第4巻第10号                    1991/7/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, dmori@c1shin.cs.shinshu-u.ac.jp)



  新幹線にもオリンピックにも反対してきた私にとって、絶望の6月となってしまいました。最後の砦だった小諸市議会もあっけなく県の圧力に負け、フル規格新幹線という最悪の選択を受け入れてしまいました。そして、まさかと思ったオリンピックまで、長野開催が本決まりになってしまいました。いまさら、何を言っても始まらない、という気もしますが、この機会にこそ、もう一度「新幹線」と「オリンピック」について、本当に必要なのかを考えてみて下さい。甘い夢を見ているのではありませんか?私には、年収数百万円の中流家庭が、「フェラーリ・テスタロッサ」を買ったり、「何億円をかけて豪華結婚披露宴」をしたりすることのように思えてしかたないのです。「長野が有名になる(有名になってどうする?!)」だとか、「交通網が整備される」だとか、「県産業の活性化」だとか、耳触りの良い言葉が聶かれますが、結局は、一部のひとにぎりの人々が笑い、県民の大半にはズッシリと負担がかかるだけです。(国や企業をあてにしてはいけませんヨ。)
  国会図書館のデータベースで調べてみたら、新幹線やオリンピックを問題視するような本は、ほとんどなく、それらを賛美する本ばかりです。(ほんの数年前までは、原子力発電もそうでしたね。)そうした中で、その名もズバリの『反オリンピック宣言』という本がありました。名古屋オリンピック(ソウルに負けて実現しなかった)に反対する人たちの書いた本で、10年前に出版されたものですが、「名古屋」を「長野」に読み替えれば、そのまま長野オリンピックにもあてはまります。 これを読んだら、もう「オリンピック、オリンピック」と浮かれてはいられなくなります。名古屋はソウルに負けて本当に良かった。 (守 一雄)

【これは絶対面白い】

影山健・岡崎勝・水田洋

『反オリンピック宣言:その神話と犯罪性をつく』

風媒社(\1133)


 「この本の特徴は、体育の理論と実践にたずさわるスポーツ専門家が、オリンピックに反対する理由をあきらかにしたということにある。」(「まえがき」より) 無条件に誰もが賞賛するオリンピックやスポーツそのものにも多くの問題が隠されていることを改めて知らされた。近代オリンピックは、貴族主義IOCによって経営される多国籍企業活動であり、出場選手はもちろん、オリンピック規定種目それ自体が、庶民とは切り離された特権的エリートのものである。オリンピックが国民(県民)のスポーツ振興に役立つなどというのは嘘っぱちで、オリンピックは国民から「自分が楽しむための」スポーツの機会を奪う。市民のスポーツに使われるべき金が、ほとんど競技人口のいないボブスレーやリュージュの選手強化育成費に使われてしまう。私たちの税金をつぎ込んで作る立派な競技施設も、それを使うのはスポーツ・エリートばかりで、しかも、その施設の維持管理費に社会福祉・文教予算が喰われてしまう。まったく踏んだり蹴ったりである。 (守 一雄)
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