Kitaooji's Letter #5

北大路書房からの返答書(その3)

  
●小社の3通めの返答書●書留内容証明郵便●12月9日

                                    1997年12月9日

599 堺市大美野127−18
黒人差別をなくす会会長
有田 喜美子 様

                                603 京都市北区紫野十二坊町12−8
                                    株式会社 北大路書房
                                    代表取締役社長 丸山 一夫

拝復

 貴会におかれましては,ご清祥のことと拝察申し上げます。

さて,貴会からの今回のお手紙「平成9年12月6日付第176−38−54330−0号書留内容証明郵便物」(貴会の4通めのお手紙)ですが,12月8日に確かに受け取りました。このお手紙について,小社からの返答を申し上げたく存じます。

 率直に申しまして,今回の「貴会の4通めのお手紙」(12月6日付)ですが,貴会の方で「小社の1通めの返答書」(11月17日付),「小社の2通めの返答書」(11月28日付)について十分読んでいただいたものかどうか,小社といたしましてはたいへん疑問に思いました。貴会は,「小社の1通めの返答書」について「拝誦」され,「小社の2通めの返答書」については「拝受」されたと,お手紙を返していただいておりますが,「拝誦」「拝受」されただけで「十分には読んでいない」とのことでしょうか。小社としましては,貴会がどのような意味で今回のお手紙を発しておられるのか,理解させていだくことがますますもって困難であると感じております。

 しかし,貴会が書いておられる内容について,いま一度「小社としての考え」をお示ししておくことといたします。すでに「小社の2通めの返答書」(11月28日付)で「小社としての考え」1〜5として発しておりますので,小社のこの手紙では,番号としては6から示してまいります。

 今回につきましても対照いただきやすいよう貴会のお手紙そのものを再掲し,「小社としての考え」をはさみこんだ形式といたしますので,ご了解ください。なお,小社でワープロ打ちしておりますので,万一間違い・誤植等ございましたら,ご指摘くださいますと幸いです。

 では,「小社としての考え」を示してまいります。

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(貴会の4通めのお手紙)−1

復啓

 貴職一九九七年一一月二八日付第四三九九九号書留内容証明郵便物を拝受致しました

 小会が貴職(社)にご指摘申し上げているのは、貴社が製造販売している当該商品は、これまでに日本で商品化された数十種の絵本「ちびくろサンボ」類似商品となんら変わるものではないということです。貴職(社)は問題点の修正と称して主人公とその両親及び書名の一部を変更したとしておられますが、主人公を「黒人」から「黒い犬」に換え、書名は一字をもじった「チビクロさんぽ」としただけのことで、すぐに「サンボ」を想起させ、「ちびくろサンボ(ちびくろ・さんぼ)」と判読させるようになっています。あまりにも子どもだましのような「修正」であり、修正とはいえたものではありません。「小社は原作『ちびくろ・さんぼ』を、黒人に対する差別的図書であったと判断しています」とあとがきしながら原作にこだわり囚われた貴社の営業を改善されるよう提言申し上げます

貴職(社)が明日をになう子どもたちに新たな混乱を伝えることなく、広く地球人から迎えられる商品とされるよう願います。貴職のご英断に期待申し上げます。

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(小社としての考え6) 小社がすでに,基本的にそして具体的に「小社の1通めの返答書」(11月17日付)でお答えし,「2通めの返答書」(11月28日付)でもあらためて繰り返し返答をすませている内容について,貴会は,同じご趣旨のご指摘をまたもや繰り返し,ご提言をなさっておられます。

 貴会は,冒頭より「当該商品は、これまでに日本で商品化された数十種の絵本「ちびくろサンボ」類似商品となんら変わるものではない」とのご指摘を,またもやそのご主張の論拠を示されないままに,繰り返しておられます。

また,小社の問題点修正の仕方では,「すぐに「サンボ」を想起させ,「ちびくろサンボ」と判読させ」てしまうものである,とのことですが,ここでつかわれている「想起」「判読」とはどのような意味でしょうか。国語辞典では,それぞれ「前にあったことをあとになって思い起こすこと」「わかりにくい文意などを,前後の関係から推し量って読むこと」といった意味で説明がありますが,「判読」の意味につきましては貴会の指されている意味は国語辞典とは少し違うようです。そこで,貴会のつかわれている「判読」ということばは「連想」の意味でとらせていただくことといたします。そして,貴会のご主張の文にあてはめて読んでみますと,次のようなことになりましょうか。

   「サンボ」ということばを現在に思い起こさせ,発音・表記からしても「ちびくろサンボ」を連想させて読ませてしまう

 もしこの文意だとすれば,それらのことがなぜいけないことになるのでしょうか,理解がたいへんむずかしいように思われます。たとえば,「差別問題について解説した本」が『チビクロさんぽ』と同時期に発行されていたとしてそこに「ちびくろサンボ問題」といった記述があり,その問題について詳しい解説が載せられていたとすると,その本も『チビクロさんぽ』と同様に,

   「サンボ」ということばを現在に思い起こさせ,発音・表記からしても「ちびくろサンボ」を連想させて読ませてしまう

でしょうから,その「差別問題について解説した本」も「思い起こさせ」「連想させて」しまうのでよくない本ということになってしまいます。この文意のままでは,小社としても(誰にとっても)よく理解できないわけです。そこで,貴会のご主張はおそらく次のようなことだと推測いたします。

   「サンボ」ということばを現在に思い起こさせ,発音・表記からしても「ちびくろサンボ」の「何か」を連想させて読ませてしまう

 この「何か」が何であるのかが,「推測」ではなく貴会の意に沿って的確に「理解」できれば,その「何か」がよくないことを具体的にもたらす・・・といった,貴会のご主張をひとまずは理解できるわけです。そうすれば,小社としての考えを貴会に直接の答えとしてお返しできるのに,それがかなわずたいへん残念です。常識的にいいましても,貴会がこの「何か」を明確にしてくださる必要があろうと存じます。そうでなければ,意見のやりとりは不可能だと思います。この「何か」については,まず貴会が具体的に説明されるべき内容だということをご理解くださるよう,心よりお願い申し上げます。

さらに「原作にこだわり囚われた貴社の営業」を「改善」せよ,とのご提言ですが,この表現につきましても抽象的で非常にわかりにくいのです。小社としても文意をとろうとする努力を怠るつもりはまったくないのですが,全文を見渡して理解を試みるにあたってもそれは結局,貴会の意は「おそらく,こうではないか・・・」といったような「推測」にしかならないように思われます。これまでのやりとりでも貴会のご主張内容の意味曖昧な部分について,小社は極力その意を解しようと努力してまいりました。しかし,貴会は「抽象的表現」を繰り返されることがたいへん多いようです。どうか,小社として貴会の意が解せますよう,貴会におかれましても今まで以上の具体的なご説明の姿勢をおもちくださるよう,心よりお願い申し上げます。

最後に,「貴職(社)が明日をになう子どもたちに新たな混乱を伝えることなく、広く地球人から迎えられる商品とされるよう願います。貴職のご英断に期待申し上げます」とございますが,これも上に述べましたのと同様で理解が困難です。たとえば,「新たな混乱」とは何でしょうか。子どもたちは何を混乱するのでしょうか。理解ができなければ,「英断」もふるいようがありません。

 このたびの「貴会の4通めのお手紙」の中にも,貴会からの具体的なご指摘は見つかりませんでした。小社といたしましても「改善すべき内容」は「特にありません」とお答えするしかありません。

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(貴会の4通めのお手紙)−2

 なお、本書は、当該商品を営利とする貴社(職)に改善を提言するものであり、かかる貴社の営業を利する貴社の出版物・商品その他への利用及び使用はお断わり申し上げます

                                                 敬具

一九九七年一二月六日

五九九 堺市大美野一二七−一八
黒人差別をなくす会
会長 有田 喜美子

六○三 京都市北区紫野十二坊町一二−八
株式会社 北大路書房
代表取締役社長 丸山 一夫 様

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(小社としての考え7) 「貴会の2通めのお手紙」(11月10日付),「貴会の3通めのお手紙」(11月22日付)に引き続き,三度同じ表現をご使用です。小社といたしまして「公開」の意義につきましては,「小社の1通めの返答書」の後段部分の「小社としての問題提起と貴会へのご質問」の文中をはじめ,お手紙ごとに触れてまいりました通りです。貴会がそれらに直接いっさい触れられなかったことは,残念であるとしか言いようがありません。

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 以上,お答えさせていただきました。

 すでに「小社の2通めの返答書」でも述べました通り,貴会は,「小社の1通めの返答書」に対し,その内容に直接触れられずに,「貴会の1・2通め」と同じ内容を「貴会の3通め」でも示されておられました。その上で,今回のお手紙もまた同じ内容の繰り返しをされておられます。このような「繰り返し」は「貴会の3通めのお手紙」に始まり,今回の「貴会の4通めのお手紙」でも引き継がれておりますことをどうかご承知おきください。

 「小社の2通めの返答書」の再言となりますが,貴会におかれましては,まず,小社のお送りした「11月17日付−−小社の1通めの返答書」の内容にさかのぼられ,その手紙の内容(返答など)について貴会の小社に対する具体的なご指摘・ご批判をお示しくださることが筋であると考えます。その手紙の中では,小社から貴会への質問も設定しております。小社といたしましては,そこで,あくまでも「貴会が真に意とされるところを理解するように努めるべきである」という一念で,議論の提案もさせていただいているわけです。期日は「小社の1通めの返答書」(11月17日付)で,12月8日をお願いしておりましたが,その後「貴会の3通めのお手紙」(11月22日付),今回の「貴会の4通めのお手紙」(12月6日付)にもそのお答えはありませんでした。ここであらためて12月16日を期日として指定させていただきますので,誠意をもってご返答くださいますよう心よりお願い申し上げます。

 私たち(貴会と小社)のやりとりも,このお手紙で合わせて9通となりました。ここまでのやりとりを振り返り,あらためて小社の手紙の文章そのものが,堅苦しく,生硬な部分も多々ある感を否めないと思っております。しかしそれは,貴会の意がそのお手紙の中で具体的な論拠をもって述べられていないところが多く,そのことに対し,小社の方で常に推測を試みつつお答えしようとしたり,そのお答えにあたり可能な限り小社の意を正確にお伝えしようとせんがためのことであり,この点につきましてはどうかご寛恕のほどお願い申し上げます。

以上をもちまして,小社の3通めの返答とさせていただきます。

                         敬具


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