第12巻第8号              1999/5/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



 以下はDOHC第7巻9号(1994.6.1)からの再録です。

> マンガ世代の優位は確実になってきました。おじさん世代の読む「週刊文春」や「週
>刊ポスト」の発行部数が数十万部なのに対し、「週刊少年ジャンプ」は6百万部だとか。
>単行本の売り上げ総数でも、伸びているのはマンガだけです。活字の世界では、日本は
>完全に輸入超過ですが、マンガだけは世界中で一人勝ちの強さで日本文化の輸出に貢献
>しています。
>(中略)
> あらためて考えてみると、教育心理学が明らかにしてきた事実の中で、教育に確実に
>活かすことができるものは、「図や絵を使った方がずっとわかりやすい」ということで
>した。教科書にもできるだけたくさんの図を使うのが、あたりまえになりました。

 さて、このように書いてから5年が経ち、絵の豊富な書籍が目につくようになりました。私自身も絵を大幅に増やした本『チビクロこころ』を書いてみました(ウフッ、2ヶ月連続で宣伝)。そして、同じ出版社ではこんな本が企画されていたのでした。

 「『OL進化論』で学ぶ思考の技法」という副題が付けられているように、内容そのものは科学的な思考方法を学ぶものですが、題材に『OL進化論』という4コママンガを使うことによって、とてもわかりやすく読んで楽しい本になっています。また、thinkerの日本語読み「シンカー」と「進化」がかけことばになっているところにダジャレ好きのこの出版社らしさが出ています。(と他人事のように言う(笑)。)   (守 一雄)


【これは絶対面白い】

道田泰司・宮元博章『クリティカル進化論』

北大路書房\1400

 2、3年前に、同じ出版社からゼックミスタ・ジョンソン『クリティカルシンキング』という本が出版された。「クリティカルシンキング」とは、直訳すれば「批判的思考」のことだが、ものごとを客観的・論理的・合理的に考えることで、むしろ「科学的な思考方法」という意味に近い。そうした正しい思考方法の原則をわかりやすい「クリシン原則」としてまとめてあったり、練習問題が取り入れてあったり、といろいろな工夫もしてあって、きちんと読み進めていけばクリティカルシンキングが身につくように作られたとてもいい本である。

 しかし、この本を読んだとき、「なにか違うんだよな」というのが正直な第一印象だった。それは、「入門篇」「実践篇」と2冊組で各1900円、絵や図も使われてはいるものの字がビッシリで(字が多いことは中身が濃いことであり、ハードカバーの本で1900円という価格設定も良心的なのだが・・・)、教科書にでも指定されて強制的にでも読まされないかぎり、あまり買う気や読む気を起こさせない、感じだったからである。この値段と内容でもこの本を買って読むような人は「自分の思考方法についてもともと意識が高い人」で、実は、読んでもそんなに役に立たないかもしれない。一方、この本を買って読めば、大いに役立つであろう人にとっては、これではとても読む気になれない。つまり、本の内容や出版意図と表現形式・書籍価格とにジレンマが生じてしまっていたのである。

 この本の訳者であった道田・宮元両氏も、同じことに気づいたにちがいない。今度の本では、秋月りすの4コママンガを取り入れるという思いきった作戦で、前著の問題点を見事にクリヤーした。いやー、道田さん・宮元さんお見事です。「思考訓練技法についての本」として、ほぼ完璧なできばえに仕上がっていると思う。おもしろくて役に立つ絶対のオススメ本である。(最後に「重箱の隅をつつく」ような指摘をひとつ、93ページの「重箱の角をつついておくと」の「角」は「隅」の方がいいと思う。)

                                 (守 一雄)


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