豊田秀樹さん@立教大学からのメール(1998/5/26)

豊田秀樹さん@立教大学からのメール(1998/5/26)

From: Toyoda Hideki
Date: Tue, 26 May 1998 13:56:53 +0900
To: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp
Subject: 笠井論文の謎
MIME-Version: 1.0

豊田@立教大学です

守>「計画的なデータ収集ができなかった」という理由から、
守>「比較する平均値の差が、標準誤差の3倍を越えていれば
守>有意な差とみなす」という方針がとられているが、どうも
守>よくわからない。標準誤差はどう算出したのだろう?この
守>検定方針は結局のところt検定と同じことではないだろう
守>か?4要因の分散分析にかけてもいいのではないかと思う
守>のだが、著者や読者からのご意見・ご教示をうかがいたい。

研究テーマとデータ収集の方法に興味があったので笠井論文を 読んでみました.結論からいうと小生にも何をしているか分か りませんでした.

疑問点1.p80左3行目
「要因別水準別に平均値を算出したところ,すべての平均値の 標準誤差が0.02であった.」

という記述がありますが要因別水準別に平均値を算出すれば, すべての平均値の標準誤差が一致するなとということは考えら れません.論文中のデータで反例を挙げることは容易です. たとえば「仲良し」「単数」「面白い」「ことば」のクロスの セルの標準偏差は,0.98です(TABLE 1).一番著者に有利な状 況,つまり全員が反応したとしても標準誤差は

ルート((0.98*0.98)/(468-1))=0.045

です.つまり最大値と読み替えるわけにもいきません.実際には 全ての被験者が回答したわけではないから,真値はもう少し大き くなります.したがって上記の記述は誤であることは確かですが ,それなら著者は何をしたのかという謎が残ります.

疑問点2 TABLE1
要因別の標準偏差がセル内の標準偏差より小 さい傾向がある.

たとえば1例を挙げると,「関係」という要因の「仲良し」とい う水準の標準偏差は0.68である.この値を計算したセル別の標準 偏差を拾うと

0.98, 1.00, 1.04, 1.07, ..., 0.99, 1.04, 1.00

となる.0.68を下回るものが1つもない.明らかに「分散は級内 分散より小さくならない」という分散の基本的性質に反している. このような矛盾がTABLE 1 にはたくさんあるので,TABLE 1 は全 体的に計算ミスしてます.

交互作用の検討法に関しては,上記を利用しているのでますます 分りません.そもそもこの書き方で,何をしているかわかる人は いない,というのが小生の感想です.

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TOYODA Hideki Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology
TEL +81-3-39852323 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo(St.Paul's)University
toyoda@rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan
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