第6巻第8号                   1993/5/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(PDC00137, kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)



  大学関係の本の特集をしたDOHC月報第6巻第2号(1992/11)に対して、北海道大学の田山先生から、R・オータニ『日本の大学はやめなさい』(ほんの木、\1,200)という本が紹介されてきました。「大学氷河時代というのは、大学経営者たちの発想である。若者はこんな言葉にだまされてはならない。今日本にある大学のほとんどは日本が国際化社会の中に進出することを予想して運営されていない。東大を筆頭にどの大学も国際的な観点からすれば、不合格というところだ。」日本の大学を卒業後アメリカに渡り、アメリカに帰化し、現在ニューヨークで国際文化交流協会代表理事を勤める日系一世のオータニ氏は、「日本式の文部省型の教育システム」ではこれからの高度国際化社会に通用する人材は教育できないと考え、日本の若者たちやその親たちに「日本の大学はやめなさい」と言います。アメリカの大学で学ぶべきだと言うのです。オータニ氏は、はじめ、日本の大学がアメリカ型の教育システムに変わればいいと考え、日本政府にも働きかけたようですが、無理とわかり、それではと、広島にニューヨーク市立大学の分校を作ったのだそうです。「本式のアメリカの大学の分校が日本に百校くらい出来たら、日本の社会も教育も変わって来るでしょう。」ということですが、確かにそうなったら変わらざるをえないでしょう。現に、文部省が進めている最近の日本での大学改革のモデルもアメリカの大学なのですから。
 それでも、国立大学の教官が『日本の大学はやめなさい』という本を学生に推薦するのは、あまりに無責任ですから、次の本を推薦します。日本の大学でだって、アメリカの大学生に負けないぐらい勉強すればいいのです。(もちろん、日本の大学教授もアメリカの大学教授に負けないぐらい頑張らねばならないわけですが。)

【これは絶対面白い】

M.J.ウォレス『スタディ・スキルズ』

萬戸克憲訳、大修館書店 \2,570


  副題として「英米の大学で学ぶための技術」とあるように、日本の学生が英語圏の大学でどうやって学んだら良いかについての指南書である。「効率の良い読書の方法」「ノートのとりかた」「ゼミへの参加のしかた」「図書館での資料の集め方」「論文の書き方」「試験の準備方法」が、わかりやすく述べられている。しかも、たくさんの小課題が用意されていて、実習できるようになっている。(念のために言うと、「読書の方法」というのは、もちろん「英語の本を読む方法」であり、「論文の書き方」というのは、「英語の論文の書き方」である。)
 アメリカの大学に留学を予定している人はもちろん、日本の大学だけで勉強する人にも役に立つ技術が満載されている。なかでも、大学院生には必読・必携の本であろう。(英米の学部生のための本が、日本の大学院生の本としてちょうどいいというのも情けない話ではあるが。)多くの学部生にとっても、アメリカの大学生は、こんな風に大学生活を送っているのだとわかるだけでも、自分の大学生活を反省するための良い材料となるだろう。日本の大学で学ぶためのこんな本が見当らないことそれ自体が本当は問題なのである。最後に、自分自身への反省を込めて「訳者あとがき」からの抜粋、「学生たちが私語をするからといって学生だけを責めるわけにもいかない。自分の話が、相手に分かるように、また、相手に興味をわかせるように構成されているだろうか。大学の教師である私にも一度自分の講義をふりかえってみる機会を与えてくれた。」                 (守 一雄)
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