外山紀子さん@津田塾大学からのメール(2000/9/26)

From: "Noriko Toyama"
To: 守 一雄
Subject: Re: KRvol.6-4
Date: Tue, 26 Sep 2000 12:28:06 +0900
MIME-Version: 1.0
X-Priority: 3
X-MSMail-Priority: Normal
X-MimeOLE: Produced By Microsoft MimeOLE V5.00.2314.1300

守先生

 メールありがとうございました。先生がこのようなもの(KR)をやっていらっしゃ
ること、初めて知りました。

> ○外山紀子(ncb01577@nifty.ne.jp):
> 幼稚園の食事場面における子どもたちのやりとり
> --社会的意味の検討--
>  都内公立幼稚園のお弁当の時間における園児たちのやりとりの様子を、
>   1年半に渡って縦断的に、といっても8回(研究1)ないし13回(研究
>   2)ビデオ録画し、それを転記して分析した労作。子どもたちは多様な
>   やりとりを行うが、「(ミートボール)あるひと、手ーあげてー」「は
>   ーい」というルーティン化された発話連鎖が頻出することが観察された。
>  (多重分析のScheffeのアクサンテギュの位置が間違っている。)

 Scheffeのアクサンテギュの位置が間違っているというご指摘。もっともでした。
あわてて読み返しました(!) 論文というものは、印刷されてしまえば、それに対
する感想、意見などのフィードバックが帰ってくることは稀で、物足りない感じがし
ていました。ご批判くださってありがとうございます。
 私の論文の主旨は、「・・・・・あるひと、てーあげてー」というルーティンが、
幼児の食事場面におけるコミュニケーションの成立に一役も二役もかっているという
ことにあります。多分、幼稚園や保育園の食事場面を見たことのある人なら、こうし
たやりとりを目にする機会は多いと思います。ただ、園によって、どういうやりとり
を使っているのかは異なるようです。この研究では、論文としてのまとまりがつかな
いということから、保育園のデータをはずしたのですが、保育園でも、「おーわっ
たっ」というルーティン化された言い回しが観察されました。給食を食べる保育園で
は、皆が同じものを食べていることから、「・・・・・・あるひと、てーあげてー」
というルーティンは出にくいようです。一見すると、どうということのないやりとり
を、子どもはなぜするのだろうか。それをすると、どういういいこと(悪いことも)
があるのだろうというのが、この論文の出発点でした。この研究では、ルーティン的
なやりとりが、(結果として)たくさんの子どもが同じ話題を共有できるという”い
いこと”をもたらしていることがわかりました。
 食事するという場面で、子どもたちは、色々と面白いことをやってくれます。そう
した面白いこと、何気なくやっていることの意味をつかめたらなあと思っている次第
です。
 これからも、ご批判ください。ありがとうございました。

外山紀子@津田塾大学