第11巻第5号              1998/2/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


「いよいよ長野オリンピックが始まるぞ、ガオーッ。」

「ワンワン、あれ、トラさん、またでてきたの。グルグル回って、バターになったんじゃなかったっけ?」

「うるさい、チビクロ。このめでたいオリンピックの時期にバターになってなんかいられるか。長野オリンピックの応援に出てきたんだよ。フレーフレー、原田。それに、オレもスケートでもやってみようと。フレーフレー、堀井。っと。」

「でも、なんでオリンピックって、めでたいの?」

「そりゃ、オリンピックだからさ。スポーツの祭典、世界平和の祭典だぞ、ガオーッ。」

「スポーツの祭典ってどうしてめでたいの?」

「そりゃ、もう立派な競技場もできるし、めでたいわな。どうだい、信州の山並みのようなエムウエーブの立派なこと。ワシも行ってこよーっと。」

「たしかにスゴイね。でも、作るのにずいぶんお金がかかったんでしょ?それに、確か、年間の維持費だけでもこれから毎年5億円以上もかかるんだそうだよ。」

「なあーに、この間みたいにSMAPのコンサートでもやれば、東京からファンが新幹線でどっと押しかけて・・・おおーっと、そうだ、長野新幹線ができたじゃないか、これもオリンピックのおかげよ、めでたいこった。」

「トラさん、トラさん。『長野新幹線』じゃなくて、『長野「行き」新幹線』でしょ。本当は『北陸新幹線』って言うのが正しいんだ。でも、北陸に行くのは『上越新幹線』で行った方が便利で早いから紛らわしいし、かといって『長野新幹線』じゃ、もう長野までしか作らないみたいで困るし・・・。 でも、上りの東京行きも『「長野行き新幹線」東京行き』っていうのは、どうみてもヘンだよね。」

「うるさいヤツだな。そういう「自虐的」なことばかり言っていたんでは、明日を担う信州の子どもたちにしっかりとした郷土愛が育たんだろうが・・・。」

「信州の子どもたちには『信濃の國』っていう立派な県歌があるから大丈夫さ。それより、オリンピックをやると、立派な競技場や新幹線ができるほかに何かいいことがあるの?」

「そりゃあるさ。高速道路もできたし、一般の道路も立派になったぞ。」

「でも、それって、結局、税金で作ったんでしょ?しかも借金して。」

「ま、そりゃそうだがな。でも、ここだけの話だが、そのほとんどは国や県の税金だ。会場となる市町村は大もうけさ。軽井沢だっていい道ができて、プリンスホテルに行くのが便利になったぜー。」

「なんだか、ズルイなー。一部の人の利益のためにみんなを騙しているんだなー。」

「バーカ、何を言うか。オリンピックは青少年に夢を与える立派な世界平和の祭典なんだよ。対人地雷撲滅キャンペーンだってやったんだぞー。西田ひかるちゃんが聖火ランナーもやるんだぞー。パラリンピックだってやるんだぞー。」

「そういえば、『自然との共存』っていうスローガンもあったよね。」

「バーカ。自然と共存する冬季オリンピックなんて、市民に愛されるヤクザといっしょで、あくまでもスローガンなの。スローガンと選挙公約は剥がすためにあるんだよ。」

「あれ、オリンピックってヤクザみたいなもんだったの?もっと素晴らしいものだったんじゃなかったの、トラさん?」

「えーい、もううるさいヤツだ。オリンピックがどんなに素晴らしいか、新しく出たばかりのこの本を読め、ってんだ。オレはスケートに行くよ。」

「はあーい。あれ?でもトラさん、これ、なんかオリンピックの悪口が書いてある本みたいだけど・・・あれ、トラさん、どこにいったの? あれー、今度はグルグル回ってミズスマシになっちゃったみたいだー。おーい、トラさーん。」


【これは絶対面白い】

相川俊英

『長野オリンピック騒動記』

草思社\1,600


以前に紹介した『反オリンピック宣言』もぜひお読み下さい。
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