三スギさん@京都大学の反論(1998/9/9)

三スギさん@京都大学の反論(1998/9/9)

Date: Wed, 9 Sep 1998 22:33:36 +0900
From: misugi
To: "'kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp'"
Subject: 守先生へ(三木久より)
Date: Wed, 9 Sep 1998 22:40:54 +0900
MIME-Version: 1.0


   守先生、はじめまして。
この方はどなたなのだろう、と思い封筒をあけるやいなや、
思いもかけず論文の批判が展開されており、心臓がドキドキしました。
あまりにドキドキした為、これは自分の考えをここで新たに述べるべきかどうか
迷いましたが、とりあえず勇気をだして(?)、
書いてみようと思います。

  まず、「調査対象者に対する記述の不十分さ」というコメントについて。
 確かにもっと紙面を割いてそれぞれの群がどのような特徴を持った人々なのかにつ
いて充分伝えるべきでした。
 「一般的」な専業主婦、農業従事者、有職女性とはいったいどういう人なのか、に
ついて考え出すと、それは定義するのはとても難しいことで、つきつめて考えだすと
「これが有職女性の代表群」などということは不可能ではないかと思われますが、と
もかくこちらが例えば「有職女性」として扱った被験者の特徴や、人数内訳を、もう
少し詳しく伝えなければ、「ここで有職女性、として扱ってるのは実は看護婦さんが
ほとんどなんじゃ...」と思われてもいたしかたないことですね(実際はそんなこと
はありませんが)。

 ここで紙面に書かなかった特徴を簡単にあげておくと(正確な数は今手元にないん
ですが、,,,というといい加減で、また怒られそうですが)、農業従事者は兼業農家
の方が大部分でした。専業主婦の方は以前おつとめしていた方は含んでいませんが、
パートに出ておられる方は含まれています。また、今回の調査者の方には全員子供さ
んがおられます。「知人を介して」というのは、詳しく言えば「30名の知人(40
代、50代の方)に30歳〜59歳の方に適当にばらまいてもらう」、というもので
す。そして郵送されてきたものを、専業主婦、有職女性に分類しました。紙面の都合
上とはいえ、サンプリングについては丁寧な記述が必要であると感じました(年齢集
団の表も含めて)。

 3つの群に分けるのは「ステレオタイプ的」というご指摘はその通りかもしれませ
ん。うまく伝わるかどうか分かりませんが、私は世の中の女性をこの3群で見つめて
いるわけではなく、「ライフスタイル」というものは、あらゆる切り口からどうとで
も分類しうるものと思っています。この3群で女性のライフスタイルが代表されるな
んてことは考えていません。あくまで一つの切り口です。

 そういうあらゆる切り口が考え得る中で、今回、「専業主婦、有職女性」という2
つの相違をまず知りたいと思いました。それは従来の研究で言われてきた「有職女性
の方が、専業主婦よりも同一性の感覚が強い」という「強い、弱い」という見方に、
あまり納得できなかったからです。「同一性の感覚」というものの捉え方を見つめ直
して調査すれば、どちらの群が「強い、弱い」ということではなく、「同一性がなに
に基づくのか」という「同一性のあり方の違い」ということにいきつくのではないか
、と思いました。実際、今回の調査では、3群で同一化得点に相違はなく、同一化が
なにに基づくのか、に違いが現れました。農業に従事しておられる方に興味をもった
のは、論文にも書いてあるとおりです。

 最後に。「有職女性や専業主婦、農業従事者に対する偏見か差別意識があるのでは
ないか」(すべての群に偏見をお持ちと思われるのでしょうか?)とおっしゃられる
のは、私としてはとても悲しく心外です。これだけは訂正していただきたく存じます 。

                  京都大学教育学部  三木久 奈穂

 


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