第7巻第9号              1994/6/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 私は、マンガはあまり読まない方です。しかし、嫌いなわけではありません。活字世代の最後尾にいて、マンガ世代をうらやましく感じながら、眺めている。「おじさんも入れてくれない?」と言って近づいて行きたいのだけれど、何となく気後れして、傍観者のままでいるというのが、本当のところでしょう。
  マンガ世代の優位は確実になってきました。おじさん世代の読む「週刊文春」や「週刊ポスト」の発行部数が数十万部なのに対し、「週刊少年ジャンプ」は6百万部だとか。単行本の売り上げ総数でも、伸びているのはマンガだけです。活字の世界では、日本は完全に輸入超過ですが、マンガだけは世界中で一人勝ちの強さで日本文化の輸出に貢献しています。マンガアニメも巨大産業になっています。やくざ映画の東映もその業績のほとんどは、アニメ部門だそうです。日本の映画産業そのものがアニメに支えられているほどです。映画部門でも、日本が文化輸出できるのはアニメだけです。
  マンガというわけではありませんが、コンピュータの世界も、画像の時代になりました。マックのユーザーも増えています。私も遅ればせながらWindowsユーザーになりましたが、活字世代の人間には、なかなか使いこなせません。ニューメディア時代になれば、(使い方さえマスターすれば)画像情報のやりとりもどんどんできるようになるのでしょう。パソコン通信は、ワープロとともに活字世代のおじさんのハイテク武器でした。それでも、パソコン通信は利用者が増えたといっても、ファックスの普及の速さにはかないません。誰でも使えるファックスと、一部のマニアだけしか使えなかった高速画像通信との挟み打ちにあって、文字だけを電話線で送るパソコン通信は、かつての「モールス信号マニア」のような位置づけになってしまうかもしれません。
  あらためて考えてみると、教育心理学が明らかにしてきた事実の中で、教育に確実に活かすことができるものは、「図や絵を使った方がずっとわかりやすい」ということでした。教科書にもできるだけたくさんの図を使うのが、あたりまえ になりました。まだ、文章が主、絵が従ですが、主従が逆転する日もそう遠くないでしょう。ただし、その際の問題は、マンガ家の才能でしょう。今の売れっ子のマンガ家は、活字文化で言えば小説家とエッセイストです。科学者やサイエン スライターに相当するマンガ家がいません。(だから、学習マンガは面白くない。最近出た「丸善コミックス」も面白くない。岡部恒治『マンガ微積分入門』(講談社ブルーバックス\780)も面白くない。)
 実は、私は授業中にヘタくそな絵を黒板にたくさん描くのですが、ヘタな絵でも描いたほうがわかりやすいようです。これからの教師は、上手な絵を黒板に描きながら授業をすることが要求されるでしょう。今のうちに、「教師のためのマンガの書き方講座」を教育学部に用意しておかなければいけないのかもしれません。もっとも、マンガで育った今の学生は、教わらなくてももう既に充分うまいようですが。                   (守 一雄)

【これは絶対面白い】

佐々木倫子『動物のお医者さん』

(全12巻)

白泉社\390


先月出た第12巻で完結になりました。うちでは家族揃って、毎巻新刊が出るのを楽しみにしていたマンガです。H大学の獣医学部を舞台に、ちょっと変わった教授とその研究室の学生たちの日常を描いただけの話ですが、なぜか面白い。終わってしまって本当に残念です。 (守 一雄)


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