鈴木さん@日経リサーチのコメント(1998/11/13)

鈴木さん@日経リサーチのコメント(1998/11/13)


【守注記】

このコメントは、MLによって送られた『KR第4巻第5号』に対するものです。鈴木さんに「『KR』Web版に掲載してもいいかどうか」を尋ねたところ、

>原論文ではなく解説記事への感想なので,原論文を読めば解決するコメントで
>はないかと想像します.であれば無意味で著者に失礼ですのでWebにまで掲載
>しない方が良いかと思います.原論文を読んでも書いてなければ,著者のお返
>事も期待して掲載は守先生の判断にお任せします.

というお返事をいただきました。

なさけないことに、私には「原論文を読めば解決するコメント」なのかどうかの判断がつかないため、このまま掲載させていただくことにしました。


Date: Fri, 13 Nov 1998 19:47:45 +0900 (JST)
Reply-To: Psycho_INET@reitaku-u.ac.jp
X-ML-Var: OmList Ver2.32 96/07/27
From: stok@nikkei-r.co.jp
Subject: [Psycho_INET:0670] Re: KRvol.4-5
Sender: stok@nikkei-r.co.jp
Posted: Fri, 13 Nov 1998 19:46:29 +0900
To: Psycho_INET@reitaku-u.ac.jp
X-My-Real-Login-Name: stok; mail.nikkei-r.co.jp
MIME-Version: 1.0

鈴木@日経リサーチ です.

kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp wrote:
》コメント・ご批判などいただけるとありがたく存じます。

学会員でもなく,心理学も知らず,この雑誌の読者でもないですが,

》○小高恵:青年期後期における青年の親への態度・行動についての因子分析的研究

は面白そうな気がして,つい手を休めて感想.

》 男女大学生約800名に父母それぞれに対する態度や行動を質問紙で探索的に調べ
》た研究。一次因子分析で5つの因子が抽出され、さらに二次因子分析によって「親へ
》の親和志向の因子」と「親からの客観的独立志向の因子」の2つ二次因子にまとめら
》れた。これら2因子からなる2次元平面の4象限として「密着した関係:+親和−独
》立」「葛藤的な関係:−親和−独立」「離反的な関係:−親和+独立」「対等な関係
》:+親和+独立」を考えると、これは親子関係の発達の過程とよく対応していること
》がわかった。(分析手続きにおいて、因子分析の解を次々に変換していく手法が用い
》られているのだが、どなたかこうした手法についてのやさしい解説をしていただけま
》せんか。)

「密着→葛藤→離反→対等」という発達過程は「幼児→中高生→青年→成人」
という個人史として常識的かと思いますが,800人とも大学生(青年)ですか
ら,4象限の「対応」とは800人の発達過程の個人差の断面なのか,それとも
発達の4本道の相違を歩いているクラスタなのだろうか?.前者なら4象限は
時間的な概念として移動平面(関係の相対性)と解釈できる.後者なら死ぬま
で(又は生まれたときから)親と親和しない者もいるのだという空間的な概念
として固定平面(関係の絶対性)と解釈できる.[800人いれば親の欠落もあ
るだろうな?].

「探索的に」ということはEFAという意味ではないと思いますが,ひょっとし
て5因子(F1〜F5)だけEFAで,2次因子(F6,F7)分析とときにCFAをやった
のだろうか?.F6とF7の間には共分散を置いたのだろうか?.それは大き
いだろうか,小さいだろうか.(たぶん小さい).

「因子分析の解を次々に変換していく手法」ではなく,1次の5因子モデルと,
2次因子(2+5)モデルの2つの分析結果がともに良い適合を示したという
ことだろうから,5因子の相関は高いだろう.すると最初から2因子の直交モ
デルにした結果と比較して,2次因子モデルを採用したアドバンテージは何
か?.5因子を抽出したということは観測変数は20個を超えているだろう.
前者ならいくつかの観測変数を捨てないと適合は下がる(が結論は変わらな
い).後者なら捨てずに適合を高めることができた,というテクニカルな事情
ではないか?.

被験者が男と女の2種類,変数が父への項目と母への項目の2種類と合計で4
つの異質の要素がデータに内在しているので,因子はひょっとして対父(的)
因子,対母(的)因子になっていないか?.平面のクラスターは男学生,女学
生という集団に帰着していないか?.あるいは,男学生の因子パタンと女学生
の因子パタンの等価性は確認してあるだろうか.
ところで2次因子の平面の座標値は,2次因子の因子得点を回帰予測したのだ
ろうか.

このような感想は”一読瞭然”ですが,

》【日本教育心理学会のホームページ(http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jaep/)ができまし
》た。】

などで論文がPDFで配布されると,小生のような者には勉強になります.

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鈴木督久 stok@nikkei-r.co.jp
(株)日経リサーチ
101-0048 千代田区神田司町2-2-7
TEL:5296-5101 FAX:5296-5100
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