第24期日中関係を考える連続市民講座が2020年11月~21年4月まで6回開催
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第1回は11月21日(土)塚瀬進・長野大学教授が中国における歴史教育の特徴について話しました。
第2回は12月19日(土)王秋菊・清泉女学院短大中国語講師が中国語と日本語・文化比較について話しました。
第3回は1月23日(土)小池明・上田女子短大学長が米大統領選と米中対立について話しました。
第4回は2月20日(土)谷口眞由実・県立大学教授が漢詩のユーモアについて話しました。
第5回は3月13日(土)豊岡康史・信州大学准教授が清朝の対外政策決定方と現代中国について話しました。
第6回は4月24日(土)兼村智也・松本大学教授がコロナ禍で変わる日中ビジネスについて話しました。

 第24期日中連続市民講座⑥「コロナ禍によって変わる日中ビジネス」 (4/24)

 第24期第6回日中関係を考える連続市民講座が4月24日、日中友好センター教室において開かれ、松本大学教授で中国経済が専門の兼村智也先生が「コロナ禍によって変わる日中ビジネス」と題してオンラインで講演しました。コロナ禍の中でしたが、講座には12人が出席し熱心に聴講しました。

 兼村先生は、「コロナ禍の中で、マスクや防護服など医療関連物資の調達が滞るなどサプライチェーン(供給網)の寸断でモノの移動が止まる等中国依存度の高さが明かとなり、国同士の付き合い方を再検証する必要が指摘されている。また米中対立が激化している中で、アメリカのデカップリング政策に沿う形での開発や生産の”脱中国化”の動きが生まれており、二重に問題が提起されている。

 中でも半導体メーカーを中国から引きはがす政策に力を入れているアメリカは台湾さらに日本を巻き込んでこの政策を進めようとしている。一方中国は14億の巨大市場をバックに、内需拡大で対抗しようとしている。このような中で、日系企業の対中ビジネス行動はどう変化しているか?

 中国進出日系企業は”現状維持”の姿勢で、競争力のある日系企業にとって中国市場は依然として大きな魅力と考えられている。求められているのは中国拠点の自立化で、日本の本社と切り離した中国子会社内での資材・資金の運用の現地化が最大の経営課題となっている。

 現地化がむずかしい理由としては人の入れ替わりが激しく定着しない、人材育成が難しいこと、日本企業はマニュアルでなく人を通じてノウハウや仕組みを移転していく体質があり現地に任せる覚悟が不足していること等があげられる。一方コロナ禍で日系企業の評価は雇用を守る等評価が高まっていて、良質な人材が集まる可能性も生まれている。人の現地化に成功した企業に見られる特徴としては、日本での就学・就業経験があり、日本の本社のことを知っていて本社社長との信頼関係があり、旺盛な企業家精神を持っていることなどがあげられる。

 自立した拠点としての可能性を持っているのは、アジアの中でも中国・ベトナムのみ。日系企業が経営の現地化をはかるうえで適当な地域。日本国内企業は、一方で中国と一線を画したアメリカやアセアンとなどとのサプライチェーンを形成しつつ、もう一方で中国でのサプライチェーンにも足場を築くこと、両にらみの体制構築が有益ではないかと考える。」と指摘しました。

 アセアンと中国との経済的結びつきやアセアン諸国の人件費の比較、ベトナムは人件費も上がり飽和状態に近づいていてサプライチェーンの上でも楽ではないこと、アジア最後のフロンティアミャンマーの事情などにも話が及び有意義な講座となりました。

 第24期講座はこれで終了し、来期は11月からスタートする予定です。ご協力ありがとうございました。
 第24期日中連続市民講座⑤清朝中期の対外政策:「独裁」の実態・歴史の亡霊(3/13)

 第24期第5回日中関係を考える連続市民講座が3月13日、日中友好センター教室において開かれ、信州大学人文学部准教授の豊岡康史先生が「清朝中期の対外政策:「独裁」の実態・歴史の亡霊」と題して講演しました。コロナ禍の中でしたが、講座には21人が出席し熱心に聴講しました。

 豊岡先生は、「ここ数年、中国(あるいはロシア・トルコなどの旧近世帝国の後継国家)に関して、元首による「独裁」、いわば歴史の逆行を問題視する言説が見受けられる。その当否はさておき、実際に前近代帝国において「独裁」はいかに行われていたのだろうか?清朝中期(18世紀~19世紀前半)の政策決定のあり方について、制度・具体的ケースを取り上げて話したい。」と述べ、清朝漢地の政策決定機構について解説し、更に1808年のイギリス軍のマカオ上陸事件がどのように処理されたかを紹介しました。

 「結論的に言えば、清朝における「独裁」とは、重要な書類は皇帝が決裁しているけれども、政策策定は皇帝を補佐する少数の上級官僚が行っていた。その政策内容は、マジョリティである漢地・漢人(大多数を占める漢民族)に配慮したパフォーマンスに満ちたものになっていた。その意味では、皇帝が好き勝手に権力を振るう、というイメージとはかけ離れていたと言える。さらに、その政策内容は、ときに外国からは超時代的で自己中心的な「中華思想」そのものとされてきたが(「中華思想」は実際には1936年和田清らが日本の中国侵略の理由づけのために作り上げた虚像であった)、実際には柔軟な(あるいは”弱腰”な)判断を下すこともあり、むしろ諸外国の認識は表面的なパフォーマンスにとらわれてしまっているともいえる。」と指摘しました。

 現代中国との比較の角度からも興味深いお話でした。

 次回の第6回講座は、4月24日(土)、兼村智也・松本大学教授が「コロナ禍によって変わる日中ビジネス」をテーマに講演します。
 第24期日中連続市民講座④「漢詩のユーモア 杜甫・李白・白居易・蘇軾を中心に」(2/20)

 第24期第4回日中関係を考える連続市民講座が2月20日、日中友好センター教室において開かれ、中国文学専門で長野県立大学教授の谷口真由実先生が「漢詩のユーモア 杜甫・李白・白居易・蘇軾を中心に」と題して講演しました。コロナ禍の中でしたが、講座には39人が出席し熱心に聴講しました。

 谷口先生は、「風刺は対象を見下す視点に立つが、ユーモア(諧謔)は自身を含めて対等に見る親しみ深い視線を特徴とする」とし、後漢末期から唐・宋に至る著名な詩人(ほとんど官吏・政治家でもあった)を取り上げ、その生きた時代背景も紹介しながら、現実の不条理や人間共通の弱点をおおらかに面白がり現代の人々をも共鳴させる作品が生まれたことをわかりやすく話しました。―

 ◎「竹林の七賢」は激動の血に彩られた時代に、限りある自己の生をより十全に生き抜こうとし、世間的価値観の呪縛を脱して私の流儀で固有な運命を選びとろうとした。厳しいい言論統制の中を生き抜いていく知恵とユーモアが見て取れる。彼らは誰よりもよく笑い、また目が眩むほど憤り得た。陶淵明は下級官吏を辞し、酒をこよなく愛し、自然を楽しみ、詩を作り悠々自適な生活を送った。

 ◎盛唐の詩人、杜甫は安史の乱や朝廷内部の政争など政情不安の時代を生き、社会詩人と評される。政治・社会の矛盾を鋭いまなざしでとらえ直截に表現した社会批判詩を多数作っている。一方で、「飲中八仙歌」などでは戯れに自身や友の姿を滑稽に描いた詩もみられる。曲江の酒家に立ち寄り、憂さを晴らす詩も作っている。人の世は乱で荒れ果てても自然は悠然としているとうたう。また杜甫には珍しくデカダンの詩もある。成都の草堂にあっては秋の暴風で吹き飛ばされた粗末な家にあって千万間の広い部屋に貧しい人々がつどい笑いあうことを夢想する詩もみられる・・・

 ◎李白は盛唐の代表的な詩人で杜甫より11歳上。その詩は天衣無縫、自由闊達で「詩仙」と称された。「月下独酌」では名月を迎え影に対して3人となる、行楽すべからく春に及ぶべし・・言葉遊びや擬人法が見られる。杜甫は李白を一斗詩百編と評した。李白の多くの詩文は酒にちなむものが多く、ユーモアや比喩にあふれたものが多い。

 ◎白居易は中唐の代表的詩人、地方官吏の家に生まれたが優秀な成績で進士に合格、中央政界で活躍するも、左遷などを体験した。平易な用語でわかりやすい詩を意識的に制作した。風諭詩(婉曲な政治批判の詩)、閑適詩(静かに自然を楽しむ詩)、感傷詩(男女の愛情を描く詩)に分類し、『白氏文集』を編集し、平安文学に大きな影響を与えた。「白鷺」は罪を得て流されていく道中の詩であるが笑いで包んでいる。「重題」では廬山こそはうるさい名誉心からの逃避場所であり、司馬というつまらぬ官職も隠居役としてはなかなかいい、とうたう。

 ◎蘇軾は北宋の詩人、進士に合格したが新法・旧法の争いに巻き込まれ、海南島に流されたこともある。「海内に知己あれば天涯も比隣の如し」は有名な句。比喩表現や比較(なぞらえる)、典故(古典からの出典)、詩語(畳韻語)の面白さがある。―

 まとめとして、「ユーモアは遊びの精神に基づくが、単なる笑いではなく、政治の世界でのつまずきに遭遇した作者の苦しみの中から生み出された。自己の内省を経て、自身の弱さやダメぶりを認め、それを、滑稽・諧謔的な言葉で表現している。作者は、ユーモアを表現することによって、逆境の苦しみを打破する起爆剤としている。それゆえ、読者に困難な現実に向き合う力を与えてくれるのではないか」先生の結びの言葉に、共感の拍手が送られました。

 次回の第5回講座は、3月13日(土)、豊岡康史・信州大学人文学部准教授が「清朝の対外政策の決定方法と現代中国」をテーマに講演します。
  第24期日中連続市民講座③「米大統領選と米中対立に想う」(1/23)

 第24期第3回日中関係を考える連続市民講座が1月23日、日中友好センター教室において開催され、米国の社会経済事情に詳しい上田女子短期大学の小池明学長(経済学、金融論)が「米大統領選と米中対立に想う」と題してオンラインで講演しました。コロナ禍の中でしたが、講座には19人が出席し熱心に聴講しました。

 小池先生は、過去10年間の米国と中国の主な出来事を振り返った後、米国事情、米中関係、日本の取るべき道などについて話しました。(概略下記参照)

 ―米ソ冷戦時代には米国には中国を引き寄せるべきだとの思いがあり、WTOなどへの加盟によって世界標準に近づいて民主化も進むだろうとの思いがあった。もちろん14億の人口・市場に対する関心もあった。中国はこの10年間成長を続け現在世界のビッグプレーヤーとして存在感を増している。米国は中国を次第に警戒し対抗する政策をとるようになった。
 トランプ前大統領の任期中に米国社会の分断が広がった。南北戦争でも同じだが今後、分断解消に相応の時間がかかるだろう。バイデン新大統領は対話を重要視した政治を進めていくとみられる。
 一方、対中政策についてはバイデンはトランプとは違って中国寄りとの見方もあるが、米国の世論が強硬論を支持しており、トランプとの対抗上強硬なことを言った。急激に融和策へとかじを切り直すことはないだろう。競争対立関係は変わらないが、妥協できることは建設的にやっていこうとするだろう。
 日本は、米国寄りの立ち位置だが、中国との歴史的、経済的関係の大きさを考えれば安定的な関係を築く努力が求められている。正当なことを主張しつつ見返りも用意し交渉の材料を持つことが必要だ。―

 興味深い内容でメモを取りながら真剣に聞き入りました。オンラインによる講演は初めての試みでしたが、今後より改善して、交流機会を作っていきたいと思います。次回は2月20日(土)谷口眞由実・県立大学教授が「漢詩のユーモア--李白・杜甫・白居易・蘇軾を中心に」をテーマに講演します。
 
 第24期日中連続市民講座②、中国語と日本語-日中文化比較(12/19)2020

 第24期第2回日中関係を考える連続市民講座が12月19日、日中友好センター教室において開催され、清泉女学院短大中国語講師の王秋菊先生が「中国語と日本語ー日中文化比較」をテーマに講義しました。コロナ禍と師走の忙しい中でしたが、講座には24人が出席し熱心に聴講しました。

 主語と動詞をはっきりさせる中国語と主語と動詞があいまいな日本語の特徴に触れた後、日常のあいさつと配偶者の呼称、漢字から見た古代女性の社会的地位、老子・孔子・荘子・孟子など古代思想家が中国語と中国文化に与えた影響、詩詞が中国語と中国文化を豊かにしたこと、中国の4大名作と4大奇書(「三国志演義」「西遊記」「水滸伝」「金瓶梅」が4大奇書と言われていたが、「金瓶梅」の代わりに「紅楼夢」を加えたものが4大名作と呼ばれるようになった)へと話が進みました。

 更に、『漢委奴国王』(紀元1世紀、後漢の光武帝が日本の奴国王に与えたと「後漢書」に記されている「漢の倭奴国王」)金印と漢字の日本伝来、明代にイタリア人宣教師マテオ・リッチが漢字をローマ字表記することをはじめ、これが、現代中国で広く使われている「漢語ピンイン法案」へとつながっていったこと等興味深い話が続きました。また、明治期には革命、科学、共和、哲学、自由など多くの社会科学用語などが日本から中国に逆輸入されたこと、峠や辻、切符、切手などは和製漢字単語であることも紹介されました。玉や紅が好きな中国人、気の毒な犬、四君子と尊ばれる「梅・蘭・竹・菊」など話は中国文化に幅広く及び講義時間もあっという間に過ぎました。
  第24期日中関係を考える連続市民講座スタート(11/21)2020

第24期日中関係を考える連続市民講座が11月21日から始まりました。県内の大学と県日中友好協会などで作る県日中学術交流委員会主催で、毎月1回のペースで文化、歴史、経済関係などをテーマに計6回の講座が開かれます。

 第1回は長野大学の塚瀬進教授が「中国における歴史教育の特徴と問題点」と題して講演しました。自身が中国近現代史を研究している立場から、中国人がどのような歴史認識の中にいるのか知ることなしには中国人研究者の研究論文を深く理解することができないとの問題意識に立って、①中国の歴史教育の特徴、②歴史教科書の制度的変遷、③一般的な中国人の近代以降の歴史観、④日中戦争についての記述、⑤歴史認識の相違などについて語りました。講演終了後、出席者から活発な質問や意見が出されました。

 主催者はコロナ禍の平穏化を願いつつ、皆さんの協力を得ながら講座を進めていきたいと述べていました。第2回は12月19日、王秋菊・清泉女学院短大中国語講師が「中国語と日本語-日中文化比較」とのテーマで講演します。

 連続市民講座の開催趣旨は次の通りです。
-戦後75年、日中国交正常化から48年を経過し、日中関係の改善加速が期待された中でしたが、新型コロナの世界的感染拡大によって、人的交流がストップし、経済、文化学術、スポーツなどの分野の交流においても困難が続いています。早期の平穏化を願いつつ、コロナ禍後を見据えて、両国国民の相互信頼関係を醸成していくことが望まれます。 歴史的に深いかかわりを持ち、日本の最大の貿易相手国である中国はGDP第2位の経済大国となり巨大な変化を遂げています。14億人が住む隣国中国に対する理解を深めることは日本にとって一層重要となっています。中国を多面的に理解するため県内で活躍している大学・短大などの先生を講師に迎え第24期講座を計画しました。お誘いあってご参加ください。

詳細はこちら――>第24期日中関係を考える連続市民講座「中国の歴史・文化と日本」

第2回は12月19日(土)王秋菊・清泉女学院短大中国語講師が中国語と日本語・文化比較について話します。
第3回は1月23日(土)小池明・上田女子短大学長が米大統領選と米中対立について話します。
第4回は2月20日(土)谷口眞由実・県立大学教授が漢詩のユーモアについて話します。
第5回は3月13日(土)豊岡康史・信州大学准教授が清朝の対外政策決定方と現代中国について話します。
第6回は4月24日(土)兼村智也・松本大学教授がコロナ禍で変わる日中ビジネスについて話します。