高井@大阪大学さんからのメール(2000/1/22)

Date: Sat, 22 Jan 2000 23:16:28 +0900
From: 高井 範子
Subject: ご指摘有難うございました
To: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp
MIME-Version: 1.0
Status: RO

守 一雄先生

 この度はKRをご送付下さいましてどうも有難うございました。
また、サンプリングに関してのご指摘を頂きまして重ねて御礼申し上げます。

 サンプリングは重要であるという認識は持っておりますが、この度の拙稿におきまし
て、その点に関する説明を投稿論文の規定枚数の関係から、当初の内容を略し過ぎてし
まったと反省しております。

 しかしながら、調査本来の厳密な意味におけるサンプリングは出来ておりませんの
で、以下に述べます内容を補足させて頂いたとしても、守先生からご覧になれば、同じ
だということかもしれませんが。
調査援助費のようなものもなく、広範囲な社会的機関その他の人脈や、更には機動力と
なる学生を自由に使える立場におありの先生方と異なり、多くの人脈を活用できる社会
的地位もない一学生にとりまして、一人で広範な年齢層の成人男女を対象にして行う調
査は、多大な費用と時間と労力を要します。また友人・知人の協力なくしてはデータを
得ることは不可能な状況です。「一学生の立場で行なわなければならない限界」と言っ
てしまうと、「それは甘えだ」とお叱りを受けるかもしれませんが・・・。
 折角の機会ですので、KRの場をお借りしまして、修論の一部であります拙稿における
調査をどのように行ったかをもう少し詳しく述べさせて頂きます。

 上に述べましたように厳密なサンプリング(ex.単純無作為・系統・多段・層化抽出 法
など)は出来ておりませんが、卒論時(同じ年齢層を対象)の調査を踏まえ、母集団の
正当性の観点からも、サンプルに偏りのないように出来る限り広範囲の地域から、また
対象者の職業なども前回調査よりは広範囲になるように心掛けました。会社員の中に
は、割合的に多いというわけではありませんが、デスクワーク以外の仕事に従事してお
られる方も結構含まれております。さらに、会社員・公務員以外に自営業、専門職の方
なども含まれております。質問紙は約2600部ほど配布し、回収は1875部(回収率
72.1%)でした。この度の拙稿におきましては有効回答の中から更に短大生のデータを
除いたものを用いております。

 調査地域に関しましては、私が居住しております関西がどうしても中心にはなります
が、大阪、神戸、京都を初めとしまして、東京、名古屋、岡崎、長浜、加古川、岡山、
広島方面からデータを収集しました。
 調査対象者に関しましては、大学生の場合は、調査にご協力下さいました他大学の先
生が講義等で調査協力を学生さん達に依頼して下さり、配布回収をして下さいました。
勿論、私自身も大学生への配布回収を行っておりますが、個人的に他大学の学生さんに
もクラブ、友人などへの配布回収を依頼しました。
 大学は主として、関西の国公私立大学ですが、若干、他地域の大学生も含まれており
ます。また、前回調査がどちらかと言えば国公立大学の方が少し多かったので、今回は
偏りのないよう私立大学からのデータ収集に配慮しました。

 成人につきましては、複数の企業および市役所その他に勤める友人・知人にその組織
内での配布回収を依頼しました。これは、組織内に外部の人間が入って質問紙を配布す
ることはできませんし、回収率も、面識のない人間が依頼すると著しく回収率が低くな
るということを前回の調査時に聞きましたので、このような調査方法をとりました。
 また、企業の選択につきましては、「友人知人が勤務していて、かつ、一学生が行う
調査質問紙の配布が可能(上司の許可の下で)」という制約はありますが、前回調査を
踏まえ、今回は大手企業だけでなく、中小企業への配布も行っております。明確な数字
は出しておりませんが、回収時の状況から両者にはほとんど差はなく、大手に偏ってい
るということはありません。
 しかし、学術的組織(研究会など)、或いは公の調査機関が行う職場(労働)調査の
場合と違って、単なる学生が行う調査への、成人男性(特に、働き盛りで、多忙な年齢
層の男性)の協力はなかなか得にくいという実感があります。

 その他、主婦である友人・知人は、近隣への配布もしてくれていますが、文字通りの
隣近所の個々人への配布はプライバシーの関係から数は微々たるものだと思われます。
従いまして、個々人への配布というよりは、近隣に住む方が更に所属しておられる社会
的活動サークル、或いは趣味などのサークルその他の組織での配布をして下さっており
ます。

 また、プライバシー保護の観点から、一度に多くの数が回収される大学生を除き、そ
の他の個別配布の大学生、および成人へ質問紙を配布するに際しましては、質問紙の数
だけの封筒をつけて配布しました。そして、のり付けしたものを、配布窓口になってく
れている友人・知人に回収してもらいました。また、直接、私の方へ返送したいという
希望の方には、郵送料当方持ちでそのようにして頂きました。

 以上がデータ収集に関する補足説明ですが、いずれにしましても厳密なサンプリング
ではないことは事実です。守先生がご指摘になっていることは、もっと別の次元のこと
なのかもしれませんが、取り敢えずは上記のように回答させて頂きました。
 また、卒論や修論といった、ある時間の制約もある中で、学生が一人で行う成人男女
への調査に関しまして、どのようにデータを収集するのが良いのか、今後の研究のため
にお教え頂ければ幸いに存じます。今後共、どうぞよろしくお願い申し上げます。

大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程 高井範子


  • 守から返事(2000.1.24)を書きました。 
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