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201のパジェロは三菱ラリーアートPIAAの篠塚健次郎
ちまちました砂丘では追跡できたが、
ストレートになったらあっという間に見えなくなった。
砂漠のF1である
【 Desert challenge 】

アブダビ〜アルジャン SS233km リエゾン52km 計285km

SS(競技区間selective sectionの略)はそこから更に30Km走ったドライ塩湖から始まる。
俺のゼッケンは67、ハットリ さんは68、カリクンが69の変態番号だ。
MOTO 総台数 99台のうち 67番目のカウ ントダウンが始まった。

Abu Dhabiの砂漠はDubaiの砂漠とは顕かに違う。序盤に見えてきた砂丘群には、まずブッシュがほとんど見当たらない。
ラクダのクソも無い。
砂丘も高くでかい。それこそ絵に描いたような三角形のデューンが遥か彼方まで幾重にも静かに折り重なっている。
砂の色も怒っ たような朱色ではなく、たとえるならば1960年代にカラーヌードグラビ アを飾ったマリリンモンローの
肌の色を思わせるような膨らみをもっている。
ノスタルジックでやさしい 肌色のファンデーションみたいに、やさしくクリーミーでとろけてしまいそうな色をしている。
雲一つ無い空にまでその色が反射して、地平線は水色にかすんでいる。
自分以外の 360°すべてがそんな抽象的で幻想的な色の世界で、夢をみているような 気持ちになる。

 ルートが中盤に差し掛かった頃、遥か彼方の砂丘のてっぺんで砂煙を上げる KTMが見えた。
いよいよ本格的な砂丘越えが始まるのだ。
元々ヒルクライムは大好きだし、それが砂の山ならなおさらだ。
その KTMにロックオンし、「ヤッホー!」てな気分で砂丘を駆け上がる。
所々柔らかい砂の部分もあるようで、外人有象無象さん達もけっこうハマッている。
しかし、同じ有象無象でも俺のHONDAは軽いし、池町がアドバイスの14×45丁のギア比はバツグ ンに良く登る。
「ケケケケ…見たか!」なんて調子こいて走っていたら痛恨のミスコース。
PC2(チェックポイント)をすっかりショートカットしてしまっていたようだ。あわてて戻るが往復 20Km のロスはチト痛い。
注:ラリールート上にはPC(パスチェック)が5〜6箇所設けられ、ここを通過の際、 所持しているタイムカードに
 スタンプが押される。PCの不通過はペナルティ対象。
 また各PCに は開設時間が設けられており、到着が余りに遅いと実力不足の烙印が押され、次工程への進行が拒否される。
 つまりPCはラリー運営をスムースに進行させる為に重要な役割をもっている。
 ちなみに砂漠に不慣れな島国日本のライダーの大半はかなり早い段階でこのPCで走行拒否の烙印を押された。


ブリーフィングでは初日は軽く肩慣らし Dayなんて言っていたが、
実は全然きつい。
40℃を超える気温だし、一発スタックしたらすげえ体力を消耗するのは
目に見えていたからグリップの良さそうな砂を選んで慎重に走っていたら、
後方から篠塚健次郎のパジ ェロが来た。
パリダカドライバーの砂丘越えテクはいかに?としばらく小判鮫吉となる。
その走りはけして無理をしないグリップ走法で、砂丘を高巻きならぬ低く巻き
しながら 絶妙のライン取りで抜けていくようだ。
おかげで随分楽に走れた。とはいうものの中間のレストコントロールで
背中に背負った2リットルの水はほぼ空っぽに飲み干していた。

後半ルートはドライ塩湖やグラベルの高速コースが多く、最後の高速アップ
ダウンサン ドをエクスタシーを感じながら走っていたらゴールとなった。


 ビバーク地に着くと湯気坊主エズレ、エバ、ハットリさんら知った顔が涼しい顔 してお出迎えしてくれた。
エズレなんかはイレズミを入れたKTM 野郎とバトって派手にブッ飛んだ ようだが総合26位と好位置にいる。
俺は総合49位。
まあ初日だし、立ちゴケ以外は無転倒だし、充分しあわせの満足である。

「こんなんだけでほんとにいいんかなあ?」というような極基本的な整備を行い、ハットリさんと共にビール片手に
ビバーク地近くの砂丘に上り、夕陽を眺める。

そしてここでも再び、恍惚の人となる…・。