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すんげえなまった英語と片言のワンワード
イングリッシュでのコミュニケーションだけど、
心で通じちゃうのだ。

「おらはモスリムだけどおめーの宗教はなんだ?」
「う〜ん、仏陀だよ」
「ふ〜ん、仏陀ねえ〜」
ってな会話。

【 11月1日 御危篤なアラーの神様 】

午前中、カリ高クンはDRのクラッチプレートを求めて Dubaiの街をあても無く奔走する。
俺とハットリさんは明日の車検場となる、ここから30km離れたトヨタワークショップの確認に出かけた。
午後は地下駐車場でひたすらバイク整備。

















もくもくと作業をしているとモハメッドさんが黒光りする自慢の愛車(チャリンコ) インド製米屋スペシャルを
俺達のバイクの横に何気に並べ、ちょっと自慢げな顔をしている。
おっ!?と思ったが忙しさにかまけて、つい無視してしまった。
しばらくするとモハ メッドさんがこっち来いと手招きするのでいってみるとオレンジジュースが注がれた金属製
のコップを差し出してくれた。
朝から晩まで、薄暗い蛍光燈の下、濁った空気の漂うコ ンクリートの空間で、友達とダベったり、スヤスヤと
寝てみたり、たまに仕事してみたり、秘蔵のオレンジジュースを棚から出して飲んだりしながら
モハメッドさんの日常は過ぎて いく…・・。




















今日は19:00時からレセプションパーティがある。
カリ高クンはDRのクラッチプレートを結局 Getすることができず、時間経過と共に深 刻かつ絶望的な表情に加え、
死相さえ浮かんできていた。
しかしレセプションパーティに行けば多勢の日本人ライダーがいる。DR350のオーナーだっているはずだ。
新品クラ ッチをポン!と譲ってくれる御危篤な人を求め、死神をひきずりながらHyatt Regency に向かった。

超高級ホテルのプールサイドで、俺達にはあまりに不似合いなままパーティが始まった。















UAE Desert challengeオーガナイザーのモハメッド・ビン・スレアム氏が例の白装束で登場!
精悍なマスク、ホモ野郎じゃない事を証明するヒゲ、ケタ外れの大富豪。愛人い っぱい囲ってそ〜!つよそ〜!!
そんな、あまりにもねたましいアラブの伊達男に一言、、、、、「抱かれてみてえ〜」。

しかしそんな中、カリ高クンはお通夜の真っ最中であった。
彼にもプライドはある、い や人並み以上にプライドの高い彼の口から「レース前にクラッチをお釈迦にした、
予備があったら譲って下さい」とは死んでも言えねえ雰囲気であった。
でも、黙っていたって何 も状況は変わらない。ならばハジをかくしかUAEを走るスベはない。
もしも俺が奴の立場だったら、正直やっぱり頭下げて頼めねえと思う。
でも、この際そんな自分は棚に上げて カリ高クンをたきつけ、あおりたて、ののしっていると、強情までに重かった
彼の腰がようやく上がった。この瞬間から、奴は変わっていった気がする。
たくましく、強いラリー ストへと…・。

で、奴に新品クラッチをポン!と譲ってくれた御危篤なアラーの神様は存在した。
「森の熊さん」だった。