第35巻第2号                2021/11/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行 [発行責任者:守 一雄]
(kazuo.mori[at-sign]t.matsu.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html


 今から12年前の2012年9月に当時の鳩山由紀夫首相(民主党)が国連気候変動サミットで「2020年までに日本の二酸化炭素(CO2)排出量を25%削減する」という公約をしたことをどれだけの人が覚えているでしょう?もう2020年は過ぎましたが、もちろんそんなことはできませんでした。東日本大震災が起こり、福島の原発が爆発し、それどころではなくなったこともあり、政権に返り咲いた自民党が2012年にあっさりこの公約を「撤回」してしまいました。それでも、世界から文句を言われたりもしませんでした。最初から「そんなことができるはずがない」と誰もがわかっていたからです。

 「地球温暖化」の話は以前からずっと何か胡散臭いと思っていて、『DOHC第25巻第8号(2012)』でも、同じ著者の本を紹介しました。渡辺正さんは、以前に同じように「胡散臭い」と思っていたダイオキシン騒ぎのときに、鮮やかに間違いを明らかにしてくれた方でした。しかし、温暖化騒ぎの方はおさまる気配がありません。今年のノーベル物理学賞が「気候変動を定量化して地球温暖化の高信頼予測を可能にした業績」に対して与えられたことで「胡散臭さ」がさらに高まり、もう一度、懐疑派の本を何冊か読んでみました。今回の続編も「地球温暖化」騒ぎの間違いをわかりやすく解説してくれています。(守 一雄)

(c)丸善出版
 

【これは絶対面白い】

渡辺正『「地球温暖化」狂騒曲:

社会を壊す空騒ぎ』 丸善出版 (¥1,980)

 二酸化炭素(CO2)排出を減らすことは思ったよりも難しい。著者は「序章」で東京都が無償でLED電球を配ったエピソードでこのことを説明する。従来の電球よりもLED電球は電力消費量が少なくて済み、電気代も安く済むようになる。その分、CO2排出を減らすことができると考えるだろう。ところが、話はそう単純ではない。浮いたお金は別の消費に使われ、その消費の分だけCO2が出るので結局同じことなのである。ちなみに、浮いたお金を使わないで預金に回したとしても、そのお金は銀行から貸し出されて結局は誰かが使うので同じことになる。(浮いたお金を「捨てて」しまえば、CO2排出も減るらしい。)

 そもそもCO2はそんなに悪いものではない(第1章)。私たち生物の身体は、植物が光合成でCO2から作った化合物を食べて作ったものである。生きていくためのエネルギーも植物が太陽のエネルギーを使ってCO2を化学エネルギーに変換したものである。だから、CO2が増えることは悪いことではない。よほど急激に増えるのでなければ、むしろ望ましいとさえ言える。現に、CO2が急激に増えているわけでもない。数万年単位で見ればもっともっとCO2濃度が高かった時代も長く続いたこともわかっている。

 地球がCO2が増えることで本当に温暖化するのかどうかも実はよくわかっていない(第2章)。種々の対策にもかかわらずCO2が増えつづけているのに、最近は「温暖化」が止まってしまったため、代わりに「気候変動」という別の言葉を使うようになった。しかし、最近の気候が異常であるかのように感じられているのも錯覚にすぎない。ちゃんとデータを調べてみれば、台風も山火事も昔に比べて増えているわけではない。むしろ、減っている(第3章)。

 にもかかわらず「温暖化対策(第4章)」が必須とされ「再生エネルギー(第5章)」の開発と利用が推進されている。ところが、実際には、どちらもまったく効果がなく、何十兆円も税金が無駄に使われてきている。第6章では、そんな「CO2脅威論」を言い出した国連の下部組織であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のインチキも明らかにされる。つまり、幻の「お化け」に怯えて、世界中が「お化け対策」に無駄なお金と労力を使っているのだ。

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 それでも、このIPCCを悪者にするだけでは、どうしてここまでの大騒ぎになってしまったのかがよくわからない。日本でも、子どもたちまで巻き込んで、誰もが「善意」で環境問題に取り組もうとしている。ただ、その善意が「暴走」してしまっているのだ(終章)。人々の行動も気候と同様に、いやそれ以上に、「複雑系」なのであって、その予測も統率も簡単には行かないものだということなのだろう。(守 一雄)

付記:以前に渡辺さんの前著をDOHCで取り上げていたことを忘れていました。発行後に気づいたので、少し修正しました。(2021.11.2)

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