スティーブンス氏のアドバイスと私のたちの試み

このページでは、スティーブンス氏の著書「Simple Garden Projects」の骨子を解説し、それに私が自分のガーデンデザインで試みたことを対照してみました。実際のところ、私のガーデン作りは、この本の存在を知る以前に始められましたので、ほとんどの部分は、事後のチェックになっています。しかし、幸いにして素人の私のガーデンデザインも、けっこうスティーブンス先生のお眼鏡にかなっているようで、とても意を強くしました。
目次
1.序論
2.庭造りの計画
3.小道とパティオ

スティーブンス氏のアドバイス 私たちの試み
序論
いいデザインというのは、つまるところ簡素であり、常識的であって、なかんずく実際的でなければならない。庭をデザインするときには、特にこのことが言える。ところが、ガーデンセンターの品物を見たり、出版物の情報や、専門家の山ほどのアドバイスを読むと、ついつい色々な新しい物を買ったり、新しいアイディアを試してみたくなったりするものだ。だから、あなたの庭の大切なスペースが、関係のない雑多なものたちのごったまぜに終わるのも無理からぬことだ、と説いています。

上手にレイアウトされた庭は、二つの基準を満たしていなければならない。一つは、1年365日の間素晴らしい眺めであること。次に庭を維持することが重荷にならないことだそうです。注意深く計画することで、美的にも満足のでき、あなたにぴったりのあなただけの独自の庭を造ることができるだろうとのこと。
「1年365日よく見える庭でなければいけない」という点に関しては、冬の庭に出て「枯れた冬の庭もいいわねえ!」といった妻の一言で、とりあえず合格点をつけることができるのではないかと思っています。

また、「庭仕事が重荷にならないこと」については、私たちも庭造りの当初から念頭に置いていたことです。庭のかなりの部分を、芝のようなものではなく、レンガやタイルや石で覆ったのも、もちろん美的な面から意図的に選んだものではありますが、それと同時に、維持のための手間があまりかからないように、との配慮があったからです。
庭造りの計画  
庭造りに関する真の問題は、多くの人たちが、庭は家とは別のもの、別の活動のための別の環境だと、未だに考えているところにある。そうではなく、これら二つの要素は一つの物なのだと考えると、すぐさま全ての問題はとても簡単なものになるとのこと。

庭造りをうまくやるには、家の中の部屋と全く同じように、レイアウトを考えることが必要。私は何年もの間庭の設計に携わってきたが、そこで学んだことは、「ガーデンデザイナーの真価とは、どんな状況であっても、必ず成功に導く試しぬかれた法則に従って仕事をすることだ。」とのことです。

実際のところ、デザナーの仕事は、手順にそった仕事の連続であり、まず最初にやることは、庭の実地調査と情報の収集だとして、実際の庭造りのプランを立てる前に、自分の庭の状態を、まず正確な縮尺の図面に表すことを求めています。そして、以下のような点についても調査するように、アドバイスしています。
さすがにここまでの細かい調査は、やりませんでした。やらなかったことで、後で問題が生じなければいいのですが。

ただ、「土地の高低差」については、ほとんど平らでしたので、和風ガーデンへ入った踏み石のところを、やや上り坂になるように土を入れてもらいました。

また、「よい眺めと悪い眺め」に関しては、南側の塀より高く顔を出している、二つの大きな看板が悪い眺めになります。そこで、パーゴラの背中側にトレリスをつけることで、一つの看板はある程度隠すことができました。もう一つの看板の方は、木の葉が茂るとある程度隠すことができます。

また、ベンチ付きパーゴラの道路から覗かれる側は、トレリスを高めにしてプライバシーを確保。反対側の和風ガーデンに開いた方は、プライバシーは確保されているので、むしろ和風ガーデンを楽しめるように、広く解放するように設計しました。

また、和風ガーデンで一番眺めのいい枯山水の池のあたりは、隣家の窓から覗かれる位置にありましたので、ソヨゴを植えてもらって少し見えなくなるようにしました。 
■調査■

●土地の高低差

●風の方向
一年中優勢な風の吹く方向があるなら、風よけを計画できるように、その方向を書き入れておく。

●よい眺めと悪い眺め
一年中優勢な風の吹く方向があるなら、風よけを計画できるように、その方向を書き入れておく。

●土質
ガーデンセンターで売っている土質調査のキットを買ってきて、土質を調べること。

●庭の向き(日差しとの関係)
最後に最も大切な情報収集として、庭が太陽の進行に対してどのような向きになっているか、太陽の光は季節を通じてどのように差すかを調べること。
■デザイン■

庭の事前の調査が終わったところで、ようやく実際の庭の設計のことや、自分の庭にどんなものを見てみたいのかについて、思いを巡らせることができる。出来上がった庭は、家族の皆の楽しみにならなければならないのだから、これは実際のところ家族の仕事なのだ。そこで、あなたやあなたの家族の一人一人が、庭に何が欲しいのか、庭で何をしたいのか、全て書き出してみるとよい。

それから、庭というのはゴミ箱や物干しなど、汚いものもどこか適当なところへ置かなくてはならないことを、忘れないように。

みんなの希望に際限がないように思えても、後で縮小することはできるのだから、とにかく全て書き出すことだ。というのは、一旦できてしまった庭を、後から直すことはもっと難しくなるから、とのこと。
私の家の場合は、私たち夫婦だけが「庭だ!花だ!」と騒いでいるだけで、今のところ他の家族はあまり関心がないようです。自分もつい2年くらい前までは、それほどガーデニングのことには興味がなかったので、私よりはるかに若い連中のこと、それも無理はないなと思います。

というわけで、私のところの庭は、もっぱら私たち夫婦で何事も決めています。スティーブンス先生申し訳ありません。m(_ _)m

ゴミ箱や物干し等の見せたくないものについては、トレリスなどで遮蔽することを考えてはいますが、もう少し後になりそうです。
■固い材料の扱い■

庭に入れたい物の大体の位置や大きさがいいと思ったら、細かいところを書き込んで、最終的な図面の仕上げに移る。

なお、道の舗装や壁のように固い素材を使う場所については、よく考えて決めるようにしたい。例えば、家がレンガでできているなら、パティオやレイズドベッドに同じレンガを使うとか、家の床が石でできているなら、それをそのままパティオにも使うと、二つの要素がうまくつながるだろう。

すでに強調したように、簡素であるということが成功へのカギだ。固い素材の種類を少なくすれば、それだけ調和のある結果を生む可能性が出てくる。

固い素材を一種類しか使わない場合は、見た目が大変重い感じになるかもしれない。そんなときは、違った素材を混ぜて使うと、いい結果を生むことができる。例えば、レンガの小道に敷石用の石や枕木を添えてみるとか。

また、親和性のある植栽で、印象を和らげる効果も出せる。例えば小道にはみ出して茂る灌木、レンガとレンガの間に育つ草とか苔などは、できたばかりの庭も、和らいだ感じに見せることができる。

砂利や、小石などは、柔軟性のある素材だ。これらの材料で、曲がりくねった小道などを、柔軟にカバーできるし、大きな石板を使うより、目に優しい素材といえる。小さな庭には特にそうだ。

この章のデザイン例では、家に近い方のレイアウトは、建築的にしっかりと作っている。そうすることで、家と庭が一体のものになるようにしている。家から離れたところについては、もっと柔軟でなめらかな様式で考えるとよい。例えば芝生や境界の形を、流れるようなカーブを描いたデザインにするとか。そうすることで、コンパクトな庭でも、実際よりはるかに大きなスペースに見せることができる。
「家の床や外壁の材料と同じ材料を使う」ということは、私も自分の庭に応用しています。サンルームの床に使ったタイルは、INAXのタイルですが、その部屋に隣接して作ったパティオのイタリアンタイルも、これと同系統の色合いのタイルにしました。それにより二つの場所が一続きのスペースに感じられて一体感が生まれただけでなく、狭い庭を広く見せることにも貢献していると思います。

また、サンルームの壁に使ったレンガ風のタイルと、この部屋のサッシの真下に作った池のレンガ、それにそのすぐ近くにある水場のレンガの色や肌合いが、とても似通った材質になっています。スティーブンス氏の「素材の種類を限定する」という原則にもかなっているように思います。

小道のレンガは、これを造って一年しか経っていないのに、レンガとレンガの間だけでなく、レンガ自体の細かな隙間の中にも苔が生えて、何年も経ったレンガのような風情を醸し出しています。

「家の近い方は建築的なレイアウトを」については、狭い庭のこと、近くも遠くもありませんが、家のサンルームに直結して建築的なパティオと石の乱張りのテラスを作りました。また、柔軟なカーブを描くレンガの小道が、庭を広く見せる効果を出しています。スティーブンス氏のアドバイスは、おおよそ活かされているのではないかと思います。
■植栽計画■

植栽はこの本で扱うテーマではないが、もちろん庭を生き生きとさせるための重要な要素だ。タイルやレンガを敷き詰めた道やテラス、あるいは壁や塀のようなものは、どうしても固い線を形作りがちなものだが、花や木々は、それを包み和らげてくれる。

植栽の計画は非常に大切なもので、適当な順序に従って進めなければならない。まず最初に木々をどこに植えたいかを決めなさい。その際木の大きさや、それがどのくらいの陰を作り、また遮蔽の役目をするかを考えること。次に灌木類をどうするか決めなさい。最後に細かいところを埋めていき、球根類や宿根草で色づけをしていく。このとき年毎に植栽を変えるための、一年草やコンテナのための場所を確保しておくこと。

この最後の部分に関しては、ジョン・ブルック氏(英国ガーデンデザイナー協会会長)も全く同じようなことをアドバイスしていました。「花壇にどのような植物を植えるのかを決めるとき、最初に木を決めます。木は一本でもかまいません。その木を中心に作業を進めます。次は骨組み。見せたくないものを隠したり、風よけのフェンス代わりに、通常は常緑樹を植えます。三番目は装飾用の灌木です。それからかわいい花です。多くのアマチュアはこの最後からやって、自分の庭が思い通りにならないと嘆くのです。」(イギリスの小さな庭:P8/世界文化社刊)

このように別のガーデンデザイナーが全く同じことを言っています。私たちアマチュアには頭の痛い指摘ですね。ちなみにブルック氏は、蓼科にオープンしたバラクラ・イングリッシュガーデンのデザインを担当された方で、彼の著作「ガーデン・ブック」(約300頁の分厚い本)は日本語訳されて出版されています。この本はイングリッシュガーデンを作るためのあらゆる側面に関して、網羅的にかつ詳細に書かれた本で、日本語でガーデンデザインを勉強するためには、格好の本だと思います。
私がガーデニングを始めたのは、単に花を並べて飾るということより、もっとガーデンデザインといった全体的なデザインにより興味があったからです。その意味で、スティーブンス氏が指摘している「適当な順序(原文はlogical sequence)に従って、ガーデニングを進める」ということは、よく理解できます。

私たちの場合も、庭の入り口から始まるレンガの小道の両側に、ふっくらと膨らんだ土の部分を作って、右側にはヤマボウシ、左側にはコハウチワカエデシンボルツリーとして入れてもらいました。その後でヤマボウシ脇にヤマツツジ等小さめの木を植えました。そして、その回りのレンガの小道沿いの場所に、色々な花を植えることができるようにデザインしました。また、パーゴラのあるパティオや、乱張りのテラスは、コンテナで飾る舞台です。

木の大きさについても触れていますが、色々な参考書を見て調べてみると、我が家に植えた木の多くは、けっこう大きな木になるのですね。しかし、庭師の方に聞いても、その場所にあった大きさにコントロールできると言っているし、また色々なガーデンデザインの本を見ても、けっこう狭い場所に大きく育つ木を入れている例があるので、おそらく問題はないのであろうくらいに考えています。(^_^;)

「木々がどのくらいの木陰を作るか」といったことも、よく考えた点です。棚の下に陰を作るには、一般にはツタ類の植物を這わせて陰を作りますね。しかし、私のところでは、パーゴラに向かって左にしなやかに高く伸びたソヨゴ、右に豊かに葉をつけたヤマボウシを配置して、ちょうど高僧や君主様にかざす大きな日傘のように、上から覆って陰を作るようにしました。暑い夏の日も、お昼を過ぎるあたりから、パーゴラ全体を覆う陰を作ってくれて、とてもうまくできたと思っています。

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