「黒人差別をなくす会」からの質問状(その1)

  
●黒人差別をなくす会の1通めのお手紙●書留内容証明郵便●11月2日

謹啓 貴社益々ご隆盛のこととお喜び申し上げます。

 さて、貴社は先に、原作「ちびくろ・さんぼ」は「黒人に対する差別的図書であった」と判断しながら、「やめてほしい」との多くの黒人及びその他の人々の願いと訴えに反して、絵本「ちびくろ・さんぼ」の類似本「チビクロさんぽ」を出版されました。小会はここに小会を支持し連帯する国内外の黒人の人々、団体及びその支持者を代表して以下につきお伺い致します。

                    記

一、貴社は、当該絵本のあとがき「絵本『チビクロさんぽ』の出版について」において、「本書出版の最大の意図は、現在絶版となっている絵本を、その問題点を修正しながら、具体的に一冊によみがえらせること」と述べておられますが、貴社が実際に出版した絵本では、主人公を黒犬に置き換え、主人公とその両親の名前及び書名の一部を変更しただけで、これまでに日本で出版された数十冊の絵本「ちびくろサンボ」の類書に変わるところがありません。貴社はこれで問題点は修正したとお考えでありましょうか、お伺い致します。

二、貴社絵本は、表題を「原作との連続性を確保する」との理由をつけて語呂合わせのように「チビクロさんぽ」と改題しておられますが、その表紙に「げんさく へれん・ばなまん」と表示し、内表紙には「The Story of Little Black Sambo By HELEN BANNERMAN」と貴社自ら印刷しているとおり、当該絵本は「ちびくろサンボ(さんぼ)」に他なりません。貴社は、いままた何故このような「ちびくろサンボ」の粉飾本を出版したものか、お伺い致します。

三、貴社は、現在絶版となっている絵本をよみがえらせるのは、「作品として楽しくおもしろいからです」とお書きですが、誰にとって楽しくおもしろいのでしょうか。絵本「ちびくろサンボ」を擬装した貴社「チビクロさんぽ」は、誰を楽しませるのでしょうか、お伺い致します。

四、貴社は、「もし『チビクロさんぽ』に差別的内容が残っていたとしたら、それはまぎれもなく小社の責任として、真摯に対応していきたい」と書いておられますが、「残っていたとしたら」とはどういうことでしょうか。貴社絵本はどう見ても、貴社が本文に表示する「The Story of Little Black Sambo By HELEN BANNERMAN」の一部言い替え描き換え本であり、日本で出版された「ちびくろサンボ」の類書に新たな一冊と問題をつけ加えたにすぎないことをご指摘申し上げなければなりません。貴社の「問題点を修正」とは、この程度のものであったのでしょうかお伺い致します。

五、貴社絵本は、主人公名に岩波版以来のチビクロを用い、書名にはわざわざ原題「ちびくろサンボ」を即連想させる「さんぽ」を加え、主人公とその両親を黒人の黒と置き換えた黒犬とし、その名もチビクロ、ママクロ、パパクロとしています。さらにその表紙は最も普及した岩波版の赤を使用するなど、貴社絵本は旧来の絵本「ちびくろサンボ」の類書をそのまま継承するものとなっています。内実は「Little Black Sambo」そのものに「黒犬」のぬいぐるみを着せ世に送り出した貴社の真意をお伺い致します。

六、貴社は当該図書を出版するに際して、絵本「ちびくろサンボ」の類書が日本人の多くにいかなる影響を与え今日に至っているかを具体的によく確認し把握されたものか、お伺い致します。この数年、再び黒人差別商品が市中に出回るようになってきました。今年には絵本「ちびくろサンボ」商品も出現してきましたが、それらを製造販売しているのは、かつて子どもの頃にこのような絵本等にふれて育った大人たちです。いままた貴社が、同様の商品を送り出すに際して、その影響がどのようなものであるかをどれ程確認されたものか、お伺い致します。

以上につき、貴職(社)の誠意あるところを貴職名により書面をもって一九九七年一一月二二日迄に一日も早くご回答下さいますよう衷心よりお願い申し上げます。

                                                          敬具

一九九七年一一月二日

五九九 堺市大美野一二七−一八
黒人差別をなくす会
会長 有田 喜美子

六○三 京都市北区千本通北大路下る
株式会社 北大路書房
代表取締役社長
小森 公明 様


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