Disclosure Declaration

北大路書房からの公開通知状

  
●小社の公開通知状●書留内容証明郵便●12月10日

                                    1997年12月10日

599 堺市大美野127−18
    黒人差別をなくす会会長
    有田 喜美子 様

                                603 京都市北区紫野十二坊町12−8
                                    株式会社 北大路書房
                                    代表取締役社長 丸山 一夫

謹啓

 貴会におかれましては,ご清祥のことと拝察申し上げます。

昨日(12月9日)まで貴会と小社との間で,合わせて9通にわたり,小社絵本『チビクロさんぽ』をめぐってお手紙のやりとりをしてまいりました。

 このたび,小社からお送りしたお手紙の中で毎回触れておりました「公開」をさせていただくことにしましたので,その実行(12月12日以降順次)にあたり,お知らせ申し上げます。

以下には,これまで私たち(貴会と小社)の間で直接に述べ合った「公開」に関する内容部分をそのまま引用し,再掲しておきます。ご確認ください。

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●1997年11月 5日・・・北大路書房

*また,小社に公式にいただきましたご意見・ご指摘・ご批判等につきましては,原則的にすべて公開させていただくつもりでおります。したがいまして貴会の今回のお手紙と小社のご返事ともに公開させていただくつもりです。この点ご了解くださいますようお願い申しあげます。

●1997年11月10日・・・黒人差別をなくす会

*なお、本書(前便を含む)は、当該商品を営利とする貴社(職)に改善を提言するものであり、かかる貴社の営業を利する貴社の出版物・商品その他への利用及び使用はお断わり申し上げます。

●1997年11月17日・・・北大路書房

*なお,「公開」の意義につきましては,このお手紙の後段部分「小社としての問題提起と貴会への質問」の文中で述べるつもりでおります。「公開」そのものは,黒人差別をなくす活動をされている貴会におかれましても意義あることと拝察いたしますし,貴会が言われる「貴社の営業を利する貴社の出版物・商品その他への利用及び使用」を目的とした「公開」は考えておりません。小社の言っております「公開」についてのご理解とご了解を重ねてお願いするしだいです。

*「黒人差別は現に存在している。それらの差別には反対であるし,その差別を助長するようなことにも反対である」といった立場・考え方は,貴会と小社のみならず,万人に合意でき,共通認識のもてるものであるはずです。そして,原作および日本での今までの類書についても「差別的である」という結論としての判断は,貴会と小社は同じであるはずです。ところが,『チビクロさんぽ』という1冊の絵本をめぐっては,両者の考えは正反対となっているのです。しかし,考えの対立をたんに対立のままにするのではなく,その両者それぞれが努力し相手の考えをまず理解し合うというところから,実りある議論が始められるのだと思います。そして,かみ合った議論の中でこそ,今後も差別や差別表現の問題をよく知り,よく考え続けていけることに結びついていくと考えるわけです。そのためにはまず,両者の考えの違いを明確にしておくことが必要であると考えます。

*Cのあてはめの際に,小社として考えましたことですが,現在でも「ちびくろサンボはおもしろいお話だし,なぜ絶版になったのかその理由がわからない」といった率直な思いを表明される方に少なからず出会います。日本での今までの類書は,このような素朴な疑問にはっきりした答えを示さないままに,絶版になった経緯があるからではないかと考えます。しかし,こういった「問題点」の議論とその理解こそ,万人に開かれていることがとても大切だと思うのです。たとえば, @〜D に共通した○○が「何」であるかが明確となり,それを多くの方が理解・支持されれば,誰(小社も含めてですが)も『チビクロさんぽ』を売ろうとも読もうともしなくなることもあり得ますし,貴会のご主張(提言)も実現することになるかもしれません。いずれにしても小社は,私たち(貴会と小社)の議論を「公開」していくことによって,多くの方々が貴会と小社の考えや主張を知っていただくことになり,この絵本について,黒人差別について,差別問題全般についての理解・考え方を豊かにしていっていただけるのだと考えているのです。この意味で私たち(貴会と小社)のやりとりの「公開」はたいへん重要なことだと考えています。

*貴会におかれましては「議論だけをしていてもだめなのだ。現に問題のあるもの(該当する書籍などその商品)をそのままで存在させておくわけにはいかないのだ」とのお考えももたれているのではないかとは存じますが,小社としては,意見の違う者どうしがいかに話し合いの中でよりよい方向を見つけ出していくか,そして,それを自ら実行していくことそのものが大切なのではと考えているしだいです。

●1997年11月22日・・・黒人差別をなくす会

*なお、本書は、当該商品を営利とする貴社(職)に改善を提言するものであり、かかる貴社の営業を利する貴社の出版物・商品その他への利用及び使用はお断わり申し上げます

●1997年11月28日・・・北大路書房

*(小社としての考え5) 「公開」の意義につきましては,「小社の1通めの返答書」(1997年11月17日)の後段部分「小社としての問題提起と貴会へのご質問」の文中で述べております通りです。その中の一部を引用して再言いたしますと,私たち(貴会と小社)の議論を「公開」していくことによって,多くの方々が貴会と小社の考えや主張を知っていただくことになり,この絵本について,黒人差別について,差別問題全般についての理解・考え方を豊かにしていっていただけるのだと考えているのです。この意味で私たち(貴会と小社)のやりとりの「公開」はたいへん重要なことだと考えています,ということです。

*さらに,「小社の1通めの返答書」からのほぼ再言となりますが,「公開」そのものは黒人差別をなくす活動をされている貴会におかれましても意義あることと拝察いたしますし,貴会が言われる「貴社の営業を利する貴社の出版物・商品その他への利用及び使用」を目的とした公開は考えておりません。小社としては貴会との間でのお手紙すべてを「公開」するつもりでおります。が,けっして自社の営業に利する「公開」をするつもりはありません。小社の言っております「公開」について,ご理解とご了解を重ねてお願いするしだいです。

●1997年12月 6日・・・黒人差別をなくす会

*なお、本書は、当該商品を営利とする貴社(職)に改善を提言するものであり、かかる貴社の営業を利する貴社の出版物・商品その他への利用及び使用はお断わり申し上げます

●1997年12月 9日・・・北大路書房

*小社といたしまして「公開」の意義につきましては,「小社の1通めの返答書」の後段部分の「小社としての問題提起と貴会へのご質問」の文中をはじめ,お手紙ごとに触れてまいりました通りです。貴会がそれらに直接いっさい触れられなかったことは,残念であるとしか言いようがありません。

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小社といたしましては,これまでのお手紙で再三呼びかけさせていただきましたように「公開」についての「貴会のご理解とご了解」が得られ,「公開」ができますことを願っておりました。しかし,貴会のご返事は三度にわたり,「なお、本書は、当該商品を営利とする貴社(職)に改善を提言するものであり、かかる貴社の営業を利する貴社の出版物・商品その他への利用及び使用はお断わり申し上げます」ことを繰り返されただけであり,小社の問いかけに対し直接のお答えをいただかないままになっております。

 そこで,小社といたしましては,小社の言っております「公開」が,けっして「貴会に具体的な不利益をもたらす」ものではなく,「貴会を中傷したり,名誉を傷つける」ことにも該当しないと判断し,その実行をさせていただくこととしました。

 小社といたしましては,けっして自社の営業に利する「公開」をするつもりはありません。このたびの公開の全容(小社の「公開内容」すべて)は,以下にお示しする通りのものです。

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○公開物・・・私たちのこれまでのやりとり

・11月 2日付−−貴会の1通めのお手紙
・11月 5日付−−小社の受け取り通知状
・11月10日付−−貴会の2通めのお手紙
・11月13日付−−小社の受け取り通知状
・11月17日付−−小社の1通めの返答書
・11月22日付−−貴会の3通めのお手紙
・11月28日付−−小社の2通めの返答書
・12月 6日付−−貴会の4通めのお手紙
・12月 9日付−−小社の3通めの返答書
・12月10日付−−小社の今回の公開通知

○公開の対象と方法

・小社に「読書カード」等でご意見をお寄せいただいた読者の方(12月10日現在,全国約200名の方々)への「公開物」の郵送。

・全国の主な取次店・書店への「公開物」の郵送。

・インターネット「ホームページ」への「公開物」の掲載。改作者(森まりもさん:本名,守一雄・信州大学教育学部助教授)のホームページ,http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/sampo/sampoQandA.html)

・全国の新聞社をはじめとする報道機関(約100社)ほか(一部,評論家および読書団体)への「公開物」の郵送。

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 なお,このたびの公開以後,貴会からの小社へのお手紙および小社からの貴会へのお手紙につきましても,同様にすべて「公開」してまいる所存です。また同様にそれらの「公開」につきましても,けっして自社の営業に利する「公開」をするつもりはないことを表明いたしておきます。

 以上,お知らせ申し上げます。

                         敬具

追伸 本手紙は,小社の「公開」の貴会へのお知らせ状です。

   なお,11月17日付の「小社の1通めの返答書」でお願いし,11月28日付の「小社の2通めの返答書」であらためてのお願いをいたし,12月9日付の「小社の3通めの返答書」で期日を12月16日に再指定させていただいている件につきましてのご返答をお待ちしておりますので,よろしくお願い申し上げます。


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