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【 11月2日 燃料切れ 】

今日は車検日である。
車検と言っても日本の陸運事務所で行われる3年に1度のやつとは違う。
例えば、ものすごい砂埃の中でも走行が確認できるようなダストランプの
点灯確認やビーコン(遭難時に居場所を知らせる発信機)の装備が
レース出場に適合されているか検査されるのだ。
もちろんブレーキやライトが正常に作動するか、またヘルメットが国際規格
を満たしているものかもチェックされる。
もちろん車検に合格しなければレースに出場することはできない。

TOYOYAの整備工場の敷地で、有象無象の日本人の車検は朝8:00から
まとめて行われた。
唯一、昨年も出場し、小柄ながらも巨大外人相手にどうどう渡り合い優秀な
成績をおさめ、一躍UAEのフェイマス・スターとなった湯気坊主エズレはお昼
からのワークスプロフェッショナルライダーらといっしょの時間帯の車検であった。



















エマージェンシー関係(緊急時用に携帯が義務づけられている装備)を特に厳しくチェックされ、反射ミラー用
にとスーパーで購入し た化粧用コンパクトミラー(ファンデーション付き)はVery Nice!と受けていた 。
*)反射ミラーの役目:砂漠で遭難した場合、ヘリでの捜索となる。その場合、遭難者はヘリに向けて太陽光線を
             キラリと反射させ、居場所を知らせるのだ。

夕方からは Hyatt Regencyのディスコホールで日本人のみによるブリーフィング(競技説明会)。
長い…・。


いよいよ明日、レースはAbu Dhabからスタートとなる。
おおよその日本人は「レース当日の移動は疲れるので…」という懸念から、スタート地点となる170km離れた
Abu Dhabiにあらかじめホテルを予約し、ブリーフィングが終わると、そそくさと夕闇の中、出発していった。

俺達は作戦通りに今夜はMAREDIAS Hotelにとどまり、明日からの戦いに備えて
ゆっくり 静養…とはいかず、ハットリさんは「120Km/hオーバーになると
フロントがブレだす」と言って、パンク対策として苦労してはめ込んだ2枚重ね
のハードチューブを 1枚に戻す作業にいそし み、カリ君は神からの授かり物の
クラッチの交換作業を始め、
俺は熱砂を歩いたら急速に劣化が進んだのか?ソールがベロベロに剥がれ
ちゃったブーツの底をエポキシで接着してから、晩御飯の買いだしにスーパーにでかけた。


汗をかきかき、シャワーをあびあび、めんどっちい事のすべてが終わり、厳粛かつ神聖 に
アラーの神にゴメンと言いつつ俺達の御神体を拝もうと冷蔵庫を開けて…ガッ ビーン!
ビール様が、ビール様が、、、無え、、。
日本から合計80数本分も密輸した御神体は
この6日間ですべて飲み干してしまってい たのである。
あ〜〜〜〜。
だが、しかーし!まあこんなこともあろうかと非常用にとスーパーで購入したノンアル コールBeerが実はあったのである。
「カプシッ!ジョゴ、ジョゴ…」ほうらどうだ!黄色いぞ!泡だってたってるぞ!まいったか!

そして、ひと口…・ンッグッ、………げっ、…マズ…・・。

そして、だれもがみな心にさみしい思いを抱えたまま床についたのであった。