小林春美さん@共立女子大学のお返事(1998/5/9)

小林春美さん@共立女子大学のお返事(1998/5/9)

Date: Sat, 09 May 1998 18:14:00 +0900
From: 小林 春美
Subject: 英文表記について
To: kazmori@gipwc.shinshu-u.ac.jp
MIME-Version: 1.0

 守先生
 いつもKRとDOHCを愛読しております。今回KRでは私の論文
(小林春美 「大人の動作と幼児による語の意味の推測との
関係」)も取り上げて下さいました。日頃より鋭い目で率直
に各論文の学問的価値・記述の仕方などあらゆる観点から
論じていらっしゃる守先生が、果たしてどのような評価を下さる
か、はとても気になることでした。今回幸いにも「好論文」
との評価を頂き、とても嬉しいです。ありがとうございます。

 一方、先生は私の論文中の図表が「中途半端な英語」表記
になっていて読みにくかった、と指摘もして下さいました。
たしかに材料を示したTABLE 1と2、そして子どもによる
理由付けの例を示したTABLE 3は、英語と日本語両方が使われ
ています。材料を示した表では、表記はすべて英語とし、注で、
一部について例えば「SCREW JOINT」については「ネジにより
鎖をつなぐ部品の一種」と日本語で説明したものです。理由付け
は、「わっかだから」「ぼつぼつがある」というような、
日本人の子どものことばのニュアンス
をそのまま示したかったので、日本語のままとしました。
私はこれまで「原則として図表は英語」は意味のあることだと
考えてきましたので、今回日本語を入れて結果的に混在させた
のは、私なりにはベストのやり方だと考えていました。

 しかし、今回の先生のご指摘を頂いて、ベストとは言えない
のではないかと疑問も生じてきました。このように混在させる
のであれば、いっそ全部を日本語とした方が良かったかもしれ
ません。今後はこうした点について、もっと注意しようと思い
ます。

 さらに先生は日本の雑誌における図表の英語表記全般につい
て、疑問を呈していらっしゃいます。私は先生と若干意見を異に
します。図表が英語表記であっても比較的シンプルなのであれば、
英語でもよいのではないか、と思っております。たしかに
日本の雑誌は日本人の読者がほぼすべてかもしれませんが、それ
でも、最低限のアクセスは、非日本語圏の人でもできるほうが
便利ではないでしょうか。最低限のアクセス、とは、アブスト
ラクトと図表だと私は思っています。論文について問い合わせが
あったときは、とりあえずアブストラクトと図表が英語であと
は日本語の論文を、一部翻訳して(たとえば手続きなど)送る
ことが可能です。実際最近私はこうして対応したことがあります。

 「非日本語圏の読者を考えるのだったら、論文そのものを英文で
書くべきでは」についてですが、たしかに各論文はどちらかの読者
のみを主として想定
することになると思います。が、一連の研究がある場合、それを
最終的には日本語圏、非日本語圏の両方で知って頂きたいと思う
こともあるのではないでしょうか。(僭越かもしれませんが、
私はそれを目指したいと思っています)。
まだまだ経験不足ではありますが、海外のジャーナルに投稿するとき、
関連する日本の雑誌の論文を引用することがあり、引用する論文
が「最低限アクセス可能」であると、引用するとき気が楽な感じ
がします。


 「興味を持った非日本語圏の読者には、著者に直接問い合わせがで
きるよう、著者の住所やe-mailアドレスを付記する」については、
全面的に賛成です。特に
e-mailアドレスは気楽に聞けるので便利と思います。
以上
 (なお、このメールの全部または一部をKRリストなど他に転送
されることは、ご自由になさって結構です。)
小林春美



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