会員からの質問に答える義務があるはずです。そこで、改めて、18項目の質問へのご回答を請求します。


2. 最終回答の問題点

次に(2)に関してですが、「「不採択」の根拠は、研究方法、並びに、結果の不十分さによるものとの判断が3審査者で一致しているとの結論を再確認しました」とのことですが、私にはどう読んでも3審査者の判断が一致しているとは思えません。まず、以下に3審査者の審査コメントの要点を引用します。

1.1 審査委員Aのコメントの要点

1. 問題(改話と原作の面白さの比較)の意義について納得できない。
2. 納得がいかなくても充分な証拠が得られていれば、資料として採択に賛成するが、充分な証拠が出ていると思えない。【意義と結果が×】

1.2 審査委員Bのコメントの要点

斬新なテーマを取り上げた論文であり、教育心理学研究誌に新たな領域の内容を示すという意味での意義を認めます。ただし、研究の背景、実験そのものはあまりにも単純で、納得させる手続きで実施されたものとは思えません。【意義○方法×】

1.3 審査委員Cのコメントの要点

 本研究の意義は十分に認めますが、以下の二つの理由により、内容的に教育心理学研究に掲載するのは不適当であると判断いたします。【意義○方法×】

(1) 理論的にも方法論的にも、教育心理学ならではの切り口(専門性)が認められない。
(2) 「教育心理学研究」のような同業者の専門誌よりも、例えば「読書科学」のような学際的雑誌に発表されるほうが適切ではないかと考えます。


3審査委員は、それぞれに「研究意義」「研究方法」「研究結果」に言及していますが、貴委員会のおっしゃるように「研究方法、並びに、結果の不十分さによるものとの判断が3審査者で一致している」とは言えません。わかりやすく表にまとめてみましたのでご覧下さい。

審査委員A 審査委員B 審査委員C
研究意義 ×
研究方法 × ×
研究結果 ×
×:不十分 ○:十分

各審査委員が編集委員会にだけ回答した部分や、各審査委員に改めて問い合わせた結果、3者の判断が一致したということであれば、その部分を投稿者に開示するべきだと思います。(さらに言えば、私の異議申し立てはこうした審査委員の個々の判断に対するものです。それについて審議せずに、個々の判断を再検討しない貴編集委員会の対応に不満を覚えます。)


以上、平成7年3月18日付けのご回答の問題点を述べました。特に、「編集委員会はその編集方針について会員からの質問に答える義務」があります。今回のご回答ではまったくその義務に答えていません。そこで、改めてご回答を督促させていただきます。ご回答は平成7年5月20日までにお願いします。

敬具


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