DOHC1205

第25巻第8号                2012/5/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]
(kaz-mori[at-mark]cc.tuat.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html

【これは絶対面白い】

渡辺正『「地球温暖化」神話』

丸善出版(¥1,890)

(c)丸善出版
 


 以前から「地球が温暖化することがなぜ問題なのか」疑問に思っていた。温暖化で海面が上昇して南の島が少し沈んだとしても、広大なシベリアで農作物が育ちやすくなり、人間が住みやすくなる方がずっと利点が多い。ロシアだけでなく、もともと寒い地域に住んでいるヨーロッパの国々が温暖化を問題視していることも疑問だった。(当時、勤務していた信州大学も温暖化温暖化と騒いでいたが、長野県なんか温暖化で困ることは何もなかったはずである。)

 そのうち、温暖化問題を声高に唱える人々と原発推進派とが根っこでつながっていることを知った。電力会社もテレビコマーシャルで「原子力発電は発電時にCO2を排出しません」と得意げに主張しているのもそのためだ。(「発電時に」と言っているところが巧妙なところで、核燃料の精製や運搬、核廃棄物の処理などでは当然CO2を排出するので、トータルでは他の発電方法と大差はない。要はどんな経済活動をしても必ずCO2は排出されるのだ。)

 実は昨年のあの原発事故が起こる前に、広瀬隆さんが『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社文庫、2010年)という本を出して、その中で、二酸化炭素温暖化説がまったくのでっち上げで、ノーベル平和賞まで受賞したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が基礎データの捏造をしていたことを紹介していた。イギリスのイースト・アングリア大学の気候研究ユニット(CRU)から過去の電子メールが流出し、IPCCの主要メンバーがデータ捏造をしていたことが明らかにされたのだ。この事件は、例のウォーターゲート事件になぞらえて、「クライメートゲート事件(2009年)」と呼ばれて欧米では大騒ぎになったのだという。しかし、日本ではほとんど報じられなかった。

 クライメートゲート事件はその後の調査では「一部に疑惑をもたれかねない点はあったもののIPCCの信頼性は揺るがない」というような結論が出されて落着したようであった。(日本の環境省のホームページでもそう書いてある。)そんなこともあり、「地球温暖化説が原発推進派によって都合がいいので利用されている」という話も、反原発派の広瀬さんが言うだけではバイアスがかかっているのではないかと確信が持てずにいた。

 そこに登場してきたのがこの本である。渡辺正さんの本は以前にも『ダイオキシン:神話の崩壊』(林敏郎さんと共著、日本評論社、2003年)を信濃毎日新聞の書評で取り上げたことがあった。この本には、クライメートゲート事件の第二弾(2011年)も紹介されていて、IPCCの疑惑がもはや隠しようがなくなったと結論づけられている。本当に、書名の通り「地球温暖化」も神話にすぎなかったのだ。この本を読めば、もうハッキリと「二酸化炭素による地球温暖化説は嘘っぱちである」ということができる。

 日本は温暖化対策のために20兆円ものお金を使ってきたという。これは昨年起こった東日本大震災の被害総額17兆円よりも多い。世界全体では100兆円以上がつぎ込まれたと試算されている。なんのことはない「地球が温暖化すると大変だぞ」という脅しによって世界中が騙されたのである。いや、そうではない。アメリカはもうとっくに京都議定書から離脱している。お人好しの日本だけがまんまと騙されたのである。昨年末、やっとそれに気づいて、日本も離脱することにしたようだが、もう使った20兆円は返ってこないのであった。

 考えてみれば、信州大学も温暖化問題は口実で、大学の特色として環境教育をウリにしようとしていただけなのだろう。東京農工大学も低炭素化のためとして、屋上の太陽光パネルと「電力見える化」をウリにした140周年記念会館を昨年度ちゃっかり建ててしまった。いったい損をしたのは誰なのだろう?(守 一雄)

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