南風原@東大教育心理です。
>> 【KR第1巻4号掲載「パス解析大流行に思う」へのコメント】
>> ◎平@大学入試センターさんのコメント(抜粋:コメント全文はwww版に掲載)
>> [3つの論点のうち]・・・「検定力分析が流行してほしい」という3点目に
>> は賛成しかねます。所詮、統計手法は統計手法でしかないと思うからです。
>> (守記:どなたか、3点目についての平さんの反論への反論をお寄せ下さいませんか?)
3点目というのは,下記の指摘でしたね。
>> (3)要因が複雑に絡み合う教
>> 育の分野では多変量解析のような解釈的な分析も有効だとは思うが、因果関係を
>> 一つ ずつ明らかにして研究の蓄積をするという意味では、検定力分析(パワーア
>> ナリシス )を誰もが使うようになることの方が大事だと思う。パス解析よりも検
>> 定力分析が大 流行してもらいたいものだ。
パス係数の検定か平均値差の検定かは別として,検定は相変わらず大流行ですが,私は
(1)検定をするなら,その計画を立てる段階で検定力分析をしておくほうがよい
(2)検定結果を解釈するにも,検定力分析をしたほうがよい
と考えています。もちろん
(3)データ収集の方法が検定(のような確率論的推論)をすることを正当化する
場合のみ,検定は意味をもちえ,検定力分析の結果も意味をもちうる
(4)検定は結局は帰無仮説の棄却・採択という1−0的判断をするものであり,
確率論的根拠があって検定力分析の結果もあるとしても,検定が与えうる情
報はかなり限定されたものである
ということは抑えておく必要がありますが・・・。
検定力を知らずに検定をするということは,検定という「確率論的決定方式」の「仕掛
け」 (オッズ?)を知らずに,つまりどの程度の効果があるときにどの程度の確率で帰
無仮説が 棄却されるかを知らずに,その「方式」がもたらす結果に研究の結論の重要な
部分をゆだね るということであり,またそういう無知の状態のままデータの収集や分析
に時間とエネルギ ーを投入するということです。これでは具合が悪かろうということで
(1)(2)の見解が 出てきます。
ただし,この検定力分析を支持する考えは,(3)に書いたように,検定のような確率
論的 推論をすることが正当化できる場合のみ,という限定付きの,そして(1)に書い
たように 「検定をするなら」という仮定の上での話です。確率論を適用する根拠がない
ときに,「帰 無仮説が棄却される確率は80%」とか言っても,80%がどういう意味
での確率なのか分 かりませんから。
なお,
http://www.interchg.ubc.ca/cacb/power/
には,検定力分析のための様々なソフトウェアが紹介されています。ftpで入手できる
無料 ソフトもありますし,そこからのリンクでオンラインで検定力分析ができる仕組
みも提供 されています。
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南風原朝和 (はえばら ともかず)
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