←っていうかここまでボロい単車でインターナショナルなレース
  に出場しちゃう人は全世界でハットリさんだけだ!と断言できる。
  人は外見で判断しちゃいかん!
  見てくれとは裏腹にエンジンはバリバリ!だと本人弁の逆威嚇マシン。
  又の名を“ゾンビ号”・・・「お前は既に死んでいる」

「炸裂!酒POWER!…。」

2日目の朝はホテル近くの、腰に命綱を吊り下げた高層ビルビルダーのオヤジ達がたむろす屋台でブレックファースト。
予想通りの激カラにケツの穴がムムッとうなる。
今日は、ひさしぶりに愛染恭子スペシャルと再会。
くそ暑い中、他のエントラントはマシンのセットアップに余念がないようである。 そんな連中を横目に、俺のマシンは
特にいじくるところも無いが、まあみんなのマネしてなんかやってみるかとマジックペンでもって、シートに「野口装美」
と書いてみた。これで3秒は速くなるはずだ。
ついでにカリ高君とハットリさんのカステラがむき出しになったシートにも「野口装美」を書いといた。
     
     ハットリ談:ビラビラ部分に書いてあるのがおわかりになるだろうか?


あとはやることも無いので、しこたまビールを買い込みクーラーのきいたホテルの部屋でアルコールジャンキーと化した。

普段はクールで渋さの漂う俺とハットリさんだが、酔いがすすむにつれ
「な〜んかさびしいぞ!そういやあ、エントラントにネエちゃんがひとりいたじゃないか!呼んじゃおう!」
と酔っ払いウキウキオヤジモードが炸裂してしまった。
そうと決まれば、こういう時だけはやたらと段取りが早い!

まず英語に堪能なカリ高君がウソ八百をならべホテルフロントのオペレーターから彼女の部屋NOを聞き出し、
次に俺が彼女の部屋に甘い囁き声で電話した。
「もし、もし、ねえ、今なにやってんの?」
「外でバイク整備してたら汗ビッショリになっちゃって、これからシャワー浴びるの」
「じゃあ、シャワー浴び終ったら僕たちの部屋にきていっしょにお酒飲まない?遊びにおいでよ」
「でも、先約があってこれからその人達とごはん食べにいくの。ごめんね〜、又さそってぇ〜」
ガチャッ。

「・・・・・・・・・・・。」

次の瞬間、ハットリさんは「な〜んか、眠くなっちゃったなぁ〜」と言って、べッドにゴロンとなると、俺が持参した
つげ義春の「貧困旅行日記」を読みつつシュールな気分のまま眠りに入り、カリ高君はしら〜っとなった雰囲気にいたたまれず、
部屋を出ていった。

ハットリ談:熱帯とつげ義春このとりあわせに疑問をもたれる諸兄もいるとは思うが、これが合うのである。
     熱帯、青い空、そして陽気な人たち。ちょっと明かりの落ちたホテルの室内で、一種独特の
     あの雰囲気に浸っていると、熱く蒸し暑い彼の(かの)国の人々の心の深淵をかいま見るようであった。

「プランテーションバトル」

朝っぱらから菊のご紋が大絶叫しつつ3日目を迎えた。
昨晩もやはりブルーカラー系の屋台で激カラディナーをとったのである。
メインディッシュは小麦粉を薄くのばした生地をフライパンで炒め、それを右手オンリーでちぎり、激カレーを
つけて食うマレー人達のスタンダードディナー。これが超ウマ!うめえ、うめえ、と調子こいて腹一杯食うは、
大腸菌が冷凍保存された氷がほどよく溶け込んだコーラをガブ飲みした結果が今朝の始末であった。

今日は車検とプロローグランの日である。
ズラリならんだバイクの中で最も目を引き、イカしていたのがタイチームのアンダーボーンだ。
アンダーボーンとは175ccの要はカブである。しかし、オフロードを走る為にいたるところにノウハウがつぎこまれ、
レーシングマシンに改造されたそいつは質実剛健で無骨で魂がやどっている。
またライダーがいかしている。Tシャツに手っこ、迷彩パンツスタイルで頭に緑のバンダナを巻き付けた16、7の
小僧だがキラキラとしたいい目をしている。
    
なんだかアヘンのトライアングル地帯で中国製の自動小銃を背負って疾走するクメールルージュの少年コマンドみたいで
やたらと様になっている。

それに対しお金持ちの日本人はピカピカの最新鋭のバイクにド派手なウエア。
歩くたびにチャラチャラとお星様の粉が尾をひくみたいで、悪いとは言わないがお見舞い用フルーツ盛り合わせ特大サイズ
を連想させる。
プロローグは広大なパームヤシ畑内のロケットダートで、冒険の扉SSネームで言うとしたら、「やし畑ICBM」ってところだ。
     
時折、茂みの中からへんてこな絶叫が聞こえ、マレー人の地モピーがその方向に なにやら叫んでいたが、
その声の主は象らしかった。 コース内には水牛がたむろし、「おおっ!」と感動。

夜は再びホテルでウェルカムパーティ。
会場への道すがら、昨日の電話のネエちゃんが寄ってきた。
それでもって「もしよかったらチームにいれてぇ〜」 となついて来た。
あらら、逆ナンパされちゃった。
今回のレースにはチームエントリー(3人一組)があり、入賞すると賞金が出ちゃうのだ。
俺とハットリさんは現地で外人をスカウトし、和洋折衷チームを結成するつもりだったが、まあ外人もネエちゃんも
俺達にとっては外人同然なので快くOK。
チーム「冒険の扉マレーシア」が結成された。
ちなみにこのかわいい顔したネエちゃんの名は田中友紀といい、EDレディース界ではちったあ名の知れた存在らしい。



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